小説の紹介‼︎イタマール・ヴィエイラ・ジュニオール著『曲がった鋤』
イタマール・ヴィエイラ・ジュニオール著『トルト・アラド(曲がった鋤)』の日本語訳が発売されました。
駐日ブラジル大使館の協力のもと水声社から出版されました。
武田千香さんと江口佳子さんが翻訳をしています。
2019年に出版された本書はたちまち名作になり、20ヵ国語以上に翻訳されているそうです。
ポルトガルの文学コンクールのレヤ賞に選ばれ、2020年にブラジルでジャブチ賞(長編小説部門)とオセアーノ賞を受賞している名作です。
本書は、三部からなる小説で、一部と二部はビビアーナとベロニージアの姉妹がそれぞれ語り手になっています。
祖母のドナーナが隠し持っていた象牙柄のナイフを姉妹が発見するシーンからストーリーが始まります。
姉妹は象牙柄のナイフを口に咥え、二人とも舌に傷を負います。
姉妹の一人は舌を失いますが、もう一人は傷が深かったものの舌を失わずに済みます。
話を読み進むとどちらが舌を失ったかがわかります。
そして、ドナーナの象牙柄のナイフは小説の最後まで出てくる重要なアイテムです。
「あなたの父親が、古く重いひん曲がった鉄の鋤を引きずり、曲がった線を描きながら大地を引っ掻いていた姿を思い出す。」
282ページに書かれた文で、タイトルの『曲がった鋤』にもなった表現です。
大農場で働くのは奴隷の子孫の農民で、ビビアーナの夫のセヴェーロは農場の労働環境の改善を訴え、農場主ら支配者層と対立し悲劇に見舞われることになります。
本書はブラジルの奴隷制度の負の遺産に立ち向かう人々の姿を描いた作品です。
【トルド・アラド(曲がった鋤)】
イタマール・ヴィエイラ・ジュニオール著
武田千香、江口佳子訳
○出版社 水声社
○発売日 2022年12月23日
○単行本 322ページ
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