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タリナイオモイはあしたになれば。

今ではドラマ、バラエティなど、あらゆる番組でお見かけするようになった小関裕太さん。
そして現在、朝ドラ「ちむどんどん」やCMなどにも数多出演中の黒島結菜さん。
おふたりがかつてダブル主演された映画に「あしたになれば。」という2015年の作品がある。
この映画の劇中挿入歌として、僕タカハシコウスケの曲を起用して頂いた。
「タリナイオモイ」という曲だ。

(※↑のYouTubeに上がっているのは映画で起用されたversionなのだ!)

元々、挿入歌の話を頂いた当時は、タカハシコウスケの別曲(当時既にCDに収録されていた曲)を、女優の佐々木友里ちゃんが歌ったらどうでしょう?というオトナたちのハナシからスタートしていたのだけれど、正直なところ、「こんな素敵な機会を頂けたなら、折角だったら書き下ろしをしたい」という自分のオモイがあって、それを周りにはなんとなーく伝えていた。

それでも「ま、取り敢えず、スタジオに入ってみて、(タカハシコウスケの既存曲で合わせてみて)それで決めましょう、ね?」みたいな周りの雰囲気は割とずっとあったから、僕はその中で資料として頂いていた台本を読みながら(当時はラッシュ?なるざっと編集されたものも頂いていた気がする)、映画の世界を自分の中で膨らませ、「新しく書いた曲で…絶対書き下ろしで…採用してもらうぞ」なんて虎視眈々と考えていた。黙々と曲を書いた。

そしていよいよやってきた初回スタジオの日、一応の形式上、友里ちゃんと既存曲の歌割りなどを含めて練習していたのだけれど、その時間の最後に「あ、あの〜ぅ、実わ〜、僕、曲を書いてきましてェ〜…」とそれはそれはとても控えめに、その日までに何とか書き上げたワンコーラス分の「タリナイオモイ」の原型をスタジオ内で弾き語りで披露した。
すると幸いにもスタジオ内は「これでいきましょう!」な雰囲気になり、僕は念願の「映画挿入歌の為の書き下ろし」のチケットを手に入れる事ができた。

「この曲はこういうことを言いたくて書いたんです!」みたいな説明はあまり好きではないので(耳にしてくれる人には作り手のそういうものを関係なく、受け取り方を限定せずに受け取ってもらいたいので)、この曲がどういう曲なのかは特に書かないけれど、所謂「シンガー」ではなく「女優」が歌う事が前提だというところに意識を向けて書けたし、後々にこの曲は、僕と佐々木友里ちゃんを映画の舞台となった大阪は羽曳野市、藤井寺市、太子町という、それまで行った事のなかった素敵な場所にたくさん連れて行ってくれた。
そして何より、その場所で素敵な人たちと出逢わせてくれて、繋いでくれた。

この「タリナイオモイ」は色々な都合で「音源」としてのリリースが後手に回ってしまったから、映画用音源の完パケスケジュールなどの兼ね合いもあり、映画で使って頂いているテイクと、CDになっているテイクとは、全く別モノとなっている。
驚きなのは、映画バージョンのドラムは何と僕が叩いている事。デモのつもりで録ったテイクが「味があっていいじゃないか」という、謎の評価をもらい、それがそのまま採用された。
(因みに、映画バージョンのギターとベースは橋本孝太くんが弾いてくれている。後にCD化された際には、ドラムを菅野綱義さん、ベースを豊福勝幸さんが担当してくれて、作者本人の僕も安心して聴ける。)

「あしたになれば。」の舞台挨拶の日、僕と佐々木友里ちゃんもお招き頂き、作品を初めて正式なサイズで鑑賞したのだけれど、自分の書いた曲が、そして自分の声が、映画館のスクリーンの映像と重なりながら流れた時のあのゾクゾクっとする、嬉しいような照れ臭いような、不思議な感覚は未だに忘れられない。(ついでに言うと、スクリーンを見ながら、観客のみんなが僕のあのドラムを聴いていると思うととてもスリリングな気持ちでもあった。)

その後、佐々木友里ちゃんには、テレビ番組のエンディング曲や、小芝風花さんと横浜流星さんの出演した映画の挿入歌を書かせてもらったけれど、僕の中ではこの「タリナイオモイ」という曲が大きな転機のひとつになっていると思う。

佐々木友里ちゃんが歌った楽曲の中では、唯一この曲だけが未配信でCDのみだけれども、もし機会があったらこの記事を読んでくれているあなたにも聴いてみてほしい。
そして、今をときめく俳優陣の瑞々しい姿に目を細めながら「あしたになれば。」を観てみてほしい。きっと、誰かの青春でありそうで、でも誰しもの中にある青春でもあるみたいに思えるはず。

映画の素敵なシーンで流して頂けた「タリナイオモイ」は、「僕が過ごせたかもしれない青春」に対する憧憬を込めた一曲である。

タリナイオモイ/佐々木友里&タカハシコウスケ

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