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2020年 俺的上半期ベスト・ソング100(その4)

さあ、ようやく今回で最後ですよ。早速いきます。ちなみに扉の写真は愛しのベアバッドゥービー(Beabadoobee)です。

●「You Make Me Hate It All」Blushh

Shab Ferdowsiを中心に結成された、LA出身の4人組によるファースト『R.I.P. Apathy』から。ピクシーズの「Wave of Multiation」に(もちろんいい意味で)クリソツなこの曲についてはこちらの記事で取り上げました。

●「Post - Dick Circle Fuck」Pet Shimmers

ブリストルを拠点に活動するソロ・アーティスト、オリヴァー・ワイルドが新たに結成したプロジェクトのファースト『Face Down Meta』より。シューゲイズ〜オルタナを下敷きとしつつ、アルバム全体で聴くとサウンドの手触りとかはめっちゃブリストルって感じで期待大です(ゴート・ガールズもゲスト参加)。スワイリーズとか思い出しましたね。スワイリーズはフィラデルフィア出身ですが(笑)。この曲は疾走感あふれるリズムと哀愁のメロディが、ダイナソーJr.あたりにも通じるかも。

●「Backseat Driver」BOYO

2016年にロサンゼルス出身のRobert Tildmanを中心に結成された、サイケポップ・ユニットのアルバム『Where Have All Friends Gone?』より。ひび割れたボーカル、ざらついたバンド・サウンド、ポップなメロディ。この曲はちょっと切ない感じが好き。タイ・セガールとか好きな人も気に入るかも。

●「WHEN I GROW UP」Yaeji

『となりのトトロ』の「さんぽ」のオープニング映像にインスパイアされたという、MVも可愛いイェジのこの曲。ウィスパー・ヴォイスとビートのシンクロ具合がめちゃめちゃ気持ちいい。アルバム『WHAT WE DREW 우리가 그려왔던』は、キリンジのアルバムにも参加していたヨンヨンや、ブルックリン在住のラッパー、ナッピー・ニーナ、トロント出身のアジア系ドラァグ・アーティスト、ヴィクトリア・シンらがゲスト参加していて賑やかで楽しい作品です。

●「All I Need(with Mahalia & Ty Dolla $sign)」Jacob Collier

ジェイコブ・コリアーは、8分を超える「Moon River」のカヴァーが本当に圧巻だったんですけど(2019年リリース)、マへリアとタイ・ダラー・サインをフィーチャーしたこの曲も最高。強力なシンコペーションで進んでいくシンセのバッキング、凝りまくったコード進行、縦横無尽に舞うボーカリゼーション。これぞ完璧なポップミュージック。

●「If You Don't Wanna Know」Fake Laugh

ロンドンやベルリンをベースに活動するKamran Khanによるソロ・ユニット。なんだかものすごく不思議な曲。エリオット・スミスのような歌声とメロディなんだけど、突然Bメロから始まるようなソングライティングと、オーケストラ・ヒットとギタポとチープなシンセを練り込んだようなアレンジ。おもちゃ箱をひっくり返したような(ありがちな表現ですみません)カラフルなファースト・アルバム『Dining Alone』も凄く良いです。

●「Walk the line」Max Jenmana, AAAMYYY

タイのシンガー、Max JenmanaがAAAMYYYを迎えて制作したコラボソング。メロウで官能的、そしてどこか懐かしいメロディが心地よい。この曲が収録されたEP『555!』には、Lucky Tapesの高橋海が参加した楽曲「Drunk Texting」も含まれます。このAAAMYYYも、Tempalayやソロアルバム『BODY』、そして前回紹介した新曲「Home」ともまた違った表情を見せていて。本当に多才な人です。

●「c'est comme ca(feat. Pi Ja Ma)」Fantastic Mister Zguy

スーパーオーガニズムとの共演でも知られるフランス人シンガー・ソングライター、ピ・ジャ・マと彼女の友人Fantastic Mister Zguy(←すみません、あまりこの人の情報がなかった)がコロナ中にリモートで制作したコラボ曲。ちょっと映画『her』の「Moon Song」っぽくて素敵。

●「瞼」高井息吹

2018年のセカンド・アルバム『世界の秘密』からおよそ2年ぶりにリリースされた、1stシングル収録曲。ライブの際のバンド・メンバーでもある君島大空と、新井和輝(King Gnu)を共同制作&プロデューサーに迎えた本作は、キュートかつ切なさをたたえた高井の歌声と、ジョン・ブライオンあたりを彷彿とさせるポップかつサイケデリックな音像が見事に融合。

●「Old Records」Cardioid

LIZZY ELLISONのソロ・プロジェクト。ミツキを彷彿とさせる、ゾワゾワとした曲調がたまらんです。


●「John and Yoko」KOHH

恥ずかしい過去を晒していいですか? 中学生の頃、ビートルズ沼にハマった僕は、ジョン・レノンとオノ・ヨーコの関係性にめちゃくちゃ憧れまして。国境も年齢も、社会通念も超えた恋愛……お互いを高めあいながら、人生のフェーズを更新し続けてきた2人。「ジョン・レノンみたいに突然運命の人と出会い、強烈に惹かれ合いながらクリエイティブな活動をしたい!」なんて日記に書き記していた黒歴史があるのですが、KOHHのこの曲を聴いたらその頃の自分を思い出さずにいられません。

●「S.W.I.M.」Midwife

イントロのファズ・ギター&トレモロアーム奏法でノックアウト。ジーザス&メリー・チェインのファースト『Psychocandy』にも通じるような、純粋性と反骨精神が拮抗するサウンドスケープ。延々と繰り返すメロディも酩酊感を誘う。

●「Playground Love」Sugar Candy Mountain

ロサンゼルスを拠点に活動する男女混合4人組サイケバンドの新曲。一昨年リリースされたアルバム『Do Right』は、ベストアルバムに選出しました。この曲も、深い霧の中で聴いているような気怠いチェンバーサイケです。

この年観に行った砂漠のサイケフェス〈Desert Daze〉の初日に彼女たちは出演していたのだけど、地獄の渋滞に巻き込まれて観られなかったことが、今も悔やまれる。そのDesert Daze全体のレポはこちらで読めます。


●「Boca Chica」MUNYA

もう、イントロでやられますよね。モントリオールのJosie Boivinによるソロ・プロジェクトによるニュー・シングル。曲名は、テキサス州の海岸沿いにある小さな町の名前にちなんでつけられたそう。ローファイなカーディガンズというか、拡声器から流れ出すオリヴィア・ニュートンジョンというか、アバというか。スペイシー&ドリーミー。

●「Ordinary Guy(feat. The Matron 2)」Toro Y Moi

トロちゃんことチャズ・バンディックが、Chocolat & Akitoやトミー・ゲ­レロ、レイ・バービーらとのコラボでも知られるサンディエゴ出身の双子ジャズ・デュオ、ザ・マットソン2と作ったアフロ・フィリピン人Joe Bataanのカヴァー・ソング。細野晴臣やマック・デマルコあたりにも通じるエキゾポップがひたすら気持ちいい。サンミゲル飲みながらビーチで聴きたいですね。

●「Rollin'」Wonk

全22曲、1時間にも及ぶSF仕立てのコンセプト・アルバム『EYES』からの先行シングル。アルバムはNetflixドラマ『ブラック・ミラー』『ラブ、デス&ロボット』『トゥルーマンショー 』などにインスパイアされつつ、「エコーチェンバー現象」や「フィルターバブル」などコロナ禍でますます顕著になったSNSの弊害に警鐘を鳴らす大作で、どの曲もソウルやジャズ、R&B、ロックなど様々な要素をブレンドした一筋縄ではいかないアレンジと、色や匂い、手触りすら感じさせるようなサウンドスケープがたまらない。


●「Farsickness」Blake Mills

パフューム・ジニアス、フィービー・ブリジャーズ、イーサン・グラスカ、ローラ・マーリングなど、今年上半期のベストアルバムやベストソングに挙げたアーティストたちの作品にもプロデュースや客演で参加しまくっている、超売れっ子&現在最も重要なプロデューサー/ ギタリスト/ ソングライターによるソロ・アルバム『Mutable Set』より。ジャジーでどこかジョン・ブライオンあたりにも通じるメロディが魅力。

●「Andromeda」Once And Future Band

な、なんてビートリーなんだ! ポップなメロディ、目まぐるしく転調するアレンジ。ビートルズはもちろん、キンクスやハーパース・ビザール、ロジャー・ニコルス&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ、ビーチ・ボーイズあたりが好きな人もきっと気にいるはず。特に中盤からの、怒涛の展開は悶絶必至なので最後まで聴いて!! アルバム『Deleted Scenes』も全曲良いです。

●「Hurry Home(with beabadoodee & Jay Som)」No Rome

The 1975 のコラボレーターとしても知られる、マニラ出身ロンドンを拠点に活動するシンガー/プロデューサー、ノー・ロームが愛しのベアバッドゥービーとジェイ・ソムをフィーチャーしたニュー・シングル。フィリピンの血を引く3人のシンガーが人間関係の葛藤とフラストレーションについて歌った曲で、ベアバッドゥービー、ノー・ローム、ジェイ・ソムの順に歌い継がれるメロディの愛おしさ、そして何より3人の歌声の素晴らしさに涙腺崩壊。ちなみにベアバッドゥービーは今一番、ライブが観たいしアルバムが楽しみだしインタビューしたい人の一人です。

●「In Loving Memory」Gabriels

どこかアントニー・ヘガティを思わせる歌声。まだ全然情報がなくて、彼のこと詳しいことは全くわからないのだけど、ドゥーワップやゴスペルをベースにしたピアノとコーラスを基調としたシンプルなアレンジが、懐かしくも新しい。後半のストリングスはちょっとポーティスヘッドっぽくもある。今後の音源も楽しみ。

●「Capitalism」世武裕子

世武のピアノが炸裂しまくる2020年配信リリース第1弾。リズムは江島啓一(サカナクション)、ギターは田渕ひさ子。

●「Call You Back」Mourn

スペインの4人組ガレージロック/ポストパンク・バンドによるニュー・シングル。めっちゃ清々しいギター・アルペジオから、狂おしいほど切ないサビへ。メジャーなのかマイナーなのか、よく分かんない調性が妙に心をゾワゾワさせる。彼女たちには昨年の来日時、インタビューをさせてもらっています。ちょうどその頃バルセロナはカタルーニャ自治州で大規模な抗議デモが起きていて、それについてもいろいろ聞いたのだった。


●「Even If I Tried」Jenny O.

ロサンゼルス在住のシンガー・ ソングライター、ジェニー・O。ジョナサン・ウィルソン(ファーザー・ジョン・ミスティやコナー・オバースト等)のプロデュースによる2018年のアルバム『Peace & Information』も素晴らしかったのですが、今回の新曲も最高のフォーク・ロック。The Impossiblesの「How Do You Do It?」(1990年)を思い出しましたよ。

●「Time」Arca

ビョークやロザリア、シャイガールらが参加した待望の新作『KiCk i』より。波打つようなシンセに目眩がする。問答無用、唯我独尊。こんなサウンド聴いたことがない。でもポップ。

●「When I Write The Book」Janne Schra, M. Ward

ニック・ロウの大名曲を、オランダのシンガー・ソングライター、ヤナ・スクラとズーイー・デシャネルとのデュオ、シー&ヒムとしても活動するM・ウォードがリメイク。作曲のクレジットにニック・ロウの名が入ってないのはよく分からんのだけど、オーガニックなアレンジがとても素敵なのでベストに入れました。

はい、以上になります。いやあ、疲れたけど楽しかった。色々漏れている気がしないでもないのだけど、現時点でのベスト100ということで。最後までお付き合いくださってありがとうございました。


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