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【時事抄】 医薬品業界 ≒ 半導体業界!?

米IT大手のマイクロソフトの日本への投資計画を発表した矢先、今度は富士フィルムが医薬品の生産に向けた米国への設備増強投資を発表しました。投資先は訪米中の岸田首相が11日(木)より訪れるノースカロライナ州で、発表のタイミングといい、首相訪問先の選定といい、ずいぶん前から政府と富士フィルムとの間で綿密に準備されていたことなのでしょう。

投資発表を報じる日本経済新聞の記事を見てみましょう。

<要約>
バイオ医薬品の受諾生産で世界4位の位置する富士フィルム。建設中の米ノースカロライナの工場に12億ドル(約1800億円)の設備投資を行うと発表した。2028年までに生産能力を5倍に高める。背景に開発費が高騰する医薬品の生産を製薬会社の外部に委託しつつある事情がある。

バイオ医薬品は遺伝子組み換えや細胞培養の技術を使い、世界の製薬大手が新薬開発を競う。一つの薬を生み出すのに数百億〜数千億円の開発費がかかる。生産面でも細胞を大量に培養する大規模設備が必要で、生産にも巨額の投資が要る。

医薬品の生産能力はコロナ時のワクチンのように経済安全保障にも直結する。そのため、日本企業が最先端の生産技術を持つことは有事の医薬品の安定供給にもつながる。

製薬会社はコスト抑制に向け生産を外部に委託しつつある。2011年から参入した富士フィルムは累計1兆円を超える投資額で、首位のスイス・ロンザや韓国サムスングループに生産能力増強で対抗する。


新薬の開発には「遺伝子組み換え」などの先端技術の応用が欠かせず、昨今の製薬会社は多額の資金負担を強いられています。一方、開発に成功した新薬の生産には、またさらに巨額の生産設備を整えなければなりません。

これほどの資金負担を一社だけでは賄いきれず、製薬大手は経営資源を付加価値の高い新薬開発の分野に集中する道を選びます。生産活動は外部企業に委託するという住み分け、「開発・製造の分離」を進めている、という業界背景が今回の投資の背景にあります。

これは、約20年前に半導体業界で起こったことと全く同じです。住み分けの流れに乗り遅れて衰退したのが日本の半導体メーカー(NEC、東芝、日立、富士通…)、流れに乗って躍進したのが台湾の半導体メーカー、その代表格がTSMCです。かつての日本半導体製造業と同じ轍を踏まぬよう、医薬品製造の分野を大きく育てていきたいという官民の意欲を感じます。

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