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私に影響を与えた写真家を紹介します。

「好きな写真家は誰ですか?」
これは、写真家の間でよく交わされる質問だ。
相手が誰の撮った写真を、どのような理由で好きだと感じているのかを知ることで、その人が写真を撮る上で大切にしている核の部分が自ずと見えてくる気がする。

私も、写真好きな友人やクライアントから、そしてインタビューの場に至るまで、何度もこの問いを投げかけられたことがある。
そして、その度に複数の写真家が頭に浮かび、どう答えるべきか頭を悩ませてしまう。
ちょうど1年前に、好きな本を紹介する記事をnoteに書いた時も実感したのだが、私は誰かから「好きな○○は何ですか?」と聞かれた時に、答えに窮してしまう癖がある。

そんな私が、個人的にはとても珍しいことなのだが、来月、多くの人の前でお話をする機会をいただいた。
そこで好きな写真家についても触れる可能性があるため、この機会に自分の頭の整理も兼ねて、自分が影響を受けた写真家の方々を紹介しようと思う。
(この記事ではごく簡単な紹介で済ませ、来月お話しする際にはもう少し掘り下げて紹介する予定。)


1. 濱田英明さん

彼の写真を見ていただくと、「高埜、好きそうだな〜」「影響受けてるな〜」と感じられる方が多いだろう。
それくらい、私は写真を撮り始めた頃から彼の撮る写真だけでなく、彼の綴る文章が大好きだ。
特に、彼が綴る文章から伝わってくる、写真を撮る際の被写体との距離の取り方や、撮る者という視点を飛び越えた、世界に向けたまなざしに深く共感し、影響されてきた。

既に多くの方は読んだことがあるだろうが、濱田さんのnoteには、写真というものを問い直す上で鍵となる言葉が散りばめられているので、是非多くの方に読んでいただきたい。
(以下は、私が最も心を動かされた記事。)

2. 川内倫子さん

柔らかく、優しく、みずみずしい写真を撮る人。それが、川内さんの印象だった。
しかし大学生の時、彼女の写真を写真展で見た時に、その印象がひっくり返るほどの衝撃を受けた。
彼女の撮る写真からは、命をいつか消えてしまう儚くて怖いもの、と捉える視線が感じられた。
その、命に対する畏怖の念が写真に込められていて、なんだか恐ろしい、と感じられたのだ。

3. 山元彩香さん

2021年に東京都写真美術館で開催されていた、複数の写真家が出展している写真展で、彼女の写真に出会った。
絵画かと思うようなタッチの作風と、光と影のコントラストの美しさに目を奪われ、写真展を後にしてもしばらく心がざわついていた。
彼女は言葉の通じない異国の地で、初めて会った少女たちを主に撮影しているらしい。
異国の地からやってきた写真家を目の前にした被写体たちは、彼女を拒絶するでもなく、媚びるでもなく、まさにニュートラルな佇まいでカメラの前に立っている。
そんな撮る側/撮られる側の関係性に想いを馳せながら鑑賞したい写真たちだ。

4. 瀧本幹也さん

私のお気に入りの映画「海街diary」の撮影監督をされた方で、主に広告やポスターなどの商用写真を撮影されている。
「海街diary」の写真集は、大切な撮影の前などに何度も読み返し、自分の感覚をチューニングをする助けになっている。
私が彼の撮った写真の中で最も好きなのが、サントリー天然水のCMの写真だ。
彼が約1年前に出版された本「写真前夜」には、この時の壮絶な撮影方法が紹介されている。
一つの作品を工夫を凝らして創り上げようとする情熱、自分の世界観を守りながら市場や社会の需要に応えていく姿勢に、私が非常に尊敬の念を抱いている写真家だ。

5. Marta Bevacquaさん

パリを拠点に活動している女性写真家。今回の記事で紹介した中で、最も最初に知った写真家だと思う。
16歳の時に周囲の女の子たちを撮り始めたのが写真家への道のきっかけであったらしいが、似たような背景を持つ私としては、非常に親近感を感じた。
彼女の撮る写真を見ていると、人間をこんな風に表現する方法があったかと、目から鱗の連続である。
最近の写真がマンネリ化してきたな、何か新しい表現に挑戦したいなと感じた時は、彼女の写真に触れるようにしている。

6. 林響太朗さん

Mr.Childrenの「Here Comes My Love」「Your Song」「SINGLES」など、私が大好きな曲のMVを撮影された方だ。
静止画であっても、まるで映像からのワンシーンを切り取ったかのように、動きや声が伝わってくる。
静けさの音を感じる写真、といったら、真っ先に彼の写真を思い浮かべるだろう。

7. 原田教正さん

湿度が40%くらいありそうな、見ているだけで水滴が滴ってきそうな写真を撮影される方。
果物や森林の写真が特徴的で、原田さんの写真だとすぐに分かるほど。
緑色の表現がとても好きで、実は自分の写真を編集する時にもこっそり意識している(全然似ないのだけれど・・・)。
彼のウェブサイトでは、まるで写真集のページをめくるように写真を眺めることができる。写真を眺めながら、彼がシャッターを切る瞬間に呼吸が止まるさまを、そっと想像している。


まだ紹介したい写真家が何名も頭の中に残っているが、あまり長くなってしまっても良くないので、今回のところはここまでに留めておきたい。
ここまで好きな写真家を紹介してきて、私は「自分にしか出せない色」を核として持っている写真家に、強く影響を受けていることに改めて気がついた。
これからも、他の方が撮影した写真の良い面を取り入れながら、自分にしか撮れない写真を撮っていけたらいいなと思う。

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