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広告収益還元にサブスク..!? Spotifyがポッドキャストと音声配信を激変させようとしている。(追記あり)

おそらく日本の皆さんがClubhouseで楽しくおしゃべりをしたり聴いてすごしていたであろう2月23日の深夜1時頃、音声業界のゲームチェンジャー野郎ことSpotifyから音声配信でいくつかのヤバめなアップデートがありました。

2021年2月23日1時にSpotifyがオンラインイベント「StreamOn」の中で、いくつかの新たな動きについてグローバル全体に向けて発表したかたちです。(いわゆるAppleがよくやっているイベントのようなものです。)いくつかのポッドキャストを激変させる可能性のある発表があったので、本記事で簡単に紹介していければと思います。
イベントのセッションはこちらから見れます↓

ちなみに「ポッドキャスト」とは書きましたが、日本の音声配信業界にもかなり影響を及ぼす内容ではないかと思います。

Spotifyは音楽配信サービスなので、イベント中には音楽系のアップデートも複数あったのですが、この記事では主にポッドキャストのマネタイズ系のアップデート2点について触れていきます。

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1 : クリエイターが広告収益を得られる ポッドキャスト広告マーケットプレイス『Spotify Audience Network』

Spotify傘下のホスティングサービスであるAnchor(アンカー)Megaphone(メガホン)から配信されるポッドキャストに、広告が挿入され広告費のキャッシュバックがされるマーケットプレイス&広告サービス『Spotify Audience Network』を発表しました。

Spotify Audience Networkのご紹介
Spotify Audience Networkは、これまでにないタイプのオーディオ広告のマーケットプレイスです。このネットワークにより、あらゆる規模のスポンサーが、さまざまなコンテンツを消費するリスナーとつながることができるようになります。これらのコンテンツには、SpotifyのOriginals(オリジナル番組) & Exclusives(独占配信番組)、MegaphoneおよびAnchor経由のポッドキャスト、広告が時折挿入される無料プランの音楽リスニングなどが含まれます。広告主は、提供するメディアを選択するテクノロジーを活用することで、数億人のリスナーにSpotify内外で大規模にリーチすることができるようになります。現在、このサービスは開発の初期段階にありますが、今後数ヶ月のうちに発表される追加情報にご期待ください。
Spotifyポッドキャスト広告の新時代より

ちなみに、Anchor(アンカー)とMegaphone(メガホン)は2019年2020年にかけて、Spotifyが買収したポッドキャスト配信を行うためのホスティングサービスです。位置づけとしては、Anchorが一般のクリエイター向け、Megaphoneが企業やプロパブリッシャー向け、という感じでしょうか。

これにより一部、音声配信サービスがやっている「配信数に応じた還元」に近いマネタイズモデルがポッドキャストでも実現できるようになるのではと思いました。

SpotifyがAnchorとMegaphoneを買収した時点でポッドキャストの配信先と配信元を抑えたことになるので、こういう広告を通じた収益還元の動きを取ってくるだろうということは予想できましたが、ポッドキャストクリエイターの収益化がいよいよ始まることになります。
↓このとおりAd Insertion(広告の動的挿入)機能も使ってガッツリやるよ、と言ってます。

Streaming Ad Insertionに導入される新機能
2020年の初め、SpotifyはStreaming Ad Insertion (SAI) を発表しました。これは、最新のデジタルマーケティングに求められる精度と透明性を確保しながら、リスナーに寄り添う高品質なポッドキャスト広告を配信する機能です。SAIでは、プランニング、レポート作成、測定の各種ソリューションが揃ったデジタルスイートをはじめ、まったく新しいデータセットに基づくインサイトをポッドキャスト広告に提供するものです。SAIは現在米国、カナダ、ドイツ、英国で提供されており、その他の市場でも年内に提供が開始される予定です。

ただ今回のイベントはグローバルイベントで、音声配信後進国(泣)である日本はだいたい音声関連の新機能や実装は後回しにされるので、すぐには実装されないと思われますが、近い将来ポッドキャストで誰でも広告マネタイズができるようになりそうです。気長に待ちましょう。


2 : Spotifyでもクリエイターが有料ポッドキャストを公開してサブスクリプションマネタイズができるように。

ポッドキャストのクリエイターが有料ポッドキャストを公開できるサブスクリプションの仕組みを提供することが発表されました。これも少し前のリーク情報で出ていた情報ですが今回正式に発表されたかたちですね。今後数か月以内に米国の一部クリエイターでベータ版として提供を始めるとのことです。

Spotifyで作品を収益化するための新モデル
新たな収益源を模索するクリエイター向けの機能についても今後テストを予定しています。この機能は、有料のサブスクリプションによりリスナーがクリエイターを応援するというものです。一部のクリエイターは、すでに有料のサブスクリプションを行っているリスナーに限定版のボーナスコンテンツを提供し、収益の獲得を始めています。Spotifyでも間もなく同様のことが可能になります。
SpotifyのAnchorでのイノベーションがもたらすオーディオの未来(2021年2月23日)より

一ヶ月ほど前にアップルがポッドキャストのサブスクサービスを用意しているという情報があり、こちらも今年中にはローンチをされるだろうという噂がありましたが、SpotifyはあえてAppleからの発表に先駆けて先手を打ったという感じでしょう。

Spotifyはクリエイターとの共存共栄みたいなところを大事にしているように思うので、こういう動きを取るのは自然な流れのようにも思います。
...というか地球最強の音声サービスになるために、ポッドキャストの不便なこと全てを解決しようとしてるのでは?とすら思えます。

とはいえ、日本での実装はまだまだ先なのではと思われます。極東の島国ジャポンの我々は気長に待ちましょう。

まとめ : 2つのクリエイターマネタイズ方法を打ち出すSpotifyが音声配信(ポッドキャスト)の覇者に一歩リードか?

今回のイベントで発表された、Spotify単体でポッドキャスト(音声配信)配信における「広告」「サブスクリプション」という2つの配信者マネタイズが実現できるようになることは、現在、群雄割拠状態であるポッドキャストや音声配信サービス事業者からすると脅威だろうなと思いました。

ちなみに、広告挿入に関してはまだ詳しい仕様は分かりませんがAnchorやMegaphoneの使用でSpotify側から勝手に広告を入れられてしまうのであれば、逆に現在広告マネタイズを行っているパブリッシャーおよびメディア企業、または、オウンドメディア的に企業が運営しているポッドキャストはあえてSpotify系のサービスを使わないということも起こりうるのかなと思いました。(例えば、キリンがスポンサーのポッドキャストなのに、サントリーの広告が挿入されるということが起こってしまうので。)

いずれにしても、今回の発表は音声配信のマネタイズに関する情報としてはかなり業界に影響を及ぼすものでしょう。少しタイムラグがありそうですが日本でも音声配信収益化の主要な方法の一つとして広まっていく予感がします。

2021年の2月現在、日本ではClubhouseがバズっていますが、音声型サービスはClubhouseのようなライブ型と、収録していつでも聴くことのできるオンデマンド型に分かれます。使用シーンが異なるので、両方のスタイルがともに発展していくものと思われます。ポッドキャストはこのオンデマンド型の代表格です。

オンデマンド型音声配信で言うとSpotifyの動向はもっとも注目すべき動きのひとつなので、引き続きこの辺りの動向を見守っていきたいと思います。
またこのSpotifyの動きを受けて、ポッドキャストプラットフォームとして攻防を続けるAppleとAmazonがどう動いてくるかにも注目していきたいところです。

※StreamOnの画像はSpotifyのnewsroomからお借りしました。著作権はSpotify社に帰属します。
※Spotifyの中の人がこの記事を見て、追加で情報をくれたのでプレスキット含めもう少しわかりやすいように追記しました。(2/24)

ちなみに)
日頃から音声配信関連の動向はがっつり追っているんですが、なかなかnoteには書き起こせないのでTwitterだともう少しこまめに発信しています↓


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