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【時事抄】 中国の過剰な生産力が止まらない

世界の工場、人口14億人を擁した巨大市場をもつ中国が変調をきたし、世界経済のあちこちに影響が出ています。最近では米Apple社が、売上高の約半分を占めるiPhone部門の売り上げ2桁減を発表し、中国販売の失速を印象付けました。

中国は、落ち込む国内需要を尻目に自国生産の過剰供給を止めず、米国や欧州への輸出を増やして摩擦を起こしています。欧米各国は関税の引き上げで対抗するとみられ、経済のブロック化がさらに進行していく気配が濃厚、これらは物価高・インフレの加速を意味します。

日本経済新聞 2024年5月11日の記事より

北京在住の記者が報じた日本経済新聞の記事を見てみます。

<要約>
中国製の安価な電気自動車や太陽光パネルの輸出が急増し、米国や欧州が反発している。企業間の安値競争の激化は、需要量に対する供給量が過剰と示すのだが、習近平指導部は生産重視の方針を堅持する。

中国国家統計局が発表した4月の卸売物価指数(PPI)は前年同期比2.5%下落し、1年7ヶ月連続のマイナスだった。生産材の下落が目立つ。4月の消費者物価指数(CPI)では、自動車等の耐久財の価格下落が大きい。不動産不況を起点にした需要不足の長期化、消費者の節約志向のためだ。

だが中国政府は需要喚起より生産主導による景気下支えを重視している。需要の拡大には、新しい技術やサービスで需要機会を創出するべきとの考えが根底にあると専門家は指摘する。23年、電気自動車や人工知能(AI)などの次世代技術への投資拡大を提唱し、巨額の補助金を支出を決めた。

過剰生産を批判する欧州連合(EU)に対して、習氏は6日、フォンデアライエン欧州委員長らとの会談で「過剰生産能力問題は存在しない」と言い切った。王文濤商務相も補助金による競争上の優位を得ているとの批判に反論して、過剰生産能力の批判も「根拠がない」と全否定した。

中国が消費主導型経済への転換をめざし、生産重視の政策を見直さない限り、過剰供給の根本的な解決は困難だとする見方が多い。中国は4月の中央政治局会議で内需の不振を認める発言はしたものの、政策転換の兆しは見えないままだ。

(原文1589文字→599文字)


中国は、所得格差の拡大、迫り来る人口減少、来るべき高齢化社会に向けた社会保障制度などのセーフティーネットの弱さ、といった潜在的な問題を抱えています。すでに若年層の就職難が目に見える姿として報道されていますが、人口減少や高齢化に伴う社会問題が生じるのはこれからです。

多くの矛盾を抱えた中国は、雇用を安定させ、社会制度の更なる整備に向けて、とにかく製造業を回し続けるしかない。技術開発を急ぎ、裾野の広い製造業の競争優位を維持したいから。拡大する輸出品は、その達成までの時間稼ぎなのでしょうが、欧米市場からは徐々に締め出されようとしています。

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