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大学在学中に起業した僕が思う、プロダクト開発とPMFについて

こんにちは、タイミーの小川です。
前回は、僕がタイミー創業前に経験した最大の挫折について 書いたのですがたくさんのスキ⤴︎をいただくことができ、少しは役に立てたのかなと思い嬉しかったです!
週一回くらいの更新頻度かもしれないですが、毎週木曜日ごろを目処に更新を続けていきたいと思ってますので、フォローやスキをよろしくお願いします。応援してもらえると頑張れます!

今回は、今だから話せるサービス誕生の裏側とPMF(プロダクトマーケットフィット)前にやっておいた方が良かったことについてお話ししようと思います。

PMFとは「顧客が満足する商品を、最適な市場で提供できている状態」のこと。スタートアップの達成指標として重要視されてるので、ご存知の方も多いのではないかと思います。

現状のタイミーも「顧客が満足しているサービスを提供できているのか?」と問われれば、正直まだまだかもしれません。しかしタイミー創業時「大学生」で「起業家としての経験もなかった」むしろ「事業を諦めたこともある」僕ならではの話ができるのではないかと。整理するためにも、ここにメモとして残しておきたいと思います。

「働く」ことへの負を掘り下げたことが、タイミー着想の原点

最初の事業アイデア「Recolle」での挫折を経て(前回の記事)、起業家としての自信を失った僕は、やることもなかったのでとにかくシフトを詰め込んでバイト漬けの毎日を送っていました。日雇い派遣での過酷な労働環境も経験したり、仕事が合わないとすぐに辞めてしまったり。当時はとにかくお金がなくて、給与の振込日まで待たなければならず、友人と遊びに行くことさえ我慢したことも。

「会社を立ち上げる」という目的を失い、自分の「時間価値」が大きくすり減ってしまったことにショックを受けつつ、働いてすぐにお金をもらうということはこんなに大変で複雑なのかと、フラストレーションを感じていました。

そんな中で、タイミーのアイデアを初めて披露したのは、株式会社エニグモ代表取締役の須田将啓さん。エニグモは海外ファッション通販サイト「BUYMA」などを手掛ける上場企業です。Recolleの時に、投資の相談をしたことがきっかけで繋がっていました。
須田さんが何かのきっかけで自分を思い出して下さったみたいで(有り難すぎる話です..)「今度ランチでもいかがでしょう?」と声をかけていただけました。

当時の須田さんとのメッセンジャーのやりとり


しかし、当時の僕はRecolleをあきらめており、その報告すらできておらず、バイト漬けの日々を過ごしていました。

起業家も辞めてしまい、何者でもない自分が須田さんの貴重なお時間をいただいていいものだろうか。いや、よくない!!!

そう思った僕は、錆びつきかけていたアタマをフル回転させて、必死で事業のアイデアを考えました。確か、ひとつは出会い系マッチングサービス、ひとつはバイトマッチングサービス。あともう1つあったはずだけど、忘れてしまった(笑)。

会食の場で、恐る恐る作り上げた事業プランをお話しすると、須田さんは一息置いてこう言いました。

小川くん。『すぐ働けてすぐお金がもらえる』──これは間違いない!絶対にイケる!

須田さんに後押しをいただき、一気に勢いづいた僕はまた起業家精神が湧き上がってきました。


こんなカッコ良い起業家になりたいと心から思いました、人生が変わった瞬間でした

早速単発バイトのサービスはあるのかをリサーチをかけたらいくつかイメージに近いサービスが見つかりました。しかし、そのサービスはそこまで伸びてなくまだまだ勝てそうだなという感覚を持つことができました。
そこで自分でこのサービスを作り直す妄想を膨らませながら、実際にそれらのサービスを使って単発で働いてみました。すると、機能の使いづらさや弱点が見つかってきます。

「すぐ働けてすぐお金がもらえる単発バイトのマッチングサービス」──そういうアプリが存在するとすれば、どんなUI(ユーザーインタフェース)を備えているべきなのか? そして、どんなUX(ユーザー体験)を実現すべきなのか?

こうした問いに答えていくとき、まず頼りになるのは、過去の自分の体験です。もしも自分がユーザーだったら、どんな機能がほしいだろうか?かつて自分がアルバイトをしたとき、そこにはどんな「負」があっただろうか? それを徹底的に掘り下げていく日々が始まりました。

日雇い派遣で感じた「負」が、タイミーの基盤に

深掘りを進める中で類似サービスに対して3つの負を感じました。
1つ目は「応募の面倒さ」。履歴書を書いて郵送していた時代に比べればマシかも知れませんが、ネットを開いていろいろな情報を入力するのは意外と手間がかかるもの。わざわざ日程を調整して面接をしてもらうのも時間がかかる。

2つ目が「応募段階ではどこで何をするのかよくわからない」という点。ある物流倉庫での仕事では、集合場所に行くとマイクロバスが迎えにきて、そのまま勤務する倉庫まで運ばれたことを覚えています。当時は「いったいどこに連れて行かれるんだろう?」「どんな仕事をさせられるんだろう?」と、不安でいっぱいでした。

そして何よりも重要な3つ目が「お金の問題」です。僕は毎月月末に、給料を渡さなくてはなりません。そんな僕にとって、給料振込日はきわめて重大な問題。当時求人掲載の段階で「最初の給料がいつ入るのか」を明示してくれているところはほぼありませんでした。

申し込みまでの手間を極限まで削ったUI、実際に働いた人による職場のレビュー、入金までの時間を短縮するシステム——。現在のタイミーにも受け継がれている機能は、当時の僕が潜在的に感じていた不満を掘り返していくなかで構想されていきました。

シード期の資金調達は重要

自らの経験から浮き彫りになった業界の負をUIに反映したこと以外に、タイミーが軌道に乗った要因にはシード期の資金調達が上手く行ったことが挙げられます。Recolleの資金調達では500万円を調達するのに随分と時間がかかったのに(苦笑)。たまたまイベントなどでお会いさせていただいたシードの投資家の方にタイミーの構想を話したら、ほぼ100発100中でわずか1ヶ月で1200万円の資金を投じてくれました。

振り返ると、シード期にここまでの資金調達に成功できた背景は、2つの観点で説明できると思います。

1つ目は「事業ドメイン」です。派遣・アルバイトの業界は、古い仕組みが残っており、しかるべき変革が進んでいません。端的に言えば、伸び代が大きい市場であり、投資家としても勝算が立てやすかったと思います。

2つ目は「スケールメリット(規模の経済性)」です。アパレルのように細分化されているマーケットに比べると、派遣・アルバイトの世界は均質的。だからこそ、ひとたび成功すれば大きな規模に拡張していきやすいのも、投資する側からは魅力的に映ったのだと思います。

3つ目を大変恐縮ながら挙げさせていただくと、自分自身の原体験をもとに熱くこのサービスの必要性を語ることができたのと、学生ネットワークがあるのでユーザーはすぐ集められるし企業は人手不足の日本だから使うはずです!というすぐ立ち上がりそうなイメージを伝えられたことも大きかったかなと思います。

アプリを作らずにビジネスモデルを検証する

ところで、スタートアップにありがちな「失敗」はなんだと思いますか?
それは、「なにかプロダクトがなければ効果検証はできない」という思い込みにあると思います。アプリの開発は工数も人でもお金もかかるもの。

タイミーではアプリの開発前にビジネスモデルの検証はLINEアプリ上で行っていました。「スキマ時間で働きたい学生」を地道に集め、困っている企業さんには「明日何時から何時までバイトに来て欲しい」と投稿してもらい、双方のマッチングを手動で行う。需要と供給がはっきり見えた状態で、このやり取りをアプリで行うためにはどんな機能が必要かを考えてアプリを作っていきました。

優秀な仲間を口説いて、ジョインしてもらうこと

いくら良いビジネスを思いついても、それを一緒に実現する仲間がいなければ意味がありません。熱量の高い状態でチームを保てたことも、事業スケールにあたり重要な要素だと思っています。

当時のフルコミット参画メンバー。左から阿部、岡田、小川、三浦、福家

メンバーたちと夢中になって「タイミーをどんなサービスにするべきか」「どうやって広げていくのか」「どんなふうに世の中を変えるのか」を連日連夜語り合いました。僕のアイデアを同じ目線になって膨らませてくれる。そんな熱い仲間に出会えたことは何よりも大きかったと思います。

同時に、超優秀なフリーランスエンジニア2人に入社してもらう決断もしました。彼らのおかげで、「1ヶ月でアプリを作る」という無茶なスケジュールにも関わらず、サービスを完成することができました。

シード期のベンチャー企業が、経験があるシニアなエンジニアを雇うことはまず不可能ではないでしょうか(友人知人などの場合は置いておいて)。なぜなら優秀なエンジニアに仕事を依頼する場合、相当な額の報酬を用意する必要があるからです。人材に資金を費やすというのはなかなか決断できません。しかし、タイミーは資金調達が見えていたこともあり、大胆な投資にも踏み切ることができました。

もちろん、お金さえあればなんとかなるというものでもありません。優秀なエンジニアであればあるほど、「このサービスは自分が手がけたい!!」と面白みを感じてもらえるかどうかが大事になってきます。幸いにも、この2人のエンジニアはタイミーというサービスが、大きなポテンシャルを秘めていると感じてくれました。力強い推進力を得たタイミーは、実現に向けた開発スピードを一気に加速させていくことになったのです。
(改めて感謝しかないです..)

我ながらこの投資判断は正しかったと感じています。経験のあるエンジニアの方が書いたコードは、いつまでも土台として残るもの。彼らに開発を任せていなかったら、その後のバージョンアップの負担は相当のものになっていたと震えています。

サービス名は一発で覚えてもらえて、仲間からも愛されるものを

そして最後に。サービスの名称は実は非常に悩みました。というのも、「Timee」というサービス名になる前に「仮名称」があったんです。

その名も「単発即金くん」。

いくつかの資料の表紙には「単発即金くん」という文字がデカデカと配置してあります。
「ビジネスを成功させるには『一発で覚えてもらえるサービス名』『一発で中身がわかるサービス名』にするべき」

色々な投資家にお会いする中で言われたこの言葉に僕は大きな衝撃を受けました。確かに、記憶に残るサービス名は非常に重要だ。——と。

そこで出てきたのが「単発即金くん」という即物的なサービス名でした。「これなら売れる!」と自信満々だった僕とは反対に、仲間たちからは不評。思いとどまるように全員で説得されました。今思えば「単発即金くん」という名称にしなくて良かったと思います(僕は気に入ってたんだけど……)。

そこで色々と議論を重ねる中でタイミーというサービス名になったのですが少しだけ経緯をお話しさせていただきます。
創業メンバーで集まりサービス名をどうしようと話していた中で、

「自分達のサービスが広がった先の世界はどうなってるんだろ?」
「世界中が笑顔になってるんじゃないかな?一人ひとりの時間を豊かにできるといいよね」


という会話になり時間を豊かにする会社だからTimeを入れようという中で色々な綴りを書き(timy/time work など)今のタイミーに至りました。

余談ではあるのですが「世界で一番幸せな動物」とたまたま調べて出てきたクオッカワラビーをモチーフにして、タイミーのキャラクターは誕生しました☺️

初代のロゴ(クオッカワラビーがモチーフ)

というわけで、タイミーを生み出す根幹になった僕の取り組みや考え方についてつらつら書き起こしてみました。やっぱり長くなっちゃいましたが、起業を検討している方にとって、少しでも参考になれば嬉しいです。

次の記事では、無事にサービスをスタートさせながらも早速窮地に陥り、それをどう脱却していったかについて話そうと思います。楽しみにしててください!

採用強化中です!

最近僕は、新卒の採用イベントに登壇しています。タイミーとしてはほぼ初めての新卒採用を行っているので、ぜひ興味があったら採用サイトを覗いてみてください! もちろん、中途採用も大歓迎です。一緒に市場を作っていきましょう。

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