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要約することも伝えることが苦手です。わかりやすく伝えられるように考えながら、読んだ本を…

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要約することも伝えることが苦手です。わかりやすく伝えられるように考えながら、読んだ本を紹介していきたいと思っています。

最近の記事

読書149 『ひきなみ』

    千早茜著 小学校最後の年に、親の都合で瀬戸内の島で過ごすことになった葉。 そこで、同じ歳の真以と出会う。 中学生になったある日、真以は島に紛れ込んだ脱獄犯と出ていった。 真依と葉が、島で過ごした「海編」と、大人になってからの様子が綴られた「陸(おか)編」 親の身勝手さ、偏見、生きづらさ、パワハラなど、様々なテーマをはらんだ真依と葉の境遇。大人になって欠けていたピースを埋めていくように、ずっと伏せていた気持ちと向き合い、答えを見出していきます。 「人の弱さや卑怯

    • 読書148 『東京、はじまる』

         門井慶喜著 江戸から東京へ。 日本銀行、東京駅、両国国技館、大阪株式取引所、東京米穀取引所などを手がけた建築家・辰野金吾が、国家議事堂の建築に取りかかっている最中に、インフルエンザに見舞われて亡くなるまでの、野心と葛藤の生涯を描いた物語。 錚々たる面々が、続々と登場します。 後に名前を残す方たちの、ずっと以前の知らなかったエピソードの数々には、楽しむ要素がたくさん詰まっています。 また、土地の由来についてもおもしろく、個人的には「丸の内」のくだりが印象に残りました。

      • 読書147 『編めば編むほどわたしはわたしになっていった』

          三國万里子著 お菓子作りをする妹さんと一緒に、お菓子と手編みニットなどの手芸品の販売会をスタートさせ、その展示会は評判を呼ぶ。 やがてニットデザイナーとして活躍し、本も出版させる。 編集者との縁で、今回、エッセイ本が出された。 その評判は、異例の約30媒体にものぼる取材・紹介が続いていたのだそう。 そのまんまの日常が表現されていて、共感する部分も多く、読み進めていくうちに気持ちが洗われるようでした。 何があったわけでもなく、人と関わることが苦手になり、早退を繰り返

        • 読書146 『ルミネッセンス』

             窪美澄著 団地が立ち並ぶ町を舞台に、人々の闇を感じさせる連作短編集です。 ・トワイライトゾーン 母の介護で団地に通う男性教員。バーで出会った少年を買うという体で連れ出し、勉強を教えるが・・・。 ・蛍光 文房具店の娘には、ずっと心に引っかかっている過去の出来事がある。思いきって同窓会のときに聞いてみたところ・・・。 ・ルミネッセンス 同窓会で初恋の相手と再会して・・ ・宵闇 学校でひどいいじめにあっている少女。 忙しい母の代わりに家事をして、団地に住む祖父の様子

        読書149 『ひきなみ』

          読書145『銃口』

             三浦綾子著 昭和元年。旭川の小学校四年生になる竜太は、新しく担任になった坂部先生の、教えや生徒との向き合う姿に心を打たれて、教師になることを決意する。 日中戦争が始まった昭和12年。 竜太は望んで炭鉱の町の小学校へ赴任する。 学校の様子に違和感を覚えつつも、理想に燃える日々を送っていた。 昭和16年。竜太は思いもよらない、治安維持法で拘束される。 やがて、召集されて満州へ。 【北海道綴方教育連盟事件】を題材に、三浦さんは「この昭和の体験は、どうしても書き残してお

          読書145『銃口』

          読書134 『失われた岬』

              篠田節子著 夫婦ぐるみでつきあっていた、憧れの存在である友人が北海道に移り住み、そこで突然「岬に行く」と言い残して失踪した。 二十年後の2029年。ノーベル文学賞を受賞した日本人作家が、受賞式の前日にストックホルムで失踪した。編集担当者がさまざまな手がかりを経て、やがて北海道にある岬に辿りつくが・・・。 近未来から戦時中にも遡る、この国の様相。 岬に引き寄せられる人々の姿を通して、人間の欲望の行き着く先に何があったのか。 この岬は、道がなくヒグマがいて危険極ま

          読書134 『失われた岬』

          読書133 『雨夜の星たち』

             寺地はるな著 三葉雨音は他人に感情移入ができない26歳。 同僚の星崎くんの退職を機に、仕事を辞める。 他人に興味を持たないことを見込まれた三葉は、ある仕事にスカウトされる。 「面倒な人」の機微が描かれた物語。  著者からのコメント 【空気を読むという言葉があります。 空気は目に見えません。 見えないけれどそこにあるものは、良いものとはかぎりません。 その場の空気を読むことばかりに心を砕き、 いつのまにか決定的に間違えった方向へ 進んでいく。そんな危険だって、あるの

          読書133 『雨夜の星たち』

          読書132 『銀河鉄道の父』

              門井慶喜著 岩手花巻で質屋を営む宮沢政次郎。 長男・賢治は、家業を継ぎたがらず、適当な理由をつけては金の無心をする。 政次郎は厳格な父親であろうと努めるも、つい甘やかしてしまう。 「父の期待にこたえなければ」という義務感にさいなまれ、それはとてつもなく自分には無理なことに気づき、八方ふさがりの状況の賢治。 紆余曲折を踏みながらの宮沢賢治の生涯を、父の視点から描かれる究極の親子愛。 「一家の長とは」を頭に置きながら、つい賢治を甘やかし、そして「明治の男だから」と、

          読書132 『銀河鉄道の父』

          読書131 『プリンシパル』

              長浦京著 水嶽(みたけ)本家に生まれた綾女は、稼業を嫌い、家を出て教師になった。 1945年。終戦後に父が病死。 長兄と三兄は戦地から戻らず、次兄は病気療養中のため、突如綾女が「代行」を余儀なくされる。綾女は継承することを拒むが、生まれたときから世話になった家族が、無残な殺され方をしたため、復讐のために「兄たちが帰って来るまで」水嶽組から水嶽商事株式会社となった稼業の会長兼社長代行となった。(公開されているあらすじから) 表紙の写真や「プリンシパル」というタイトル

          読書131 『プリンシパル』

          読書130 『朔が満ちる』

             窪美澄著 かつて中学1年の時に、家庭内暴力を振るい続ける父親に、斧で殴りかかって殺そうとしたことがあるー 心に傷を負ったまま家族とも離れ、悪夢のような記憶とともに生きていく史也。 ある日、出会った梓からも、自分と同じ匂いを感じた。 これは「決別」と「再生」の物語 (本の案内から) 酒に酔って暴力を振るう父親が悪い。でも、黙って耐えている母親にも思うところはある。 刺さるところがたくさんあり過ぎて、かなりつらかったです。 でも、史也が梓と出会い「親になって、ち

          読書130 『朔が満ちる』

          読書129 『名探偵のいけにえ』

          『名探偵のいけにえ』 白井智之 1978年、南米ガイアナで、教団「人民寺院」の信者九百人以上が、服毒自殺をするという惨劇を、モチーフにしたフィクションです。 病気も怪我も存在しない、失われた四肢が蘇るという、奇跡の楽園「ジョーデンタウン」 そこでは、次々と不審な出来事が繰り広げられる。 一体何が起こっているのか。 『名探偵のいけにえ』より時代の設定は古く、飲食店や伝説の探偵の名前以外、ほとんど接点がないように思いながら、話の行方も気になり、読み進めていきました。トリック

          読書129 『名探偵のいけにえ』

          読書128 『名探偵のはらわた』

             白井智之著 固有名詞や内容は、少し変えられていますが、世間を震撼させた昭和の大事件をモチーフにしています。 何十年も前に起きた出来事が、現代の事件につながります。どのように関わっているのか。予測のつなかい展開で、少しずつ明かされていきます。 探偵の助手の亘が、自身の経験から相手が嘘を言っているかどうかを見極めて、状況を判断するところや、なぜこのような犯行に及んだのかを追求する部分もあり、印象に残りました。 今から『名探偵のいけにえ』を読みます。 #読書#読書記

          読書128 『名探偵のはらわた』

          読書127 『らんたん』

             柚木麻子著 河井道は1877年生まれ。 明治維新の新政府の経費削減のために、父が伊勢の神職を失職。 一家は北海道に移り住み、道はキリスト教の教育を受ける。 やがて新渡戸稲造、有島武郎との出会い。さらには新渡戸から、津田梅を紹介され、道はアメリカへ渡ることになった。 恵泉女学園の設立者、河井道の生涯を描いた、事実に基づいたフィクションです。 新渡戸稲造、有島武郎、津田梅の他にも、お札になったり教科書に載ったり、映画や小説に取り上げられるような、後に名前を残した人物

          読書127 『らんたん』

          読書126 『BUTTER』

               柚木麻子著 男たちから財産を奪い、三件もの殺害容疑で逮捕された梶井真奈子。 30代の週刊誌記者の里佳は、梶井への取材を重ねるうちに、里佳の内面も外面も変化していき、人生のひとつの局面を迎えることになる。(公開されている内容) 里佳が抱えている仕事や親友夫婦のこと、両親のこと、恋人のこと。 梶井との関わりから、里佳のさまざまな内面があぶり出されます。 「梶井に関わった人間は、おかしくなる」ということが何度も出てきますが、最後にその本質に触れていて、ぞっとしました

          読書126 『BUTTER』

          読書125 『八月の母』

              早見和真著 越智エリカはこの愛媛の街を出ていこうとするたびに、母の美智子が目の前に立ち塞がった。 五年生になった美智子は、逃げるように家を出て行こうとする母親に、無理矢理ついて行った。 1977年から1992年にかけて、美智子とエリカが辿った人生が描かれている。 2000年から2013年まで。エリカのその後と、子どもたちのこと。そして事件のこと。 プロローグ、エピローグでは、事件から八年後が描かれています。 あの日、あの団地の一室で何が起こったのか。なぜ、

          読書125 『八月の母』

          読書124 『百花』

             川村元気著 結婚して二年になる泉。妻の香織が妊娠している。生まれたときから母、百合子とふたりで生きてきた。ふたりには、忘れられない過去があった。 大晦日、泉が実家に帰っても、母はいなかった。そして、夜の公園でブランコに乗っていを見つける。 それが、不安の日々の始まりだった。 百合子は認知症と診断され、やがて、泉は封印された過去に手をのばす。 現代において、失われていくもの、残り続けるものとは何か。 忘れていく母が、残したものとは何か。(公開されている内容) 百

          読書124 『百花』