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今季の日本ハムファイターズ全選手の寸評をまとめてみた。【ファイターズ選手名鑑2023】

はじめに

あっという間に2023シーズンも終わってしまいました。早かったですね。2年連続最下位で今年もオフシーズンが暇になってしまったということで、今季の振り返りnoteを書きました。今回はデータを引用して選手を分析するというよりは、実際に一軍の試合を映像で見た上でのファイターズの全選手(育成選手も含む)の寸評を主観で語っています選手名鑑のような、1年間の総評が載った通知表のような、そんなnoteです。一言で言えば自分の野球観が全面に出た、2023シーズン雑感まとめです。
育成選手を含めた選手1人1人の雑感、チーム全体の総評で構成されています。あくまで個人の意見のため賛否両論あるかと思いますが、温かく見守っていただけたら幸いです。
全選手ということで途轍もない長さのnoteになってしまいましたが、もしよければ目次から総評や推しの選手だけでも選んで読んでいただければ嬉しいです。

※成績はスポーツナビを参照、球種の割合や被打率などのデータは「データで楽しむプロ野球」さん、指標などは「ぼーのの日記」さんを参照しています。


選手名

#2 アリエル・マルティネス

春先は不安になるほどストレートに差し込まれており、多少調子の波はあったものの近年稀に見る大当たり野手。獲得時は1BやDHがメインになるかと思いきや、捕手も破綻なく守れる神助っ人。センターライン(捕手)を守れてOPS.800↑は替えが効かない。このような選手は国籍関係なく考えても森友哉ぐらいで、捕手でフル出場できればリーグバランスすら変えられる選手だと思う。特に近年は円安など年俸の高騰で、外国人補強が難しくなっている状況なので本当にありがたい存在。そしてシーズン中に残留を決めてくれた聖人。「I will be a Fighter for a long time🙌」は名言。
ボール球を見逃してストライクゾーンに来た球を打つという、シンプルだが難しいアプローチを年間通してやってのけた印象。ポイントを近くして変化球を見極めた一方で、これが速球に差し込まれる原因にもなった。しかしアプローチ面で最も隙がなく、個人的には1番信頼できるバッターだった。
欲を言えば150キロを超える剛速球への対応力を来季は求めたい。苦手なエース格を打ち崩すにあたって速球対応は鍵になる。今季は割と差し込まれていた印象。
唯一の懸念材料は中日時代から怪我が多いこと。今年も長期離脱はなかったものの、小さい怪我や違和感があって休養することもあった。大怪我がないことを祈るしかない。

#3 加藤豪将

ドラフト3位の逆輸入ルーキー。外国人枠を使わない助っ人のようなものなので、キャンプで怪我してしまって適応の時間が減ったことが残念だった。交流戦で鮮烈なデビューを飾ったものの、その後は右肩下がり。2Bの守備範囲に懸念があり、1Bでの出場が多かった。1Bは野村、清宮、アリエル、郡司と強打の選手がひしめくので個人的には2Bで見たいし、強打の2Bとしてセンターラインで違いを作れる選手だと思う。破綻なくセカンドを守ることで首脳陣の信頼を得たい。
速球への強さ、見極めの良さなど確立された2ストライクアプローチ、プレーの中で見せるインテリジェンスが光った。ホームランは全てセンターからライト方向で、典型的なプルヒッター。一方で変化球を打たされたり凡フライになったりと、打球速度が物足りない印象も。もっと積極的に引っ張り込んでもいいのに、とも思った。最終盤は構えから上体を少し起こし、足の上げ幅も変わっていた。フォーム面でも日本野球に適応してほしい。
ファイターズでは希少な四球を選べてストレートを潰せるタイプなので、来季は適応して上位打線を打つ姿を期待。

#4 上川畑大悟

今年は苦戦した1年だった。打撃は8月まで1割台に停滞するほどからっきしで、守備ではエスコンの天然芝への適応に苦労し、UZRも下がった。今年はレギュラーとして1年稼働することを期待していただけに、凡ミスが多かったのは残念だった。
打撃では良い当たりがことごとく正面に飛んだり、シフトに防がれたり、、という不運な面も。松本剛もそうだが、打球速度でぶち抜くタイプではない、野手の間を抜くタイプは運に左右されやすい。四球も選べ、アプローチ面は去年と変わらず良かったが、速球への強さが落ちた印象。
8月は打率.300を超え、OPSも.750を超えたことはポジティブな要素。他にも2Bを難なくこなし、起用に幅が出た。また、人工芝での守備は二遊間ナンバーワン。水野、奈良間、細川あたりの若手二遊間は粗削りなので、守備の堅実さで違いを作ってほしい。
去年の1軍デビュー時に見せたように、絶好調時は打球に角度がついて長打が増えるが、今年はその状態まで上がることはなかった。シフトに防がれないためにも、最低限強く引っ張れる状態まで上げてほしい。森友哉のように上体を沈みこませるフォームや負担の大きいSSの守備が原因かわからないが、活躍が隔年気味にならないかが懸念。ドラフト時に体力面を指摘されていたことからも、ある程度ローテーションできる二遊間の層になれば上川畑の成績も向上しそう。

#5 野村佑希

高卒2年目にして3Bに定着したかつてのトッププロスペクトも、今年は苦労した。
内角はプロ入り当初から得意だったが、今年は外角の変化球対応が悪く、序盤は徹底的に突かれた。ストレートは割と打てている印象で、変化球対応を改善できれば文句なしの主軸になれる。
不調期は常に不安そうに打席に立っていた印象で、新庄監督も指摘していたように、もっと大きく構えてスイングをかけていいのに…と思っていた。謙虚さが裏目に出ることもある。冷静に考えて高卒2年目でOPS.749は化け物。才能は間違いないので「俺がチームを勝たせる」ぐらいのメンタリティでいいぐらい。真面目すぎて気負ってしまう性格は心配。
他にも3Bの守備も萎縮していた印象で、常に消極的でかつ忠実なプレーしか選択しない印象。守備は年々上手くなっているのに打球に対して待つ癖(というか一歩目の遅さ?)ができたのも自己評価の低さが原因で負のスパイラルになった感がある。もっと遊び心というか楽しそうに守れたらいいのに…とは思う。
しかし今年は1BとLFのオプションが増え、松本剛をCFに回して野村をLFに置くことで、アリエル、清宮、野村、郡司、松本が共存できるようになった。こういったメリットはあるが、守備の調子と打撃の調子がリンクするタイプなので、ポジションたらい回しは不安もある。
今年は苦労したものの、怪我無く1年完走したことが大きな進歩。ホームラン数はキャリアハイ。選球眼も向上しており、昨季より打率は下がっても四球を選べていたため出塁率は維持した。何より調子が上がらない中で目先の率を求めて小さくまとまろうとしなかったのが良かった。ポテンシャルは清宮、万波にも劣らない。今季沈んだ分、来季は高く飛躍してほしい。3割30本打てるはず。

#6 アルカンタラ

実は足が速く、身体能力の高いユーティリティ。調子も集中力も波があるが、ベンチに控える日が多くても不貞腐れない聖人。そして笑顔が似合う。圧倒的なパワーがある一方でアプローチ面で脆さもある。典型的な当たったら飛ぶタイプで、体格の割に物凄いパワーを持っている。成績が右肩下がりなこと、2B守備で信頼を得られなかったことが出場機会が減った原因。フルで出たら間違いなく2桁打つポテンシャル。CFが上手ければもう少し出場機会を得られたが…という感じ。

#7 松本剛

昨年首位打者も、今年は成績を落とした。上川畑の時も触れたが、野手の間を抜くタイプは運に左右され、上振れ・下振れが起こってしまうことは仕方がない。
好不調はあったが、右肩下がりにならずに巻き返せるのが偉い。変化球への対応力はファイターズの中でも屈指。アプローチに粗があるタイプが打線に多い中で対応力が高く、打線の潤滑油となれる万能な松本は貴重な存在。特に変化球に対するコンタクトの上手さはNPBの中でもトップクラスだと思う。不調時は「詰まり落とし」が出ずに、全てセカンドゴロになってしまう印象。昨年の膝の故障と強行出場が原因か盗塁成功率は低く、損益分岐点の成功率7割を下回るため、仕掛けを減らす方がいい。
守備で言えば、今年の打撃の水準ではLF固定は厳しい。中川圭太のようにCFで出てこそ他チームと違いを作れる。
対応力に優れる貴重な打者で、必要不可欠な存在。打線においてホークスの中村晃のような、場面に応じてアプローチを変えられる嫌らしい存在になってほしい。

#8 淺間大基

今年も怪我に泣かされた天才打者。春先の練習試合では長打が増え、ストレートへの対応も改善していたため、今年こそ絶対的レギュラーか?と思いきや怪我。気づいたらいなくなる上に治りも遅い妖精。
低めの変化球を拾うのは得意だが、高めのストレートへの対応が改善されない限り天井は低いと思う。結局変化球を投げずにストレートで押し切られて終わってしまうから。今年の一軍での打席数が少なく判断はできないが、練習試合の時ほど目を見張るものはなかった。
淺間は本質的には俊足巧打タイプではなく、ホークスの牧原大成のような、多少粗があるアプローチでも積極的にスイングを仕掛ける、強いスイングで間を抜くアスリートタイプだと思う。制約のある打順や出塁率を意識せざるを得ない1番ではなく、6番などで自由に振らせるべき。五十幡と差別化するためにも打球速度や長打への意識を持ってほしい。兎にも角にもまずはストレートへの対応から。ライバルとなる五十幡、松本剛と違いを作るには、長打しかない。怪我がなければ…と言われる消えた天才になってほしくない。もっと打てるはず。

#9 中島卓也

年齢的にも代走や2B、SS、CFのバックアップが中心になるかと思いきや、ほぼ出番がない1年に(去年後半のCF起用は何だったのか)。
ポイントを近くして粘って、、というアプローチはやはり長打が減るし、強く引っ張れないとシフトにも阻まれる。本人もモデルチェンジしようともがいているが近年は厳しい。
守備面で言えば、近年凡ミスが増えている。また上川畑と同じく人工芝は得意だが天然芝では不安があるタイプ。守備範囲は健在だが、イージーミスが多いので守備固めよりは代走向きか。
打撃はパワーレスな面もあるが、盗塁・走塁の技術は随一。去年の盗塁成功率は8割を超える。ベテランの域に入ってきているものの、使い方次第で僅差の場面で切り札になれる選手。五十幡はスタメン起用が多く、江越は意外と盗塁死・走塁死が多いため終盤のジョーカー枠は空いている。挑み勝て中島。

#10 清水優心

新庄体制になり、なかなか出場機会に恵まれない選手。高卒4年目の2018年には7本塁打OPS.643、2019年はOPS.686を記録した、打のポテンシャルで言えばファイターズの捕手陣の中でも頭1つ抜けている(ファンの間では叩かれがちだが…)。
しかし走塁ミスなどイージーミスが多く、今年はミット外し事件を起こすなど、定期的にとんでもないことをしでかすやらかし属性。ブロッキングやフレーミング、肩の強さなどは目を見張るが、インテリジェンスや集中力が足らないのが勿体ない。
近年は謎のスクワット見逃しで安易な見逃しをして後手後手になる印象。もっと初球から積極的にスイングを仕掛けていいし、強く弾き返せるはず。打撃型捕手のアリエル、郡司、古川はまだ守備に不安があり、守備型の伏見は好不調の波が激しい。捕手としての総合力で言えば負けていない。今季辛酸を舐めた淺間も清水も、まずはとにかく打つしかない。2人とももっと打てるはず。

#12 矢澤宏太

ドラフト1位の二刀流。まだまだ粗削りだが天井の高さからも、まさにダイヤの原石と言った感じ。
まずは野手から。身体能力が圧倒的で、特に足が速い。走攻守3拍子揃い、外野3ポジションを難なくこなす適応力は素晴らしい。
打撃は成績だけ見ると苦戦した感があるが、バットが鞭のように見えるスイングスピードや打球速度、天性のバットコントロールなど、天才感が溢れ出る。正直左投手の逃げていくボールに合わなすぎることは懸念点で、改善が必須。打てるバリエーションは増やしていかなければならない。しかし、少なくとも野手としては成功するだろうなと思わせてくれる活躍だった。ポジションはCFに絞って、センターラインで違いを作れる選手になってほしい。守備や走塁でも貢献でき、WARを稼ぐ選手になれそう。
投手は制球に苦労した印象。また、信頼できる変化球がスライダーだけで正直先発は厳しいか…?といった内容だった。でも最低限リリーフならいけそう。彼のポテンシャルと適応能力を考えると投手として来年化けてもおかしくないが、現状は明らかに野手>投手といった感じ。
未知数な部分も多いが、大谷翔平とは違う新たな二刀流像を打ち立ててほしい。

#13 生田目翼

生田目の1番の問題は稼働率。数年前から二軍では文句なしの成績を残すが、とにかく離脱するし離脱期間が長い。もはや妖精。
生田目の1番の魅力はストレートの出力。平均球速で150キロは出てる印象。
今までは三振を取ろうという意識が強すぎるのか、リリーフ登板では力みがちな印象だったが、今年はマシだった気がする。
カットボールやツーシームを主体とした打たせて取る投球にモデルチェンジしてから成績が向上した。個人的にはフォークの再現性を高めて決め球にできれば一軍で先発としても活躍できると思う。
まずは敗戦処理、セカンドスターターなど便利屋として結果を残し、ステップアップしてほしい。

#14 加藤貴之

圧巻のK/BBを残す左のエース。成績を落としたとはいえ今年は中5日起用にも応え、フル回転の活躍だった。あの1巡しか持たなかった加藤がこのレベルのイニングイーターになったことは感慨深い。
ストレートの平均球速は140キロを下回るが、抜群の制球力と球種の多彩さで抑えるというかなり特殊なタイプ。不調時は去年の成功体験からか四球を嫌って?置きに行った球を痛打されたり、コマンドの良さゆえに決め打ちされたりという姿が見られた。
成績を落とした1番の原因は奪三振率の低下だと思う。打者の左右に関わらずフォークを落とせるのが強みで、これまでの奪三振率は大体6~7を推移していたが今年は4.57。フォークの空振り率が下がったことが原因で、フォークをカットされて粘り負けする場面が割と見られた気がする。今年は中5日運用の影響か夏場以降は奪三振率が露骨に下がり、肘の違和感でローテを飛ばすこともあった。やはり中6日運用が最適解。あとは札幌ドーム→エスコンへの移転の影響もあったかもしれない。
とはいえ三本柱として申し分ない活躍。FA権を取得したが、フロントは何とか残留させてほしい。

#15 上沢直之

ポスティングでのMLB挑戦を表明して臨んだ今季。昨オフには球速向上を目指してドライブラインを活用し、フォームも改造したがこれが噛み合わなかった。開幕直後は制球が破綻して四球が増え、被安打も多く常にランナーを背負っていた印象だったが、5月以降は復調して良い意味で以前の姿に戻った。
持ち前の球種の多彩さでランナーを背負いながらものらりくらり抑え、気づけばHQS、QSを達成する。とにかく試合を壊さない。
しかし奪三振率が若干落ちているのは気がかり。上沢がワンランク上がってタイトルホルダークラスになるためにはストレートの平均球速を149~150まで底上げすることが最短だと思う(今季の平均は145キロ)。奪三振率や被本塁打などの成績を改善できるはず。西武の髙橋光成はストレートの出力を底上げしたことで一気にMLBクラスまで躍り出た。本人もそれを踏まえてドライブラインを活用したのだろうが、合わなかったのが本当に悔やまれる。
膝蓋骨の大怪我から復帰後は以前ほどフォークが落ちなくなった印象で、今年はツーシームのような軌道で落ちる、まさにスプリームのようになっていた(特に好調だった8月後半~9月初旬からこの軌道になった印象)。上沢は変化球投手に見えて、実はストライクゾーン内のストレートでかなり空振りを取れる。この質のストレートとスプリームは噛み合っているのかもしれない。しかし、化けるにはフォークを軸に据えられるレベルの質・落差が必要だと思う。
来季は不透明だが、今年序盤の失敗も踏まえた更なる進化を期待したい。

フォークをちょっとイメージを変えて、シンカーみたいな感じで投げ出してから良かったです(中略)大海にアドバイスを聞いて投げたら、そんなに僕は落ちていないですけど、ツーシームとフォークの間みたいなシンカー気味に逃げてくれるボールができて、それが良かったです

https://www.doshinsports.com/article_detail/id=11664

#16 達孝太

身長194センチ、圧倒的なポテンシャルを持つトッププロスペクト。この選手の天井の高さは計り知れない。また、自身で情報収集してそれを取捨選択してインプットする頭脳派の面も垣間見える。
6月24日の登板では150キロ付近のストレートを連発し、自身のポテンシャルを遺憾なく発揮した。決め球にフォークを持ち、現在最先端を行くオリックスの投手陣のような高出力のストレートで押し込み、落ちる球で三振を取るという制圧的な投球が期待される。
奪三振率は変わらず良い中で与四球を改善しており、順調に成長している印象。見るたびに球速が変わっている気がするので課題は再現性と1年走り切る体力面か。あとはフォーク以外の変化球も。
自身の発言からも球速へのこだわりやストイックさが伝わってくるので何も心配していない。まずは怪我をしないように、早生まれなこともあるので焦らずに成長してほしい。

#17 伊藤大海

栗山監督と世界一になった男。ファイターズの誇り。東京オリンピックやWBCもあった中で怪我なく3年間走り抜けた身体の強さも魅力。
WBCで見せたようにメンタルの強さを持ち、火消しや回跨ぎもこなす投手版のユーティリティといった感じで、短期決戦で頼れる存在。
しかしWBCでの身体的・精神的な疲労もあったのか、シーズンでは例年以上に波があった。後半はスプリットで空振りを取れない日は苦労した印象。
1つ気になったのは心身のバランスが崩れているのか、マウンド上で露骨にイライラしていたところ。こういう反骨精神が今の伊藤を作っているのはわかるが、もうチームを引っ張るべき存在。然るべき立ち振る舞いも求めたい。ベースカバーもちゃんとやりましょう。
去年noteでも触れたが、伊藤はスライダー+スプリットを軸にできるかどうかが鍵だと思っていたので、今季はスプリットを改善したことによる奪三振率の向上は心底嬉しかった。この2つの変化球は被打率も低く、かつ空振り率も高い。今季はスライダーの空振り率も良くなった印象で、縦成分強めのスライダー、スイーパー気味のスライダーも投げ分けていた印象。本当に器用な投手。
今の投球は2010年代後半~2020年あたりのエースといった感じで、山本由伸や佐々木朗希などのMLBクラスに近づくためにはストレートの平均球速を底上げすることか。来季はタイトル争いに加わる姿を見たい。名実ともに「エース」になってほしい。

#18 吉田輝星

まさかここまで苦戦するとは…といった感じ。プロ入り後ずっと殻を破れない印象。
覚醒するためには加藤貴之のように変化球の質を高めつつ制球力(コマンド)も良くするか、球速を高いところで安定させるかの2択だと思う。手っ取り早いのは球速(言うは易し)。
リリーフとして活躍するためにはとにかく出力を上げたい。二軍でのストレートの平均球速は143キロと物足りない。登板ごとに球速も変化球の曲がりも変わる印象で、再現性がイマイチな以上ストレートで押し込みたい。167センチ(吉田は175センチ)で移籍後最速153キロを出した山本拓実から学ぶことは多いはずだ。
手首を立ててリリースし、縦回転のストレートを投げ込むが、これがネックになっているのではないかと思う。変化球の精度にも関わっているように感じるし、このフォームと球速はトレードオフなのではないかとの指摘もTwitterで見かける。
今のフォームで再現性を高めるべきか、全てを壊してスリークォーターなどの新たなフォームに取り組むか、どちらにせよ目を見張る変化が必要。

#19 玉井大翔

とにかく頑丈で、怪我せずに1年間稼働してくれる上に火消しもこなす便利屋。宮西に次ぐ鉄人。いつもありがとうございます。
勤続疲労と奪三振率の低さでいつ決壊してしまうか不安だが、毎年なんだかんだ抑える。カットボールとシュートを出し入れして打たせて取るスタイルで、これは守りにくいエスコンの天然芝と相性が悪いかと思いきや例年通りの防御率(火消しで打たれて自責点になっていないこともありそうだが…)。与四球が改善したものの被打率が上がっているのは、これも新庄監督の四球嫌いが悪い方に転がっているのでは…と考えてしまう。
とはいえWHIPも悪く衰えも見えており、怖さがある。
毎年思うが、フォークを改善することがスタッツの良化にも繋がると思う。火消しをするにしても、三振を取れる・前に飛ばさせないことが1番大事で、オリックスの宇田川を見れば言いたいことは伝わるはず。

#20 上原健太

元々素材型という評価だったが、ついに本格化したと言っていいだろう。
上原と加藤に共通して優秀なのが、打者の左右に関わらずフォークを落として空振りを取れる点。また、二段モーションやクイックなどを使ってタイミングを外す器用さも。どの球種でもカウントを取れ、状態が良い日はストライクゾーンにどんどん投げ込んで抑えていく。
新庄監督が四球に厳しいからか安易なストレート入りを打たれる、いい形で追い込んだにも関わらず変化球が甘めに入って打たれるというシーンが目立った。防御率の割に被打率が高いのはその指導も関わっていそう。打者の三振と投手の四球は好成績を残す上で必要経費。必要以上に厳しくするとその選手の強みを消しかねない。
更なる飛躍のためにはコマンドの改善、追い込んだ後の意識、特にフォークやスライダーはストライクゾーンからボールゾーンに落としきる・曲げきることが大事。球種の構成は文句なしで良いので、配球の意識で更に化けてもおかしくない。それ以外では出力が上がれば今のアバウトに投げ込んでいくスタイルとも噛み合いそうで、それが最短か。今季はストレートの指標が1番悪かったが、これが改善されると大化けしそう。

#21 清宮幸太郎

ついにチームのコアとなった大器。脇腹の肉離れで1ヶ月以上戦線を離れていたのが悔やまれる。
今年は何と言っても3Bコンバート。これは新庄監督でないとあり得なかった起用で、シーズン中ほぼぶっつけ本番で適応した野球センスもお見事。プロ入り直後は守備であたふたしていたが、痩せたからか見違えるほど軽快にこなした。夏場以降はミスが増えたが仕方ない。オフやキャンプで入念に準備し、来季は完全に適応した姿が見たい。
打撃面はアリエル同様、ボール球を見逃してストライクゾーンはスイングをかけるという理想のアプローチができていた。特に落ち球をあっさり見切るのは素晴らしい。四球も選べて長打も多く、OPSを稼げる打者。三振を減らしたことが打率の改善に繋がったと思う。
調子が悪い時は打球が上がらなくなり、セカンドゴロやファーストゴロが増える。減量した影響によってバテたのかわからないが、夏場以降は明らかに状態が落ちたのは気がかり。
三振を減らしてワンランク上がったが、今年は速球対応が悪かった。エース格を打ち崩せないのは、このような軸となるべき打者が速球を長打にできていないから。唯一といっても過言ではない課題。ここの改善を求めたい。

#22 杉浦稔大

首脳陣から過小評価されすぎている。肩に爆弾を抱えており、稼働率に不安は残るが投げているボールは一級品。
スピンのかかった空振りの取れるストレートは150キロを超え、スライダー、フォーク、カーブ、チェンジアップと構成も良い。吉田輝星の完成形のようなボールを投げる。奪三振率も良い。
しかし追い上げムードに水を差すような印象の悪い打たれ方をするし、メンタル面に問題があるのかロッテに滅法弱い。フライボーラーゆえの被弾の多さも。これに首脳陣が辛抱できていない。癇癪のような抹消もあった。
少なくとも大差の場面では任せられるし、勝ちパターンに置いてもいいレベルのボールを投げている。リリーフで辛抱できないなら中10日で先発させるなど、いくらでも一軍で使い方はあったはず。二軍で取り組むべき課題があったわけでもない。もっと一軍で投げさせるべきだった。

#23 伏見寅威

近藤を失った傷を癒してくれたFA戦士。ファイターズに来てくれてありがとう。若手が多い中で貴重な頼れる中堅選手。
お母さんと言われるほど面倒見がよく、人間性から信頼できるキャッチャー。盗塁阻止に課題は残ったものの、ブロッキングやフレーミングなどは素晴らしく、特にフレーミングはファイターズで1番上手い(主観)。
打撃はとにかく波があった。オリックス時代はもっと強く引っ張っていた印象なので、春先はびっくりするぐらいスイングが弱かった。移籍による適応の負担はあったかもしれないが、もっと積極的に引っ張っていい。あとはとにかく古巣のオリックス戦に強く、山崎福也からは毎打席打ってたのでは?というぐらい。最低限速球対応は期待したい。
打てなくても許容できる守備力ではあるが、能力を考えるともっと打てるはず。来季はOPS.550~600打つ、恐怖の9番になることを期待したい。

#24 金村尚真

ドラフト2位ルーキー。その完成度の高さに衝撃を受けた。怪我がなければ新人王争いに食い込むことができた逸材。
精密機械のような制球力で、コマンドは加藤に並ぶほど優れている。一軍では25回を投げて、23奪三振に与四球は5。K/BBは4.60、QS率100%と圧巻。ドラフト時の「指標最強投手」との呼び声も納得。
球種の構成はスラットスプリット+カーブという現代の王道で、スライダーとスプリットは空振り率も高い。本質的には変化球投手だが出力も安定して高く、ストレートは平均で147キロも出ていた。
とにかく再現性が高く、淡々と四隅に投げ込む。しかしそれゆえにカウント球や初球を痛打されやすいという弱点もあった。
その再現性の高さで淡々と投げ込む姿は山本由伸や岸孝之を彷彿とさせる。来季は1年走り切ってほしい。2桁勝てるはず。

#25 宮西尚生

宮西尚生と書いて偉人と読む。生ける伝説。
昨季は50登板も途切れ、手術も受けるなど苦戦したが、今季は全盛期ほどではないが持ち直した。
成績の見栄えは良いが火消しで打たれたり、ランナーを出してイニング途中で降板したり…と成績ほど印象は良くない。正直衰えは隠せないが、奪三振率を持ち直したのは素晴らしいの一言。
とにかくストレートの被打率が悪いので割合を減らす方がいいのではないかと思う。二軍で再調整時はシンカー(チェンジアップ)を多投していた印象で、球種に第3の選択肢ができればモデルチェンジした宮西が見られそう。ロッテの益田のようにシンカーの落差を確保できればスライダーとシンカーで対になる。オリックスの比嘉のように、火消しとしてもう一度輝く姿が見たい。

#26 田中正義

かつてドラフトで1位指名したハムの恋人がまさかこんな形で加入するとは。抑えを埋め、怪我無く1年間稼働してくれただけで本当にありがたい。マウンド上で笑顔を見せ、正義執行する姿はファンの印象に残ったはず。
投球内容としては、とにかく空振りの取れるストレートで押し込む。投球の4分の3はストレート。ストレートで押し込んだり空振りを取れる日は何も起こさせない。しかし、ストレートの走りが微妙な日に誤魔化せる変化球がなく、お祈りストレートになってしまうのがキツい。変化球はカットボールやフォークがあり、構成は良いのだが再現性が足りない。ここはまだまだ伸びしろ。何かしら緩急をつけられる変化球があれば…とも思う。
1年間を走り抜けるのが初めてだったため仕方がないが、夏場以降は疲れが見られた。特にエンジンがかかるのが遅くなった(本来の球速が出るまで長くなった)印象。6~7月は奪三振が減り、8月以降は打たれる日が増えた。打たれたとしても追いつかれない程度で踏ん張る日が多く、このメンタリティはある意味抑え向きだと思う。
今年のオフはとにかくフォークを磨いてほしい。それさえモノにできれば代表級のリリーフになれるはず。とはいえ今年はフル稼働だったので、オフはゆっくり休んでほしい。

#27 古川裕大

ドラフト時は打撃型捕手の触れ込みで、守備にかなり不安があった。実際1年目はキツかったが、今季は見違えた。もう不安はない。
特にリードが良かった印象。ポンセとは特に相性が良く、変化球のチョイスが良かった。投手が不調の時にストレートの割合が少なくなりすぎるのは懸念材料。しかしストレート狙いを察して変化球で入ったり、変化球狙いの裏をかいてストレートを通して見逃し三振を取ったりと素晴らしかった。
1番の問題はやらかし癖。ここを改善しなければレギュラーは厳しい。
打撃のポテンシャルは今のレギュラー陣にも劣らない、捕手の中でも天井は最も高いと思っているのだが、伸び悩んでいる。言語化が難しいが対応力の低さというか脆さを感じる。少なくとも二軍では無双する段階にはいてほしい。ファームは左打者が伸び悩みがちなのは気がかり。

#28 河野竜生

2年ぶりに復活した最強リリーフ。もっと序列を上げてもいいのに…と思った。宮西や堀の状態がイマイチな中でブルペンが崩壊しなかったのは河野と福田の存在が大きかった。
とにかくカットボールの質が良い。被打率が低く、空振りも取れる。もはや魔球と言ってもいいほどカットボールの出し入れで制圧できていた。夏場以降は出力も上がってきた印象で、150キロオーバーも出ていた。フォームから変則のように見えるが、ストレートと決め球のコンビネーションで抑える正統派。カーブかチェンジアップか、もう1つ決め球にできる球種があれば先発もいけるはず。
序盤は二軍でも7登板して10イニング投げており、実は見かけの成績以上に酷使されている。唯一の不安は勤続疲労か。

#29 井口和朋

春先の不調は毎年恒例だが、夏場も状態が上がらなかった。フライボールピッチャーで昨季は札幌ドームのフェンス直撃が多く、エスコン移転の影響を懸念していたがそれ以前の問題。
球種の構成が悪いとは思わないが、とにかく出力が足りない。正統派の右投手がリリーフで活躍するには最低でも147~148は出ないと話にならない。今季の平均球速は143キロで、正直二軍戦では高卒のプロスペクトの方が球が走っていた。戦力外になってしまったが、出力面を改善できる球団に拾われたら復活するはず。実績はある。復活を祈っている。

#30 郡司裕也

なぜ中日で干されていたのか、なぜ日ハムでも干されがちなのか謎の打撃型プロスペクト。今年郡司に沼ったファイターズファンも多いはず。
郡司の長所は三振が少なく、四球を選べる点。あまりスイングをかけないが、その分低めの変化球に手が止まり、打てる球を1球で仕留める印象。ランナーがいない状況では見極めの比率が高くなるが、立ち上がりやチャンスの場面では積極的にカウント球を打ちに行く。場面ごとにどういうアプローチをするのが最善か客観的に考えていそうで、見ていてインテリジェンスを感じる。このようにアプローチを適切に使い分けられることからも、打線の潤滑油のような、バランサーの役割を果たせると思う。ストレートにも強く、長打も出るため素晴らしいとしか言いようがない。
器用なことと野球脳が良いゆえの問題だが、2番に置くとケースバッティング・右打ちを意識しすぎて自分のバッティングを崩してしまう印象。自由に打てる1番かランナーを返す5番あたりが最適か。郡司以外の選手でもそうだが、出始めの選手に多くのタスクを課してほしくない。ポジションたらい回しの影響か、終盤は状態を落としたのが残念だった。
下手にポジションを増やすよりは捕手として育ってほしい。アリエルはいつまで保持できるか不明、伏見は守備型ということを考えると、打撃で違いを作れる捕手という唯一無二の存在になってほしい。古川や梅林の守備の伸び具合を見ていると郡司も…!という気持ちになる。先発ローテーションの都合で他の捕手が出る際はDHに移る、森友哉のような起用が理想。

#31 マーベル

シーズン途中に加入し、先発、緊急時の第二先発、ロングリリーフと便利屋としての役割を果たしてくれた。
スラットとツーシームで打たせて取るタイプで、独特のツーシームが武器。ツーシームの落差が大きい日は制圧できていた印象。打たせて取るタイプの宿命だが、多少運任せになる部分もあり、上振れ下振れがあった。これはマーベル本人の問題ではなくチームの編成の問題だが、こういった打たせて取るタイプ×内野の守備が弱いファイターズ×守りにくいエスコンの天然芝は噛み合っていると思えない。フロントは上背とツーシームを評価していそうだが、いつか決壊しそうで見ていて怖さがあった。

#32 谷内亮太

ヤクルトにいた頃やファイターズに加入直後は二軍で打っていた(加入1年目は219打席でOPS.730、2年目は35打席でOPS.913)。昨季はそのポテンシャルがついに開花したかと思われたが、今季は低調に終わった。
谷内の強みは内野全ポジションを安定して守れる点。とにかくエラーが少ないため、清宮や加藤豪や野村の守備固めなど、いくらでも使いようはあったと思うが不遇にも今年は出場機会に恵まれなかった。
これは新庄監督の問題だが、代打や代走や守備固めなど、展開に応じての采配が下手で、中島卓也や谷内などを持て余していたのが勿体ない。その場の思いつきや行き当たりばったりな采配が多く、スタメン9人だけで1試合が終わることもあった。このあたりの一芸に秀でた選手を上手く使えるだけで僅差にも強くなるはず。
と書いていた中で引退表明。ファイターズの中では貴重な中堅・守備固め・精神的支柱を担えるだけに衝撃だった。色々思うことはあるが、本当にお疲れ様でした。何かしらの形でファイターズに関わってほしい。

#33 立野和明

右肘の怪我で投げてる球が明らかに劣化し、終わったか…?と思ったが、今年の中盤以降は怪我前の水準まで戻ってきた印象(特に球速)。
変化球はカットボールとスプリットが特に良く、空振りも取れていた。現代野球の王道のスラットスプリットという構成。この辺りの球種の質を維持しつつストレートの出力も上げていきたい。下手に球種を増やすよりは、最適な配分を探ることと1つ1つの球種の使い方に幅を持たせるべき。
ストレートは最低限147~148は出してほしいし、球速次第では先発でもまだまだやれるはず。見た目の成績ほど投げてる球が悪いわけではない。まずはリリーフとして結果を残し、徐々に序列を上げてほしい。

#34 堀瑞輝

栗山政権末期の酷使と新庄監督の怪我明けの見切り発車で壊れてしまった。堀に限らず、今季の成績より今までの実績を重視した継投や、意図がよく分からない昇格・抹消は首脳陣の問題。
左肩を痛めて出力が明らかに下がった。一流はリハビリ期間中に自分を見つめ直し、明らかに身体がデカくなったり出力が上がったりするのでそれを期待していたが、ただただ出力が下がっていて残念だった。
宮西への憧れか知らないが、ファイターズの左投手のリリーフはストレートとスライダーの2つにこだわりがちな気がする。あんな2球種の使い方だけで抑える方がおかしいし、2つ以上変化球を使えるに越したことはない。
昨季からスライダーの被打率が上がり、見切られることが増えている。対右打者の決め球になるチェンジアップの質や、右打者の内角を抉れるツーシームやシュートを習得するなど、何かしら現状から変えなければ厳しい。ただアングルを下げて外角のストレートとスライダーの出し入れで抑えられるほど甘くはない。堀の完成形のようなオリックスの宮城はスライダーやチェンジアップに加えてフォークやカーブも投げる。出力を戻しつつ球種を増やし、勝ちパターンとして復活する姿を期待している。このまま終わる選手ではないはず。

#35 福田光輝

トレードで加入したユーティリティ。打席での雰囲気やスイングの感じや捉えた時のパワーを見るとなぜ活躍できないのか、なぜ二軍ですら微妙なのか謎な選手。
強いて言えばトップを作るまでの動作が長いのが気になるが、それで明らかに立ち遅れているわけでもないし…といった感じ。球速帯が遅めの投手は叩ける印象。万波の覚醒もあり、このようなスイングは強いが三振が多く、四球が少ない粗いタイプの打者は眼を鍛える野口さんに見てもらいたくなる。
来季は良くても代打スタートが予想されるので、まずは速球対応から。長打力を存分に発揮してほしい。

#36 木村文紀

ファイターズでは貴重なベテランだが、今季は出番がなかった。万波の覚醒と郡司・野村の外野起用で押し出された形。
凡退でゲージを溜め、溜まり切ると大事な場面でホームランを打ち、「っっっぱ木村よ!!!」とファンの手のひらを破壊させる。
身体能力の割に守備範囲は狭い印象だが、肩は強い。打撃は二軍では結果を残しているものの…といった感じ。
打撃は今川、守備走塁は五十幡・江越に劣るため、かなり立場は厳しい。しかしファイターズに代打枠がいないため、そこは空いている、、と書いていた中で引退表明。則本からの逆転ホームランや佐々木朗希からの先頭打者ホームランなど、在籍期間は短い中でも印象に残る活躍だった。現役生活お疲れ様でした。

#37 江越大賀

良い意味でも悪い意味でも阪神ファンの取説通りの活躍。守備走塁は一流で、外野のバックアップとして優れた活躍だった。春先はあばらも手首も折れているのに出続けたクレイジーな男。
特に守備の技術で言えばファイターズの中でも目を見張る。肝心の打撃はそもそもバットに当たらない。打席数の40%以上近く三振するという恐ろしい三振率。しかし当たったら飛ぶ。大当たりの日はホームラン、大外れの日は3三振のような、まるでガチャのような選手。明らかに新庄監督のお気に入りで、176打席も与えられるのはファイターズぐらいだろう。
変化球は当てに行く意識が強すぎてゴロになるか当たらないか。意外にもバントは上手いが、盗塁は足の割に成功率が低い。代走でも意外とアウトになる印象で、それほどジョーカー感はなかった。
大田泰示のような覚醒を期待したが…30歳と年齢は厳しいが、来季以降も守備走塁のスペシャリストとして、息の長い活躍をしてほしい。

#38 石井一成

開幕から怪我をおして出場していたのか絶不調。その後左肩の肉離れで離脱。あまりに肉離れが相次ぐとトレーナーの質を疑いたくなってしまう。復帰後は二軍でも不調だったが、昇格後は新庄・稲葉体制による矯正で6月はOPS.800超えの活躍(この昇格に限らず、一軍と二軍で連携が取れていなさそうなのが不穏すぎる)。しかし長続きせず。内野守備の難易度が高いエスコンだからこそ二遊間は上川畑と石井に期待していたので残念だった。
2B、SS、3Bを守れるユーティリティ性と守備力、守備の安定感は素晴らしいが、打撃が脆さがあって物足りない。意外と伸びる打球やエースへの強さなど魅力はあるのだが、毎年好調が長続きせずに終わってしまう。とはいえ守備の安定感は上川畑と並んで優れているのでOPS.650ぐらい打てればレギュラー。最低限でも2021、2022の水準まで戻してほしい。

#39 有薗直輝

ファイターズの内野手の中では有数のトッププロスペクト。ドラフト時は外れ1位候補にも挙げられていた将来の4番候補。なんとか3Bとして大成してほしい。
打球速度が速く、捉えた時は反対方向にも強く飛ぶのだが、コンタクト力に課題。好調な時期もあるものの浮き沈みがある印象。今年も苦労したのは予想外だったが、夏場以降はK%が改善したのはポジティブな要素(髭さんのツイートを参照・引用しました。ツイートが面白く、勉強にもなるのでハムファンはフォローしましょう)。しかし9月はK%が悪化。フェニックスリーグや来季のキャンプで違いを見せてほしい。他にも長打系のスタッツが多少良くなったのも来季への希望。二塁打数はイースタンリーグでナンバーワン。
清宮、野村、万波ですら本格化まで時間がかかったので大砲は長い目で見るべき。目先の率にこだわる必要はないし、小さくまとまらないでほしい。二軍でバントさせている場合ではない。万波や細川は2年目に苦しみ、3年目に飛躍した。このルートに乗ることに期待したい。

#40 福田俊

29試合連続で自責点なしでシーズンを走り抜け、中盤からブルペンを支えた左腕。池田、田中、河野が盤石で結果の割に序列が上がらなかったのは不憫だったが、結果の割に投げてる球に怖さはあった。
制球は抜け球が多くて荒々しく、かなりバラつきがある印象だったが、好調時は投げミスが少なかった。特に好調時に良かったのは左打者に対して外角一辺倒にならずに内角にも投げ込めていた点。与四球が減ってK/BBが改善したが奪三振率が下がったのは気がかり。スライダーは被打率も空振り率も優秀なので、来季はフォークを磨いてほしい。加藤や上原のように打者の左右関係なく落とせるようになれば奪三振率が上がって制圧できるはず。

#41 ロドリゲス

今季は能力不足ではなく、首脳陣の不適切な配置によってヘイトを溜めた。
クイックが改善しない、体重増えすぎ、毎年調整が遅れるなど、要所で意識の低さが垣間見える助っ人。しかし出力の高さと独特のツーシームでそれなりに抑える。変化球を投げるのを渋っているのか知らないが、もっと投げさせるべき。ツーシームが9割弱占めているのはおかしいし、被打率も高い。
特にクイックが致命的で、僅差の場面では信用できない。特に周東や和田が代走起用されるとノーリスクで得点圏にされる。ロドリゲスの登板時はサヨナラ負けばかり見ている気がする。
来日6年目でこれらの特性はファンですら理解しているのに僅差で起用する首脳陣が悪い。今季の成績や投げている球の質や選手の特性を軽視して、石川直也や堀やロドリゲスなど実績ある選手を異様に信頼して継投するのは謎だった。ここは改善してほしい。
本来はマーベルのようにロングリリーフや第2先発や大差の場面の回跨ぎなど、便利屋として起用するのがベター。

#43水野達稀

二遊間を守れるプロスペクト。小柄ではあるが二遊間ではアジリティの良さに繋がるため、むしろ長所。二軍ではSSの守備で1番の指標を叩き出している。
範囲では奈良間に劣るものの失策が少なく、堅実な守備が魅力。2Bでもプラスを作り出している点も良い。二遊間失格、コンバートコースに乗らずに済みそうなのが何より。二遊間を固く守りつつ打撃で違いを作ることが期待される。
打撃は二軍ではK%が若干改善されているものの長打が減っており、思ったより伸び悩んでいる。一軍では速球対応や曲げきられた変化球への対応の粗さが目立った。正直アプローチはまだ一軍レベルではない。伸び悩んでいるのは気がかりだが、パワフルなスイングが魅力で間違いなく天井は高い選手。
水野はいつの間にか怪我で行方不明になっている印象。まずはキャンプから1年間怪我無く走り抜け、スケールアップしてほしい。

#44 阪口樂

物凄いスイングスピードが魅力のロマンの塊のようなプロスペクト。捉えた時の打球やその打席での雰囲気は柳田を彷彿とさせる。
しかしコンタクト力に課題があり、打率も低く三振もかなり多い。昨季よりK%など様々なスタッツが改善して着実に成長しているものの、アプローチはまだまだ一軍レベルではない。正直野口さんに預けたいぐらい。
元投手だが、ポジションは3B、外野全ポジションと器用にこなす印象。打撃に集中させるためにも、ポジションは3B+CFぐらいに絞ってほしくはある。
スイングの迫力の割に成績がついてこない印象。伸び悩んでいるが素材は本物。同学年の有薗と切磋琢磨して成長してほしい。

#45 ポンセ

今年は稼働率も投球内容も期待外れと言わざるを得ない。
今年は1登板あたりの平均投球回が5イニングギリギリ。カットボールやツーシームなど半速球系を多投したが決め手に欠け、球数が嵩んだ印象。他にはこれらの半速球で打たせて取るタイプにも関わらず、内野の守備力が低いせいでポンセの登板時はとんでもなくエラーが多かった。これと四球の増加が相まって常にランナーを背負っていた印象だが、被長打が少なかったため決壊することはなかった。
1番の問題は投球割合だと思う。被打率が悪いツーシームとカットボールを減らしてストレートとナックルカーブを軸にするべき。制御できていないチェンジアップも減らす方がいい。特に古川とバッテリーを組んでいる時はピンチでストレートの割合を減らしすぎていたのも良くなかった。スプリットも鍵だと思うが、再現性に問題があるのかほとんど投げない。9月26日のロッテ戦では今季初めて清水がリードし、ストレートの割合を倍近く増やしてパワーピッチさせたところ、7回無失点。これが本来あるべき形だと思う。ストレートは平均150キロ出る上に指標も1番良い。
制球と配球次第で昨季の水準までは戻ると思うが、個人的にはリリーフでも見てみたい。

#46 畔柳亨丞

昨季は明らかに高校時代より伸びており、投球内容も良かったことを考えると今季は一軍でリリーフとして片鱗を見せてくれそうと思っていただけに、伸び悩んだのが残念。二軍で先発として育てたいのかリリーフとして育てたいのか見えてこないのが不穏。終盤は1イニング起用が多かったが。
奪三振率やBB%などの重要なスタッツが軒並み昨季より悪化しているのは渋い。ストレートが利き手側(右打者のインハイ・左のアウトハイ)に抜けてカウントを悪化させていた印象。出力も昨季より落ちていた。
四球でランナーを溜めてそれを返されていた印象。兎にも角にもまずは破綻しない制球力を身につけてほしい。あとはスライダーとフォーク(チェンジアップ?)を軸にできるか。

#47 鈴木健矢

不謹慎だが今季は過労死枠だった。開幕直後から敗戦処理・イニング跨ぎ→火消し→勝ちパターン→先発と目まぐるしく役割が変わった。先発起用の時も登板間隔が変わり、中4日や中5日稼働などフル回転だった。この起用が原因で心身のバランスを崩し、球速や体重も低下した。
鈴木のような変則投手は初見殺しの側面もあり、これが右肩下がりになった1つの要因になったと感じた。あとはアンダースローの宿命だが、左打者に打たれる。対右打者は素晴らしく、今のままでも右キラーを活かしたリリーフが適任だと思うが、先発に戻るなら改善が必須。
対左打者には内角に投げ切れるコマンドがあるかが鍵だと思う。シンカーをフロントドアで入れるなど幅を増やすべき。あとはシンプルに高橋礼のように球速を上げるか。

#48 齋藤友貴哉

昨年のオフのフェニックスリーグで161キロを叩き出し、ファイターズに移籍後は最速159キロを叩き出した剛腕。
今年はオープン戦の結果次第で抑え候補になると思っていたのでシーズン全休になった大怪我が残念だった。新庄監督の方針の「キャンプ初日から即実戦」はこういうリスクもあるし、春先に怪我人が続出した原因の1つではないかと思う。
スラットスプリット+カーブという構成は王道といった感じで、なぜ阪神時代に打たれていたのかわからない。少し映像を見たが、畔柳と同様に利き腕側にボールが抜けがちだと感じた。再現性に課題か。
出力は既にナンバーワン。奪三振率もキャリアを通して良い。阪神ファンの言う通りメンタル面に課題があるのかわからないが、ロマンの塊。勝ちパターン候補と思っているが、チーム事情次第では先発もあり。

#49 山田遥楓

内野全ポジションをこなすスーパーユーティリティでありムードメーカー。西武時代は源田や外崎の陰に隠れていたものの凄まじい勢いでUZRを稼いでいた。このこともあり、堅実に二遊間を守れる選手を獲得してきたフロントは優秀だったと思う。
腰の手術の影響もあったのか今季は意外とイージーミスが多く、それが原因で出場機会を減らした印象。特に守備固めとして終盤に出るなら谷内のような堅実さがほしい。
思ったより四球を選べるが、思ったより長打が少ない。二軍で無双していたことからも二遊間では平均以上打てると思っているし、2Bは上川畑と並んで上手いと思う。来季は山田が2Bのレギュラーを掴み取り、今季より締まった内野が見られることを期待。

#50 五十幡亮汰

1年目に比べるとダイナミックさがなくなった気もするが、怪我さえしなければ守備・走塁で大きな違いを作れる選手。
ファンが切実に思うのは、「小さくまとまるな、走り打ちするな、強く振ってくれ」ということ。強く振って野手の間を抜き、持ち前のスピードで二塁打・三塁打を量産するのが理想。
実は三振が多くて四球が少なく、アプローチに粗がある。こういうタイプは仕掛けを早くしてフェアゾーンに打球を落とす回数を増やしたい。五十幡が参考にすべきはソフトバンクの三森ではなく、牧原。ゾーン管理が甘かったとしても強く振りに行けて、ゾーン内に残ったボールは全て逃さない好球必打のスタイルをまずは築いてほしい。出塁率は後から考えればいい。
守備走塁面で1つ気になったのは、走塁で違いを作ろうという意識が強すぎて暴走したりライナーで戻り切れずにアウトになったり、、といった点。
あとはとにかく怪我せず1年間走り切ってほしいということ。みんなでお祈りしましょう。

#51 石川直也

トミージョン手術から復帰も球速が戻らない。手術前は150キロを軽く超えていたが、今季は145キロ程度。昨季はそれでも手術前よりカーブの精度が良く、それなりに抑えられていた。しかし4月の内転筋の肉離れから復帰後はカーブもフォークも質が落ちて決壊してしまった。度々GAORAの解説の金村さんが指摘していたが、今季は球速を出そうという意識が強すぎるのか露骨に力んでいて、それが制球に悪影響を及ぼしていたように見えた。
球速の低下は本人の意識の問題なのかトレーナーやコーチに問題があるのかはわからない。だが確実に栗山監督の時の酷使、新庄監督がトミージョン手術から復帰後に登板させすぎたツケが回ってきた感がある。本来リリーフは短命で、それゆえに消耗品と揶揄される。上背があってストレートが強く、フォークで空振りを取れる石川が1番抑え向きだと思っているが、このままなら森唯斗のように先発起用もありかもしれない。今年のオフとキャンプで復活することを願うしかない。

#52 池田隆英

先発では変化球の決定力不足で球数が嵩み、5回100球2~3失点のイメージ。短いイニングで出力が底上げされたら押し切れるのではないかと考えていたところ、リリーフ起用がハマった。池田や田中正義の勝ちパターン起用など、建山さんは適切な配置が上手いと思う。
軸のストレート、スライダー、フォークはどれも被打率が低く、クオリティが高い。シンプルにストレートが速く(平均で150キロ)、変化球を落とせるというリリーフに重要な2つを兼ね備えているのが良い。田中正義と河野と並び、出力も球種の構成もようやく勝ちパターンがパリーグの水準になった。あとは層の薄さが課題。ここに堀・石川直也が加わってほしい。
課題を強いて言うならフォークの質ぐらいか。河野と同じく、今季はフル回転だったため懸念材料は勤続疲労だけ。

#53 長谷川威展

宮西2世になってほしい変則左腕。昨季も今季もオープン戦で結果を残しているものの怪我などでブレイクしきれない感がある。
二軍では奪三振率は良いものの意外と四球が多い。制球面の課題さえ克服できれば一軍でやれるはず。
二軍での奪三振率の割に一軍では打たせて取る場面が多かった。左打者に対しては外角にスライダーの出し入れ、右打者にはバックフットにも投げ切れていた印象。ただ引き出しがこれだけでは流せる左打者に打たれるし、むしろ対左の方が怖くなってしまう。左にはバックドアにスライダーを投げ切るなど、スライダーにも幅を持たせられると左のワンポイントとして起用できるようになる。スライダーの強度を保ちつつ再現性と幅を追い求めてほしい。

#54 安西叶翔

上背が高く、まさにハイシーリングという感じのプロスペクト。オリックスもドラフトで狙っていた逸材。
今季の実戦登板を見た感じでは球速は145キロ前後だが、この上背ならオフに肉体改造するだけで一気に伸びそう。
球種の構成はスライダー+フォーク。特にフォークは空振りが取れていたので間違いなく決め球になるボール。
達、安西、育成の福島、柳川の高卒組は「身体がデカい、球が速い、変化球を落とせる」という現代野球の投手における重要な3つを持っているのが大きい。順調に育てば数年後は投手王国になっているはず。来季は怪我なく実戦登板を積み重ねて成長してほしい。

#55 松浦慶斗

186センチという上背から150キロを超えるストレートをどんどん投げ込んでいく左腕。まるで茂野吾郎。近年はドラフト戦略が変わり、フレームが大きい素養のある高卒投手を確保し、出力を上げて一軍に出荷するというルートができたのは大きい。上手くいけばオリックスにも負けない投手層になる。
サウスポーでここまで速くてストレートで押し込めるのは良いのだが、制球面がかなり粗い。二軍戦では死球が多いこと、コマンドを意識すると露骨に球速が落ちることは気になる。
破綻しない程度の制球力と何か決め球を1つ身につけることができれば、即一軍のリリーフでも抑えそう。それぐらいのポテンシャル。変化球はスライダーとカットボールとフォークを投げるが、精度が上がれば松井裕樹のようなリリーフになれるはず。球種をむやみに増やすのではなく、今の持ち球の質にこだわってほしい。
今年怪我で離脱期間が長かったのは残念だった。まずはフェニックスリーグで違いを見せてほしい。

#56 細川凌平

昨季は二軍でOPS.410と伸び悩んでいたが、今季は飛躍した。四球や長打など、二軍でのスタッツは軒並み改善し、OPS.773を残したトッププロスペクト。将来的に2B、SSに残れるかは微妙だが、CFはファイターズの中でもトップクラスの上手さで指標も良い。落下地点までの速さが違う。身体能力の高さと技術面での上手さも見て感じた。
このようなプロスペクトは二軍で結果を残せば一軍昇格、即スタメン起用でまとまった打席数を与えるべき。ベンチ漬けの日々が続き、速球対応が悪化したのは気の毒。郡や谷内や中島卓也を二軍に幽閉し、細川を便利屋起用したことは論外。特に捕手の練習もさせていたことには呆れた。このような起用をするぐらいなら、二軍で打席数を確保して課題を潰させる方が有意義。
控えに甘んじる日が続いたが、守備固めなど試合に出たら必ず爪痕を残したと言っても過言ではない。9月は打率.375、OPS1.069と一瞬のチャンスをモノにして自力でスタメンを掴み取った。このようなメンタル面の強さが窺えるのも良い。ファイターズは1番タイプが不在。同じ智弁和歌山出身の西川遥輝のようなスピードが武器のリードオフマンになることを期待。

#57 北山亘基

リリーフとして開幕を迎えたが、制球が定まらずに先発転向となり、これがハマった。
好調時は平均球速147~150とファイターズの先発の中でも屈指の出力を誇り、球の強さで押していけるタイプ。右の先発では金村と並ぶエース候補。特に5月と6月は防御率1点台と素晴らしい活躍だった。
しかし7月以降はどこか痛めているのか心配になるほど球速が落ちた。ここでリフレッシュ休暇を与えたらいいものの、二軍で普通に中6日で稼働させるという愚策。鈴木健矢も北山もシーズン中にここまで状態が落ちるのはマネジメント面が悪すぎる。二軍の人員不足なのか本人の判断なのかわからないが、昨季のフル回転もあり、勤続疲労は懸念材料。
スライダー、カーブ、フォーク、チェンジアップと構成はいいものの絶対的な決め球がない(現状はカーブが1番良く見える)。どの球種でもそれなりに空振りを取れるのは良いのだが、フォークを決め球ができれば更に奪三振率が上がって制圧できるようになるはず。今のフォークはジャイロ成分強めで決まった時の落差や質は良いのだが、再現性が物足りない。今季は制球が荒れることもあり、5~6回で100球に到達していた印象。制圧力を上げてイニングも稼げるワンランク上の先発になることを期待。

#58 奈良間大己

ルーキーながら二軍で無双(打率は3割を超え、OPS.848)。春先はまだ一軍は厳しいか…?と思ったが、夏場の再昇格後は適応。夏場出ずっぱりの影響か秋は少し調子を崩したものの、1年目としては素晴らしい活躍だった。
打撃面は、小柄だが想像以上にパワーがある。特に1番起用されていた時期は初球からどんどんスイングをかけ、安易なストレートやカウント球を叩けていた。DeNAの桑原のような、まさにガッツマンといった感じのリードオフマンで、積極性が武器。特にストレートへの強さは一流になるための必要条件なので、そこを既にクリアしているのは大きい。
守備は二軍ではSSで大きくプラスを作り出している一方で、2Bはマイナス。イージーミスが目立つが、守備範囲は広く、ダイナミックな魅せる守備をするタイプ。二遊間を破綻せず守れて打撃でプラスを作れる。一軍で明らかに守備範囲が狭いわけでもなく、送球難でもないため個人的にはSSとして育ててほしい。
走攻守で貢献しつつムードメーカーの役割も果たせるという、スター性のあるプロスペクト。来季は1年間一軍で完走してほしい。打率.250~.270、OPS.650~.750ぐらい期待したい。

#59 根本悠楓

今年は1年間ローテを回って大ブレイクすると思っていたので、今季は出鼻をくじかれるような低調なスタートになってしまったことが意外だった。昨年から減量に取り組んだことが裏目に出たそうだが、序盤は球速も下がり、二軍での奪三振率や防御率などあらゆるスタッツが悪化した。それでも夏場には昨季の水準に戻り、一軍では抑えていたのは安心できた。
根本の武器は出所が見にくいフォームから放たれるストレートで押し込んでいける点。制球面はまだ粗く、平均球速は143キロ程度だが、ゾーン内に投げ込むことができればスイスイ抑える。スライダーは曲がり・強度も良く、空振りを奪える変化球。ソフトバンクの和田とオリックスの宮城を足して2で割ったような投手。
試合中の修正能力が高く、カウントを取るのに苦労しない日はとにかく大崩れせず、2失点以内にまとめる印象。しかし突発的に制球を乱して四球でピンチを招くこともある。この辺りの再現性やコマンド、スライダー以外の変化球の質(特にチェンジアップ)、球速などはまだまだ伸びしろがある。誕生日は3月31日という早生まれで、実質高卒2年目のようなもの。焦る必要は全くないが、来季は中10日でもいいので開幕から先発ローテ入りすることを期待したい。

#60 郡拓也

スーパーユーティリティ。郡のおかげで起用に幅が出るため二軍野手が人員不足にならずに済む。
新庄監督が代打や代走などのカードを切るのが下手、そのため守備がそれほど良くない打撃型の選手は持て余してしまうため冷遇されがち、という2つの要因をモロに食らった。正直細川に捕手の準備をさせるぐらいなら郡を上げろよ…とは思ったが。
ただ、守備力を考えると捕手としての頭数に入れるのは厳しいといった感じ。選球眼は良くないが、140キロ台のストレートや浮いた変化球は打てていた印象で、もう少し打席を見てみたかった感はある。
今は使い勝手の悪さもあり、ベンチウォーマーになりがち。生き残るためには内野守備を磨くか、速球対応を磨いて代打の切り札になるか。年々フィジカルを強くして打撃を改善している印象があるので、そこは期待したい。

#61 今川優馬

郡司の加入や守備や年齢のネックはあるが、今年は異様なほどに出場機会に恵まれなかった。流石に不憫と言いたくなってしまう。
二軍で打率.308、OPS.854と圧巻の成績を残しているにも関わらず、一軍に呼ばれても申し訳程度の打席数しか与えられなかった。昨季10本塁打、OPS.679という天井の高さを考えると、まとまった打席数を与えて復調を待つに値すると思うが…
昨季は深く沈むフォームの影響か、変化球を拾うのは上手かった一方で速球対応はイマイチだった。(なぜか)立場が厳しいので来季もベンチスタートが予想され、終盤の高出力のリリーフに対して1打席で結果を残すためにも速球対応を求められる。この話題ばかりで申し訳ないが、一軍に定着できる選手とそれ以外では速球対応が違うし、やはり速球を打てないと勝負の土俵にすら立てない。春先はアベレージフォルムだったが、状況によってアプローチを変えられると対応力も上がってレギュラーを掴み取れるのかなと思う。選球眼も悪くないし、スイングも打球も強い。ファン全員から愛されていると言っても過言ではない道産子現役ファンクラブ会員。逆境だが来季はレギュラーを掴み取ることを期待。

#62 宮内春輝

宮内の特徴はサイドハンドだが球速が150キロを超え、ストレートで空振りを取れる点。球速は出るに越したことはない。これはポジティブな要素。他には一軍でも二軍でも三振を取れているのが良い。
一方で課題は制球の粗さと変化球。何かしら軸にできる変化球が欲しい。リリーフとして活躍するためには、変化球の多彩さよりも質の良い変化球を投球の軸にすることが求められる。あとは連投時に露骨に球速が落ちていた点が気になった。
個人的には配球次第でもっと活躍できると思う。あのアングルから高めに吹き上げるようにストレートを投げ込めば、シュートライズのような軌道になってもっと空振りを取れるはず。これを磨くことが鍵。ストレートは高く、変化球は低く、という意識付けが必要だと思う。制球はアバウトでいいので、ボールの圧で押し切れるようになってほしい。

#63 北浦竜次

かつて二軍で最優秀防御率を獲得した元プロスペクト。
1番の武器は強靭な下半身によるストレートの出力。左投手で150キロ付近を安定して叩き出せるのが強みで(平均球速は147キロ)、ストレートのコマンドも良い。しかし、カーブで露骨に腕が緩むのが問題。特にカーブはもう投げなくていい。
ストレートで押し込むことはできているため、宮内と同じく軸にできる変化球があればリリーフとして活躍できる。フォークの質を磨くかスライダーをゾーンに出し入れできるようになれば制圧できるはず。

#64 田宮裕涼

元々地肩の強さやポップタイムが売りだったが盗塁阻止の精度が課題だった。正直ブロッキングなど捕手としての守備は厳しく、今年は二軍でもOF起用が増えたため捕手失格か…?と思いきや、シーズン終盤の昇格で抜群の盗塁阻止力を発揮。リードも悪くなかった印象。
打撃は打席で腰が引ける点と走り打ちになってしまう点がプロ入り後ずっと課題。打撃練習やプロ初ホームランの時など、これらの課題が出ずに振り切ることができればかなり飛び、raw powerがあるタイプ。スイングや反対方向への打球の伸びは近藤を彷彿とさせる。打のポテンシャルは間違いないので自分を低く見積もらないでほしい。来季は打てるバリエーションを増やしつつスイングの再現性も高めたい。
打撃やフレーミングやブロッキングなど課題は多いが、捕手の育成は高卒・大卒など経歴問わず7年かかると言われる。長い目で見たい。

#65 梅林優貴

序盤は二軍で結果を残して一軍昇格を掴み取ったが、第三捕手という立場もあり、出場機会を得られなかった。年齢がネックなのかドラフト順位で判断されているのかわからないが、二軍でも本職起用が後回しにされる印象。今川とともに不遇枠になっているのが不憫。
ドラフト時は無名で、プロ入り後は二軍ですら打てていなかった梅林が順調に育っているのは素晴らしい(二軍でのOPSは1年目から、.419→.526→.714→.652)。好調時は反対方向にも打球が伸びる。
ブロッキングや盗塁阻止など、捕手としての守備力で言えば伏見・清水に次ぐ。個人的に盗塁阻止の安定感は梅林がナンバーワンだと思う。守備に不安を抱えるアリエル・郡司や、盗塁阻止に不安がある伏見など捕手は頭数の割に不安が大きい。打撃はまだ課題があるが、もっと一軍で起用されるべき。

#66 万波中正

ついに主砲となった素材型大器。規格外のパワーを持ち、将来的にホームラン王を争う選手になるとは思っていたが、ここまで早く育つとは思っていなかった。プロ入り後は大きな怪我がなく、これが順調に育った1つの要因かと思う。眼を鍛える野口さんなど、適切な外部の人間にも頼りつつ着実に主力への階段を上った。今年の春先の冷遇と1B起用の168イニングは本当に損失だった。危うく干されかけたかと思うと恐ろしい(新庄監督は江越や五十幡など、俊足外野手が性癖なので)。
K%やBB%などのアプローチ面を大きく改善しつつ、強いスイングを維持して長打も稼いだ。打球速度の速さで野手の間をぶち抜いたことが.265という打率と調子の波が少なかった要因かと思う。
不調時は当てに行く意識が強くなりすぎる点、追い込まれた後は変化球意識が強すぎてストレートを通されやすくなる点は課題。
NPBでも屈指の肩の強さで、レーザービームはそれだけで球場に見に行く価値があるほど華がある。そしてフェンス際にも強い。昨季はUZRを荒稼ぎしたものの凡ミスや悪送球が多かったが、今季はそれも大きく改善した。
将来を考えるとCFのオプションも増やしたい。空いたRFに今川を入れられる上に自身の市場価値とWARも高められる。
万波は自分で考えて課題を潰せる上に怪我もなく、疲労でパフォーマンスを落とすこともないので言うことがない。来季も頼みます。

#67 山本拓実

トレードで加入後は安定して抑えていたものの序列はそれほど上がらず、便利屋として起用される姿や背格好は谷元と被る。
身長167センチながら移籍後最速154キロを叩き出し、どの登板も安定して150キロを出せているのが良い(平均球速は149キロ)。ファイターズは球速が伸び悩む選手が多く、理論派の山本から学ぶことは多いはず。
気になるのはストレートの空振り率が良い割に被打率は悪い点。他に変化球はカットボール以外良くないが、リリーフならカットボールとカーブを軸にストレートを通す形で十分だと思う。シンカーを有効に使うことができれば対左打者も改善しそうだが、現状はイマイチ。変化球はピッチトンネルを通しつつ、様子を見ながら球種の配分の見直しが必要。

#68 松岡洸希

現役ドラフトで加入したミレニアム世代。二軍では稼働率が良く、チーム最多の投球回を記録した。
ストレートはそれほど速くない(平均球速は144キロ)がツーシーム、スライダー、カーブ、フォークという構成は先発向きで、特にフォークは空振りを取れる。消化試合でリリーフとして見てみたかったが、今季は出番がなかった。
二軍戦終盤では奪三振が増えていたのはポジティブな要素。浮いたフォークを狙われる点や突如崩れる点など、各変化球の再現性は課題。変化球の決定力に欠け、粘られて四球になったり、困って投げたストレートを痛打されたり…といった感じ。結局フォークを軸にできるかが鍵だと思う。落とし切るのが何より大事。

#93 田中瑛斗

二軍でも勝ち運に恵まれない右腕。入団直後は細かったが、体重を増やして最速152キロ、平均球速は147キロも出せているのが素晴らしい。一軍でもストレートで押し込むことはできている。
一方で変化球はどれも決定力に欠ける。安定して空振りを取れる球がないため粘られ、四球が増える上に球数も嵩む。コマンドが悪く、シュートを相手打者に当ててしまうのも良くない。
どう起用されるにしても軸になる変化球がないと厳しい。どの球種も再現性がイマイチな以上、球種を絞るべき。個人的に推したいのはチェンジアップかフォーク。上沢や伊藤のように球種の多彩さで抑えるのは簡単ではない。現状ストレートは強いため、少しモデルチェンジすれば一軍でも抑えられる投手になるはず。

#94 ハンソン

アルカンタラと同様、打撃型二遊間という使い勝手の悪さが原因で出場機会を得られなかった。これはハンソンに限らない話だが、一軍に上げたなら早めにまとまった打席数を与えたい。ハンソンや今川など、出場が途切れ途切れで本来の実力を出せなかった感がもどかしい。
打撃はツボに入った時のパワーが凄まじく、代打で結果を残していた印象。速球対応や選球眼などアプローチ面は悪くなかったが、長期的に結果を残せなかった。捉えた打球が正面に飛ぶなど、少し成績が下振れした感はある。天井は高い選手。集中力ある守備や外国人特有のアグレッシブな守備も印象的だった。信頼してまとまった打席数を与えてもらえる球団なら化けそうだが…といった感じ。

#99 王柏融

昨季より二軍でのスタッツは悪化していたものの、7月末に支配下に滑り込み、昇格直後は甘い球を1球で仕留めて結果を残した。しかし長続きしなかった。
来日してからずっと続く課題だが、カーブや落ち球への対応が悪く、崩されやすい。今季は速球にも差し込まれていた印象。打てるバリエーションが少なく、対応力に欠けるため三振が多く率も残らない。
2021の水準(OPS.750)に戻っていたらOF、DHとして貴重な戦力になっていたが…ハンソンと同じく、環境を変えれば化けそう。

#114 松本遼大

なぜ支配下登録されなかったのか謎な選手。高卒3年目でここまで伸びているのはポジティブな要素。
188センチと上背があり、空振りを取れるフォークが武器。アクセントにスライダーやカーブも投げる。例えるなら石川直也と似たタイプの投手。球速は平均144キロ。不調時は出力も下がる。正直球速はまだ伸びてほしいし、平均150を目指してほしい。投球回を上回る奪三振数を記録しており、一軍でもリリーフとして最低限活躍できるはず。
育成選手の契約期間は3年になっており、今季のオフに契約が切れる。このタイミングで他球団に引き抜かれないかが懸念材料。今オフに支配下登録で良いレベルの投手なので、なんとか引き留めてほしい。

#115 齊藤伸治

防御率に加え、四球数や奪三振率など様々なスタッツを改善した。しかし、制球面や再現性など、まだ粗削り感はある。
ストレート、スライダー、カットボールが投球の大半を占める。ストレートは平均144キロとまずまずだが、軸になる球種はどれも指標が良い。球速帯を変えてカットボールとスライダーを投げ分けて出し入れするスタイルは良い。二軍戦最終盤はフォークも投げていたが、落とし切れずにゾーン内に残って痛打されるシーンがあった。スライダーというマネーピッチがあるため、精度が上がらないならフォークを捨てるのはあり。あとは出力も底上げしつつ、コマンドや再現性を高めて支配下を掴み取りたい。

#121 福島蓮

高卒2年目で190センチ、最速152キロを叩き出した大型ハイシーリングタイプのトッププロスペクト。まだまだ身体は細く見え、更に体重を増やせば球速も伸びそうという上積みも残している。
二軍では防御率2.79、奪三振率8.88と好成績を残しており、一軍でももう活躍できそうなレベル。現状でも二軍最強先発。ストレートとフォークを軸にスライダー、カーブという現代における王道構成。特にストレートとフォークは指標も良い。
投げている球は素晴らしいが、イニング数や登板間隔など、まだ体力面で課題か。焦る必要は全くないし、ストレートの平均150キロを目指しつつ身体作りに集中してほしい。同い年の達、松浦、畔柳、柳川とともに、投手王国を築き上げてほしい。

#123 柳川大晟

福島と並ぶトッププロスペクト。191センチとこちらも大型で、高卒2年目で最速153キロを叩き出した。二軍では13登板で防御率1.72、奪三振率11.49と支配的な投球をしており、将来的には一軍で抑えに定着することが期待される。四死球が少ないのも素晴らしい。
投球内容としてはストレートが約4分の3占めており、指標も良い。ストレートとフォーク合わせて約9割、残りはスライダーといった感じ。欲を言えばストレートとフォークに次ぐ3球種目も欲しい。球速は現状でも平均148キロと一軍水準だが、最速155キロ以上目指せるポテンシャル。
課題は福島と同じく体力面と稼働率か。まずは怪我しないこと、来季の支配下登録を期待している。

#124 阿部和広

俊足が武器の育成外野手。昨季より打撃成績が悪化したこと、13盗塁を決めているものの8盗塁刺と成功率がそれほど良くないことが気になる。
代走の切り札として一軍に帯同するなら盗塁の技術が求められる。周東は35盗塁で盗塁成功率85.4%、和田は19盗塁で成功率95%を誇る。この水準まで到達しないと脅威にはなれない。この上で周東はユーティリティ、和田OPS.808も打っている。
盗塁技術を磨きつつ、パワーレスな面も目立つ打撃も底上げしてほしい。K%やBB%など、アプローチ面が特に昨季より悪化した。低身長でパワーに限界があるなら、福田周平や中島卓也のように粘って出塁率を狙いに行くスタイルも1つの手。どういうスタイルで生きていくのか、両打ちは続けるのかなど、決断が迫られる。

#125 藤田大清

高卒1年目の大型外野手。187センチと大型で、万波や矢澤や細川らとともに次世代の外野を担うことが期待される。
今季はなぜか二軍戦に出場することはなかった。ということであまり書けることがない。高校時代の映像を少し見た感じでは、バットコントロールに長けている印象を受けた。試合に出なかった理由は怪我なのか身体作りなのかわからない。来季は身体作りを経て打球速度などひと回り力強くなった姿を見たいし、打撃で違いを見せてほしい。

#126 中山晶量

ストレート(最速151キロ)とフォークの2ピッチで、例えるならオリックスの宇田川のようなタイプ。宇田川と同じように、カウントを取るスプリットと空振りを奪いに行くフォークと使い分けできるといいかも。利き腕側にボールが抜けたり、フォークが落ち切らずにゾーン内に残ってしまったり、とまだ危うさが残る。また、上背の割には球速がイマイチ。出力を底上げしつつ再現性を高めると一軍でも火消しを担う投手になれるのではないかと思う。玉井は勤続疲労でいつ決壊してもおかしくない状況。世代交代を担ってほしい。

#127 山口アタル

昨年のドラフトで最も印象に残った謎の男。一言で言えばフィジカルモンスターで、和製トラウトになり得るハイシーリング型。シーズン後半は怪我で棒に振ったのが残念。
フィジカルの割に長打が少なく(31安打のうち長打は4本)、あまり打球が上がらない。コンタクト力はそれほど問題がなさそうだが、トップを作るまでガチャガチャするのが気になる。これで速球対応できるのか。来季は打球角度の付け方を掴めば大化けしそう。とにかく打席数を重ね、潜在能力を開花させてほしい。

#128 山本晃大

今季、便利屋としてフル回転して二軍のブルペンを支えた男。回跨ぎやリリーフ起用に加え、終盤は先発でも起用された。
球速の割にストレートで空振りを取れる印象で、コマンドも良い。スライダー・カットボールで出し入れしつつ、ツーシーム(チェンジアップ?)も投げる。ツーシームが打たれがちなのが気になる。
そこそこ三振を取れてK/BBも及第点だが、被本塁打の多さは気になる。あとは中山と同様、身長の割に出力が低い。平均球速も上げつつ、変化球の質も上げていきたい。

#137 柿木蓮

二軍でリリーフとしてフル稼働しながら7月初旬までは防御率0点台と圧巻の活躍。おそらく球速が平均142キロとイマイチで変化球も決め球に欠け、支配的な投球でなかったこと(それほど空振りを取れていなかったこと)が支配下登録を逃した原因。個人的には支配下登録のハードルが上がりすぎていることが育成落ちの選手を他球団に逃がす一因にもなっていると思うので(去年の上野など)、柿木は支配下にしてもよかったと思う。他の育成選手のモチベーションにも影響を与えかねない。
数年前はストレートの平均130キロ台だったことを考えるとよく持ち直したとは思う。しかし現状は球速も変化球の質もまとまっているものの平均以下という感じ。変化球はどれも指標が良くない。まずは出力を底上げしつつ、決め球になる変化球が欲しい。

#161 姫野優也

元々は万波クラスの肩を持った外野手。その鉄砲肩を活かして投手転向後は平均150キロを超えていた印象だが、今季は故障の影響か球速が落ちた。投球の大半をストレートとスライダーが占め、スライダーの質は今季改善された印象。
稼働率が意外と悪いことや制球、変化球の質など課題は多い。粗削りだが、これだけの球速が出るのは魅力。まだ26歳と若く、こういったタイプの投手を戦力化するメソッドを持った球団に拾われると大化けしそう。個人的にはオリックスで化ける姿が見たい。

チーム全体の総評

投手

ファイターズの投手陣の1番の問題は時代に逆行していることだった。特にリリーフ陣。オリックスのような150キロを超えるストレート+落ち球が最先端だったが、出力不足の打たせて取るタイプや変則にこだわったことが先を越された要因となった。しかし近年は田中正義、山本拓実、齋藤、北山など高出力の投手を集め、方向性を転換したことが防御率を改善する要因となった(まだ遅い投手もいるが…)。田中正義や石川直也は不安もあるため、奪三振率が高く、制圧できる抑え(助っ人)を獲得してほしい。
先発は上沢、伊藤、加藤、上原、ポンセ、金村と揃えば強いが、層が薄い。上沢と加藤が流出せずに済んだとしても、ここは補強すべき。金村や北山や根本など、プロスペクトに負荷をかけすぎるのは良くないし、使い潰すようなことは絶対避けてほしい。
鈴木健矢と加藤がパンクしたことからも、中4、5日運用は愚策。日本での最適解は中6日。

打撃

清宮、万波、野村が順調に育ったこと、アリエルの加入で打線の軸ができた。そして打線の潤滑油となれる郡司と松本剛もいる。打撃面で言えばどれだけ低く見積もってもリーグ平均程度はやれるはず。しかし課題となるのが監督の采配。センターに守備力を求めて江越、不調の五十幡を置き続けたのは損失。いくら守備でプラスを作っても、肝心の打撃でマイナスを垂れ流して守備のプラスをかき消し、収支で見ればマイナスになってしまうなら意味がない。この辺りのバランス感覚が危うい。他にも左右や相手投手との相性など、分母が少なすぎるデータを重視しすぎるのも気になる。
他には主軸の調子が連動しており、一気に冷えて打てなくなる時期があった。打線は水物で、これは避けられない。ここで求めたいのは下からの突き上げ。オリックスは中川・森・頓宮と軸はあるものの、脇を固める選手は流動的。水野や有薗や今川など、起爆剤が欲しい。
課題は2つ。速球対応と出塁率。速球対応に関しては、文字のまま。150キロを超えるストレートへの対応、特に主軸は速球に対して長打を安定して打てないとエース格や勝ちパターンを打ち崩せない。出塁率に関しては、ポイントを近くしてストレートはカットして…という消極的な待球アプローチは長打が減りかねないため、器用で自分のアプローチが確立している松本剛、郡司、上川畑あたりだけでいい。清宮とアリエルは見極められるので問題ないが、万波と野村はとにかく打ちまくってほしい。彼らは消極的な方法ではなく、警戒されての四球を増やすべき。

守備

守備面は外野で大きなプラスを作った一方で内野は粗かった。新庄監督の思いつきでポジションをたらい回しにしたことも一つの原因となったように感じる。コンバート自体に反対はしないが、岡田阪神のようにキャンプから時間をかけて準備させるべき。いきなり一軍で守らせるのは相手選手の怪我にも繋がりかねない。せめて二軍戦で試してから起用してほしい。また、今季コンバートされた清宮、郡司、野村あたりが軒並み終盤に不振に陥ったことから、打撃への影響も懸念される。
外野守備(特にセンター)に固執して五十幡や江越を厚遇した一方で、内野は急造コンバートでセカンド野村・郡司を起用は筋が通っていない。内野に打撃力を求めた割に、打撃型二遊間の加藤豪将やハンソンの守備力は許容できていないので不可解。
重視すべき二遊間は急造、それほど重要ではない外野は固執と、「首脳陣はWARやUZRなどの指標を見ていないのか?守備位置補正などを知らないのか?」というあり得ない疑念が生まれる。以前のnoteでも書いたが、現代野球においてセイバーメトリクスなどのデータを軽視しているか、知らないことは大問題。アナリストやデータ班が機能していないことも推測されるのも不穏。

走塁

そして走塁。最もいけないのは相手のミスを期待した無謀な走塁。森本コーチが散々やらかしているにも関わらず、ミスの原因を客観的に分析・追究せずに攻めた姿勢だけを賞賛し、成長や経験などの言葉で目の前の問題を有耶無耶にしているのはプロとしてあり得ない
スクイズやエンドランやダブルスチールなど足を絡めた奇策にこだわるが、得失点における影響力は打撃と先発投手が大半を占めており、ここに固執したところで上積みは僅か。ファイターズは若く、課題だらけのチーム。優先順位を履き違えて非効率なことばかりしていては、いつまで経っても弱いまま。この辺りの野球観をアップデートしてほしい。

最後に

ここまで全部読んでくれた方はいるのだろうか。なんと3万字を超える卒論並みの大作になってしまいました。全部読んだ上に拡散もしてくれた方にはご飯奢りたいレベル。圧倒的感謝です。
誤字脱字やデータの誤りなど、何かありましたら、X(@ynwaT05)までお願いします。
最後までお読みいただきありがとうございました。


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