安倍元首相との対談(靖国シンポ、H16,11,27)

 平成16年11月27日に開催された第6回靖国神社崇敬奉賛会主催の公開シンポジウムで安倍元首相と対談した内容の要点を抜粋して紹介したい。

<安倍>高橋先生も前から研究しておられますが、サッチャー首相は1980年に本当の教育改革に取り組みました。日本の歴史教育がこんなに自虐的になるのは敗戦国であるからと思っていたら、戦勝国であるイギリスも歴史教育は極めて自虐的になっていた。当時イギリスは「英国病」と言われ、国の勢いが大変衰えていた。それをサッチャーは大改革し、教育水準局をつくって、百以上の水準に達しない学校をつぶして、日教組のような英国の教員組合が半年間ストをやった。しかし、サッチャー首相は全く動じなかった。いかに大切な判断の時に動じないかが大切です。小泉改革で全く手つかずの教育改革、とりわけ教育基本法の改正を国が責任をもって断行していきたい。
<髙橋>教育基本法改正をめぐって、自民党は「国を愛する心」、公明党は「国を大切にする心」という表現で対立しているが、どこが違うのか。また、「国を愛する心」をどう育てていけばいいとお考えか。
<安倍>当時私は自民党幹事長で、それは絶対に譲れない一線だと考えた。例えば私が妻を大切にするということは一つの価値観の表明だと思うが、大切にする動機が、愛しているが故に大切にしている場合もあるし、選挙運動を一生懸命やってもらいたいという気持ちで、ここは大切にしておかなきゃいけないなと思っている場合もあるんですね。これは全く違う動機であって、学校で「鉛筆や消しゴムやノートを愛しましょう」とは言わない。では、国も鉛筆、消しゴム、ノート並みなのかということではないか。これは譲れない一線なのです。
<髙橋>大変わかりやすくお話しいただきました。中国の胡錦涛国家主席が小泉首相の靖国参拝に反対しましたが、非常にしたたかな外交戦略・戦術に小泉首相もはめ込まれたんじゃないかという危惧さえ抱くが、大丈夫か。
<安倍>中国の論理は「A級戦犯」が合祀されているから、というものであるが、それは東京裁判で占領軍が国際法的には全く瑕疵のある裁判によって一方的に裁いたものであって、そもそもこの論理は破綻しており、今後とも総理は当然の義務として靖国参拝を続けるべきである。
<髙橋>安倍さんは第一部の基調講演「受け継がれた心」の中で、祖父・父から受け継いだ心とともに、特攻隊で散っていった鷲尾中尉の辞世の句「はかなくも死せりと人のいわばいえ 我が真心の一筋の雲」を引用し、そういう気持ちこの国のために命を捧げた人たちがいることをみんなはよく考えなければいけない。個人の自由、民主主義、権利も大切だが、それを担保するのは日本という国なんです。その国が危機に瀕した時に命を捧げる人がいなければ、この国は成り立っていかない。そういう人たちに尊崇の念を表す、それを否定してしまっては根本が崩れてしまうんです。小泉総理は総理に就任してずっと靖国の参拝を続けておられます。日本のリーダーは小泉総理の意志を、次のリーダーもその次のリーダーもしっかりと受け継いでいくことが大切である」とおっやいました。現実にはニートと呼ばれる、働かない、教育も受けない、職業訓練もしない若者があふれ、引きこもりも増えていて、親殺しまで起こす若者が出現している。こういう問題をどう克服していけばいいか、どうすれば英霊の心が若者たちに受け継がれるようになるとお考えかを伺いたい。
<安倍>よく自衛隊の皆さんから話を聞くんですが、暴走族の出身者みたいな人が何人も自衛隊に入るんですね。しかし半年ぐらいすると見違ってくるんですね。ある種の規律の中で自分を見直す。そして自分を厳しく𠮟る上官がいて、自分の事を考えてくれる上官がいることで随分人は変わるんだと思いました。先日NHKのプロジェクトXを見ていたら、伏見工業高校のラグビー部の監督の山口先生が出ておられて、ヤクザのような悪の集まりの部員たちが見事に更生して、今は高校の先生になっているという話を聞いて、先生の持つ影響力、教育力というのは本当に大きいなと思いました。吉田松陰先生もたかだか1年ちょっとで当時の若者の心に電撃が走り、電撃に打たれたような衝撃を与えてその人の人生を変えたんですね。まずそういう先生を育てなければならないと思います。そうすれば、どんどんみんな変わっていけるし、そういうチャンスはみんなにあるんだろうと思います。
<髙橋>私もそういう思いで東京、大阪、福岡(後に埼玉にも)師範塾を広げ、そこに集まってきた教師が責任転嫁しないでまず自らが「主体変容(心のコップを上に向ける)」し、親身になって「心施」すなわち「心を込めて心を尽くして心を伝える」ことによって、教育問題の解決に取り組んできました。最終的には、「人づくり」こそ教育改革の最大の課題ではないか。「みずから省みて直くんば千万人といえどもわれ行かん」の精神で、ぜひ強力なリーダーシップでこの日本国を導いていただきたいと思います。


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