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【俺なら、有名書店員になって本屋の未来を照らせるとマジで思っている】

神保町にできた新しい書店、『ほんまる』さんへ行ってきた。こちらは個人もしくは法人が棚主となり、POPを貼ったり電飾を付けたり等、棚の中であれば自由にカスタマイズできるシェア型書店である。

開店初日だったので全ての棚が埋まっている状態ではなかったが、それでも棚主たちの個性はじゃぶじゃぶと溢れていた。
好きな作家を詰め込んであったり、売り出したい本を並べてあったりと、まさに推し本たちのエンターテイメントパーク。
『歩く屍堂』さんのゾンビに関する書籍棚は成生的にかなりツボで、興奮のあまりバリバリむしゃぶりついてしまいたくなるほどであった。(迷いに迷ったあげく、小林泰三さんの『わざわざゾンビを殺す人間なんていない。』を買った)

よほど面積が広いか、よほどコアな個人店でない限り、一般書店ではこのような特定ジャンル全振り棚を見かけることはほとんどない。フェア等であればまた別だが、あくまでも本屋としてのバランスを保った選書と配置がベースとなっている。
東野圭吾の新刊が出ればとりあえず一番目立つところにデデーンと平積みして人を集めるし、新刊は入口から近くの目立つ位置に置かれていたりするように。
だがシェア型書店は違う。作家作品関係なく、個々の選書が星のごとく点在しており、お客さんをあちらこちらへと引き寄せる。そして棚から棚をハシゴして生まれる冒険と発見の先には、お客さんから棚主へ向けた見えない交流がある。

「この棚主さんとは美味い酒が飲めそうだ!」
うんうん頷いて横の棚へ。
「へぇ・・・いいセンスしてるじゃん」
澄ました顔をしつつも、スマホにメモを取る指は必死の動き。 

本そのものも然りだが、自分がそうであったように、棚主さんにも興味が湧いた。
まずは選書理由を聞きたい。そして他のおすすめも知りたい。書店員としての知識の幅も増やしつつ、交友関係の幅も増やせたらいいな・・・。
ここから派生するかもしれない物語に、ピカピカキラキラトクントクンと胸がときめく。(まあさすがに山崎怜奈さんとは話せないだろうけどサ)

棚主:山崎怜奈さん

『ほんまる』さんマジですげえな。
各所からの祝花に囲まれた外観に感嘆していたのだが、同時にどこからともなく悔しさが芽生え始めてくる。
いや、羨ましいというべきか。
ウィンウィン回り続けるシュリンカーが発する熱よりも、本好きたちの想いが発する熱の方が温かいということを、俺は体感してしまったのだから。

この本屋は広くて品ぞろえがいいから。
この本屋は駅ナカにあって行きやすいから。
みんなが足を運ぶ有名店だから。
コミックの特典が付くから。

本屋に訪れる理由として多いのは、このようなものなのかもしれない。
しかしこれだけでは限られた本屋しか生き残ることができない。大衆にマッチするような決定的な強みを持たない本屋は客足が遠のき、いつかは消滅してしまうだろう。

そこで俺は思ったのだ。
人が人を求めてくるような場所としても機能することが本屋の未来なのではないかと。

本屋の形を保つために行う日々の業務も大切だけれど、それ以上のアプローチがあれば輝きが増すのではないか。
本を想う熱が伝導していく瞬間を。
書店員とお客さんの心が繋がる瞬間を。
その景色を連続して作り続けることが生き残りへの第一歩なのではないか。

だから俺は有名になりたい。
書店員として影響力を持つ人間になりたい。その結果として人が集まってくるような本屋の姿を実現させたい。
「成生が作っている売り場が気になっていて・・・」
「ありがとうございます!よかったらいろいろご紹介しますよ!」
そんなやり取りをしながら店を彩っていきたい。
こんなに本屋が楽しいなんて!!!
そう多くの人に思ってもらえるために今日も俺は本を並べる。朝から汗水垂らして大量の段ボール箱を開けて、創意工夫を凝らして作った売り場は決して無機質なんかじゃない。
きっと伝わるんだ。伝えたいんだ。
本屋というエンターテイメントに富んだ世界の息吹を、俺はバリバリ広めていきたいんだ。

もちろん他の本屋に関しても同様である。そこの書店員さんがプッシュしている本や、独自展開しているフェア等を楽しんでくれれば最高だ。
大量の在庫があるからという理由で平積みされているものよりも、情熱的なPOPが貼ってある小規模展開のもののほうが不思議と惹かれてしまうもの。そこに込められたささやかな抵抗と愛のメッセージを楽しんで頂ければ幸いである。


書店員・成生隆倫はメディアに出られます。レビューも書きます。
本屋の店番もできます。
勤務先の書店名をSNSに書けないことが弱みですが、書けないだけで、抜け道はすでに見つけ済みです。
本屋を愛する業界関係各所の皆様、
どうか販促材料として俺を使ってください。
俺にたくさん仕事をください。
俺なら、間違いなく売れます。


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