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ビートルズ "Tomorrow Never Knows"、私が感じ取った曲の印象

ビートルズの楽曲ひとつひとつについて、私が感じたことをベースに、8項目の音楽的視点からポイント評価したコンテンツを公開しています。最後のアルバム LET IT BE から順に過去へさかのぼって、1曲づつ投稿しています。

第 101回目、今日の楽曲は...

アルバム REVOLVER B面 7曲目 "Tomorrow Never Knows"

サウンド:★★☆
メロディ:★☆
リズム :★★☆
アレンジ:★★☆
第一印象:★☆
スルメ度:★★
独創性 :★★★☆
演奏性 :★★★☆

<★ ... 1点 ☆ ... 0.5点、5点満点、各項目の解説は最後にあり>

アルバム REVOLVER の最後を飾るのは、サイケ色てんこ盛りの曲。ただ、ジョージの曲ではなく、ジョンの曲である。イントロからして怪しい雰囲気がさく裂している。タンブーラの音が鳴り始め、おもむろにベースとドラムが入る。ベースはぼんやりとした無表情な感じの単調音、加えてドラムのタムが何気に不気味である。そして極めつけは、カモメの鳴き声のような音。これでもう、トリップ状態に陥ってしまう。

ボーカルのメロディ・ラインは、8小節の Aメロのみで、間奏を挟んでこれを 7回繰り返し、エンディングに入る。きわめて単純な曲構成ではあるが、その反面、間奏部分ではいろいろすごいことをしている。まず、バイオリンの音のようなテープ・ループ、そして極めつけは、テープ逆回転によるギター・ソロ。このソロは、逆回転させたときに意図したフレーズで再生されるようにするため、譜面を逆に演奏して録音しなくてはならない。むちゃくちゃ手間がかかる作業である。

ジョンが歌うボーカルには、始終 ADT 処理がされているため、曲の全般を通して今までにない響きのボーカル・サウンドになっている。そして、後半からのボーカルには、さらに斬新なエフェクトがかかる。ジョンが「ダライ・ラマが山の頂上から歌っているようなサウンドにしてほしい」と、エンジニアのジェフ・エメリックに要求をしたことが、トンでもないエフェクトを「開発」した発端である。

それを実現すべく、ジェフ・エメリックは、ジョンの声をレズリー・スピーカー(ハモンド・オルガンの回転スピーカー)を通して録音したとのこと。無茶な要求をするジョンもジョンだが、その意図を真面目にくみ取り、常識にとらわれない録音方法を編み出したジェフも、またジョンに劣らず奇才である。

コードはあってないようなもの。一応、キーは Cメジャーで、ベースもずっと C音を弾いている感じがする。一部、"It is not dying..."の"dying" の箇所で、Bb/C っぽいコードにはなっているようである。

ADT 処理されたボーカル、多数のテープ・ループ効果音、テープの逆再生によるギター・ソロ、ボーカルのレズリー・エフェクト。そして、睡眠作用のあるベースとドラム・パターンが延々と続くなど、すべてにおいて常識を破った野心作だといえる。

これでアルバム REVOLVER は終わりです。このアルバムを境に、ビートルズはライブ・コンサートを一切やめて、スタジオでの音楽制作へシフトしていく。それに伴って、ライブではなかなか演奏できない曲が増えてきている。その一方で、録音方法やエフェクト効果など、音楽制作技術面で飛躍的な進歩を遂げてきている。その技術の粋を集めて制作された楽曲が、次作アルバム SGT. PEPPER'S で一気に開花することになる。

次回からは、アルバム RUBBER SOUL です。

あくまで曲の印象を具体的に表現するための手段です。曲をランク付けする意図はありません。


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