裏路地ドクソ@退廃的詩人

裏路地ドクソ@退廃的詩人

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スカー

薄暗い部屋の扉を押す 本日は快晴、僕の気分とは裏腹に 人はどうして生きるのだろう 辛い事ばかりが脳裏に浮かぶのに 楽しい想い出は影に隠れてしまう 月の裏側が見えないように 衛星は良くない想いだけを映写して 人間達を追い立てるのだ 大丈夫、大丈夫 僕が辛いときは、君が毒針を刺してくれる 大丈夫、大丈夫 君が辛いならば、その時は僕が毒針を刺してあげる 大丈夫、大丈夫 終わりの景色は美しいなんて誰かが言っていたけれど 僕達の走馬灯はきっと 怒鳴り散らされた想い出ばかりが映るん

    • シンプル

      世の中の淵を眺めている 果たして自分に価値があるのかと 淵から飛び降りるようにして 初めから何も存在していないような感覚を得れば 今、鬱屈としたこの気持ちも晴れるのだろうか かつて大切な人から貰ったバケットハットは 風に舞っていった 自分の一部のように思っていた物でも 連れ添うことができない場所がある そんなことを暗示するように 人の感情の縫い目に ライターで火をつける いとも簡単に燃え尽きた糸は 感情までは連れて行ってくれないみたいだ では燃えていたのは何だったのだろう

      • 望みごと

        失った物を探すようにして 明日に希望を投げ捨てた 炎の中で燃え尽きた愛に 意味なんてあるんだろうか そう思った当日に 描いた絵を全てシュレッダーにかけた 燃えカスになった努力は あまりにあっけなく風に舞っていった 君のことを愛していただなんて 口が裂けても言うべきではない もう燃え尽きたのだ そんな時にも スマホを見つめながら 君から連絡がないかなんて確認してしまう それはきっと、僕という人間の弱さだ 頭の中にはきっと大切な人のための扉があって いつでも想い出に会うことが

        • ラプソディ

          無機質な唇から、有機物への流出 血液は宙を染めるように、勢いを以て死を繋ぐ チアノーゼを起こすような感情のルーレットが示すのは パンゲアに位置していた領主達の墓の方角であるべきだ 心と心を越える時に お互いの体温を知ることになる刹那の夜に 切り裂かれた魚体から共食いの音がする 奇跡を待っていた聖職者たちは大きく声を上げ 死を肯定するための呪詛の雨を降らせる 雨はいつしか惑星を包み、墓を作るような余裕もなく沈みきった地上の猿たちは 新しく文明を作るために船を残していたがために

          顛末

          一本、また一本と 指を折ってゆく 痛いなんて軽々しく口にはできない程の激痛だ 人が終わりを迎える時って どういう状況なんだろうね 僕はなんとなく天の国があり そこには仲の良かった家族や友人の姿があり 生前に最も執着していたことの 延長線上に終わりがあると思っている 都合の良い考え方だと笑われたこともあるが 終末が幸福でなければ、今まで耐えてきた あらゆる顛末に納得がいかない 花を踏みながら歩いてゆく 名も知らぬ花を 花々はクシャっと、音をたてて 僕の指が折れた時と同じ音を

          ロストエイト

          嘘だらけの畔を歩く そこに芽吹こうとしていた息吹を 否定するようにして ひたすら潰してゆく 今日の空は満点だったよ 君がそう言うので 僕は夏が嫌いになった 空が満天模様なのに 気持ちは全く晴れなくて 光りだけが、ただ、ただ、強く降り注いでいる 肩で息をしながら 向かった先は海 随分と遠くに来てしまったと思う時 その傍らにはいつも海があった 最愛の人たちとの別れを選び 掴みたかった物ってなんだろうと 思案してみると 僕の欲しかったものは ちっぽけな優越感でしかなかった でも

          カナリア

          丘の上でカナリヤが鳴いている 幸せを呼び込む小鳥のさえずりは 言葉が発達しすぎた僕等の心には届かない 手紙に文字を認めて、最愛の人に贈る行為を 愛と呼ぶのならば 「愛」個体では方程式は成り立たない 隣の席に座るあの子も、教壇の前の席のあの子も 閉め切られた窓からカナリヤの唄を聴いているのだろうか ニアイコールで結ばれる僕等は 全員がある程度同じ教育を受け、最後にはゴミのように扱われる (君の代わりはいくらでもいるよ/君の代わりは捨てられたよ) ゴミ箱の中に丸められた恋文を

          キラキラ

          掬い上げた湖の欠片を空に還す 水滴はひとつひとつ丁寧に浮き上がり 光を得て星として輝いた 星は生来降り注ぐものだと兄から聞き 星は将来燃え尽きるものだと弟から教わった 私の掌から掬い上げられていく水滴は 気化しそこねた涙ではないのだろうか きらきらと擬音を背負った夜空に向かって 咆哮を上げる私は、人間を模倣した獣であり 産まれるはずだった理由に向かって 牙を向けていることを、どうか謝罪させて欲しい 醜い性を浄化するように湖は 今宵も幾重もの星を抱きかかえている 周回軌道中

          虹とビーカー

          言葉を話せるようになった ビーカーに毎日言葉を封じ込めた ビーカーが千個になった暁には 閉じ込めていた言葉たちを解放しようと決めていた それが私の最後の仕事だと言わんばかりに 固く閉じられた精神の 上空から蛇腹に折られた七色の折り紙が 私達に足場を作ってくれる 足場を昇ってゆけば 楽園に行けると信じた人々が 我よ我よと押し合いながら昇ってゆく 途中、落ちた人も何人か見たが 彼等は無事に着水できたのだろうかと 黙視を決め込んだ私が 要らぬ心配をしている ビーカーから飛び出す

          空を自由に飛べたなら

          こうして並んで座っていると なんだか友達同士みたいだね お互いのことをまるで知らないのに 君は静かに微笑んで 首を縦に振った もっと自由に物事を考える頭があったなら 今頃、幸福を手にしていたんだろうか 現在が不幸なわけじゃない でも、足りないものがあるんだ 取りこぼしてきたものがあるんだ それが何かはわからないけれど 暗雲立ち込める空を見上げながら 言葉を発しない君と 波の高い海を前にして 飛ぶ練習をしている 空を自由に飛べたなら 夢に見る、落ちていく感覚を味わうことも

          空を自由に飛べたなら

          メモリアル

          まだ、名前の付いていない島へ行こう その場所で二人、星空を眺めるんだ 無駄な光の無い空間で見える 瞬きの素晴らしさよ いつまでも続け、続け 貴女のことだけを知った気でいたい いつか四畳半から二人で見上げた夜空の 星の無き事を嘆くより 今、見えるこの素晴らしき空を 瞳に焼き付けて生きてみないか 生きることは難しい 途方もなく難しい 自身の身を投げ出してまで護りたいものを 抱えると途端にハードルが上がる それを悲しみと捉えるか 楽しみと捉えるかは、人それぞれだけれど 色褪せ

          チーク

          星空ピカピカ 君のほっぺたみたい 優しく撫でた彗星に 自分の手を重ねた 生きた感触がした 生きていることが辛いと感じている時に、友の言葉より刺さるものがあるだろうか。金色の廊下を共に歩くことができる相手を選ぶのはいつだって自分自身だ。そこに愛があれば、尚良い。首を括って白壁の先へ行くことよりも重要な事、誰もが知ったつもりでいて実は学校では習わないこと。君が教えてくれた星雲の向こうの原風景のような、まだ、猿が生まれる前のお話 遠く、遠く、遠くまで届いてほしい 生きることは挫

          紙飛行機

          たった5文字のラブレターが 会ったことも無い君から 僕の下駄箱へ投げ込まれていた 雨の日に傘を忘れた時のような気分だ 憂鬱などではなく ずっと埃の経つグラウンドを見ていたいような 差出人も書かれていないから いたずらなのかもしれないね でも、筆跡はとても美しいものだった この手紙の主は このたった5文字を書くために 精一杯の想いを込めたのだろう なぜだかそう思えた 形に残るものが全てではない世の中で スマホを使えば3秒で打ち込めるこの言葉も きっと君は何度も大学ノートに

          マロン

          ビードロ細工の瞳 君は生きながらにして、人形でもあるかのように 背中にはチャック 背中から這い出てくるのは どんな怪物なんだろうね 弾けとんだ供物が 私の最後の食料になるに違いない 火を入れるとぱきぱきと音が鳴る 殻をむいて中身を食べると ほのかな甘みが喉を刺すんだ もう喋らなくていいよというように 私の心模様は関係なく 唇を塞がれた 貴方だけを忘れない 何があっても忘れない 空を飛べるとうそぶいた その日の快晴を決して忘れない 空の色は青だと決めつけた人がいる そんな

          放課後

          言霊ってあると思う 言霊ってあると思う 僕と君しかいない放課後の教室で 疑問符を重ね合わせて遊んでいる 君には理解が及ばないだろうね 貴方には遠い感情でしょうね 僕達は一年も歳が離れていないのに 老人と貴婦人ほどの違いがあるね 老いたライオンはどう生きるのだろうか もともと獲物を狩るのに適した身体ではないのに 香水を並べる貴婦人の気持ちは理解ができない どれも人を魅了することにしか、意味が無いから 僕達二人がこの屋根の下で どれだけ言葉を交わしても 分かり合えない恋人だと

          トート

          水面に顔を出すと双子の月が笑っていた 名前はどうにも思い出せないが、二人は同じ名前で 波が囁く言葉の音がトート、トートと鳴っている 昼夜が逆転した頃 モーンガータが二つ並んで最終地点で蝶々結び 静寂に残った星々の煌めきが 私のことを肯定している気がする (夜においで、一緒に絵画を見よう) 連続した粒が言葉を放っている トート、トート 聴き取れるのはそんな小さな月の名前 私にはそれで十分だった 許されることを許された気になれたのだ (夜においで、一緒に絵画を見よう) しか