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母を想う⑤ 最後に歌いたくなった歌は童謡「おかあさん」でした

ベッドに無理矢理添い寝していた最期の1週間。
小さかった頃の話、出かけた時の話、作ってくれたワンピースの話…一方的にではありましたがとりとめなく話し続けていました。


母が目を閉じているときには、子守歌を歌うように母の大好きだった
さだまさしの歌、・・・歌詞のあるものはうろ覚えのところが多く、
それでも歌い続けましたが、最後にいきついたのは、歌詞のない
 北の国から でした。
歌詞のない良さがいかされました・・・
ありがとう   さださん!   でした。

 


忘れな草をあなたに
 という歌もたくさん歌いました。
これは、私が中学生だった頃に近所に住んでいた一緒に海水浴に行ったり、旅行に行ったりと仲良くしていた家族が悲しい事情で引っ越すことになったときに母がお別れ会を計画して、町内の集会所で町内班のみなさんと歌った思い出の曲です。
あの頃は、カラオケもありませんでしたが、
「みんなでうたいませんか!」
の母の声掛けで合唱になりました。
涙をこらえながら歌ったことを覚えています。
小さかった妹やその家族の子どもたちは事情のわからない中の楽しい食事の集まりでしたので、
たくさん並んだごちそうやお菓子、飲み物に大はしゃぎでした。

    

  母の告別式の日、自宅の前で町内の方が  
 「どうしても・・・」
  とマイクを持ち思い出話をしてくださり
  ました。
  町内の集会所の今はない大きな桜の木の下
  お花見をしたこと、そういうとき料理など 
  の準備を一生懸命してくれたことを話し、
  感謝の気持ちを伝えてくださいました。
  カラオケの無い時代、手拍子で一緒に歌を
  楽しんできた方です。


母の呼吸や肌(チアノーゼです)が変わっていくのを感じた時、この歌しかでてこなくなり
ました。
何か考えてとかそういうのではなくて、何故だかこれしか歌えなくなっていました。
それが童謡  おかあさん  です。
「おかあさん」「おかあさん」て呼びたいのかな。
50年以上生きている私ですが、呼びかけた名前の数はきっと
「おかあさん」が一番多いのでしょうね。


      おかあさん  なあに
      おかあさんて いいにおい
      せんたくしていたにおいでしょ
      しゃぼんあわのにおいでしょ


      おかあさん  なあに
      おかあさんて いいにおい
      おりょうりしていたにおいでしょ
      たまごやきのにおいでしょ


            童謡 おかあさん
            作詞 田中 ナナ
            作曲 中田 喜直


今の実家ではなくて子どもだった頃の実家の
洗濯機、物干し場。
物干しのハンガーに傘。
一緒に干されていた梅干し、ぜんまい。

マッチを使わずに火がつくようになったと喜んだガスコンロ。
玉子焼きフライパンの前に立つ母のエプロンの柄。


様々な情景が浮かんできて、涙がこぼれます。
みじかいやさしい歌詞にこんなにも気持ちをゆさぶられるとは・・・・
すごい歌だなあ、
童謡ってすごいなあ、


わたしは幸せなことに保育園、今は子育て支援の現場でパパママ、こどもたちに歌を届けることができます。
童謡、わらべうた、たくさん触れてもらいたいなあと思っています。
今、こころに響かなくても心の奥底に残って、
いつか心を温めることができるように。



そして、今日もお風呂でそっと歌います。
   おかあさん・・・




    


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