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【詩】 手探り足探り
てさぐり
あしさぐり
足で探るという言葉はあったか
なくともつま先や足の裏で道を確かめたことはあるだろう
そこは張り出した庇
雪が
枝が
風雪に抉られた崖を隠す
人生にも
いくつもそんな庇がある
踏み出して落ちる
たまには死ぬ
大丈夫誰しもがいつかは終わる
死に怯えるな
生に微睡むな
張り巡らされた
細い琴線を辿れ
目を開けて
わずかな危うさを見逃すな
【詩】 いつのまにか季節が変わる
夏だったはずだ
いつ秋になった
ふと目を上げて
秋の雲が空を覆うのを見て
ただ愕然とする
無為に時が過ぎる
それでもいい
だが
それを気付かないのは
無為以下の恐ろしさ
忙しさに取り紛れてとか
忙しさとは心を亡くすと
まあよくそういう言い回しもある
歩道のレンガともタイルともつかない
舗装の狭間から
見たこともない草が登る
子供の頃にはなかった
おそらく船から来た
コンテナに積まれた
【日記】 擦り切れた嫌悪すら振り込んで
久しぶりにこちらに来た。
全てが終わったというには、まだ細々としたことが片付いておらず、それは言い切れないのだが。
ただ、大物は片付いた。
実に八桁の金額を使い込んで負債として遺した父への感情は、その一件よりもだいぶ前から憎悪すら擦り切れて醜悪な老人への嫌悪として蟠っていた。
遺された負債となった額面の多い金は、私と兄以外の親族にとっては、伯母の愛だと言う大義名分で目の色を変える金だったのだ