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【原本公開】慶應通信「志願理由書」の書き方を解説 - 合格するために研究した攻略法の全て

1.はじめに

 2020年10月、慶應義塾大学通信教育課程74期秋の合格発表が行われ、私も無事経済学部合格通知を頂きました。人生で久しぶりの合格発表を待っている時間は、思いのほか緊張を覚えました。

 私のように慶應通信へ出願を検討されている方が最も悩むポイントが、この「志願理由書」だと思います。沢山の情報が入り乱れているため、「誰でも受かる」、「一定数は落ちる」、「実は抽選」など、様々な憶測が飛び交っているのが現状です。

 また合格した原文をそのまま公開して下さっている方も複数おり、これらの情報をしっかり区別して、自分に合ったやり方を見つけることで、合格できる可能性が高まるのは間違いないと思います。

 ただそうは言うものの、私が調べた中で『これが知りたかった!』という本質を突いた情報はネット上から見つけられませんでした。なので結局自分で考え、理論立てて志願書を提出したという経緯です。

 本noteの目的は慶應通信「志願理由書」の書き方を最も分かりやすく解説すること、そして志願理由書の書き方だけでなく、読者の自己理解を更に深めるきっかけを作ることを第二の目的に置いています。タイトルの通り原文公開をしながら、それを作成するまでの過程を分かりやすく説明する構成でお届けます。本noteをご購入いただいた方は、個別相談も対応させていただきますので、TwitterのDMよりご連絡頂けますと幸いです。


2.志願理由書を再定義

 「志願理由書」を書く上で一番大切なことは、この志願理由書を再定義することです。慶應大学通信教育課程に出願する人は、大小様々理由や背景、志を持っていると思いますが、この「志願した理由」を大学に伝えるために書くのが「志願理由書」です。

 3つの問いのうち、1つ目と3つ目は分かりやすいのですが、2つ目の問いも『「志願理由書」の中にある書評である』という点を忘れてはいけません。そもそも大学とは研究機関であり、研究の質を高めるために教育機関の側面も併せ持っていることを前提として考えた時、この「志願理由書」で試されているのは”現状の力量”では無く、”伸びしろ”なのでは無いかと私は考えています。

 「志願理由書」の解説ページへお越し頂いている方のほとんどが、問2の「書評」が難関になっているのでは?と感じますし、私自身もそうでした。ただこの「書評」も”自分の志を自分が選んだ本を使って相手に伝える場”として捉えることで、本の選定から書評のスタンスまで大きく変化させることが出来るのではないでしょうか?

 つまりこの「志願理由書」の定義は、問123を通じて「慶應大学通信教育課程を志願した理由を分かりやすく審査員に伝えるための書類」であると置いた上で解説をしていきます。

 最後にもう一点、この「志願理由書」は問1問2問3を全て一つのストーリーとして構築することで、完成度を底上げすることが出来ます。ここについてはそれぞれの解説が終わったまとめ部分に記載しますので、順番にお読みいただければと思います。


3.問1「大学で何を学ぼうとしているのか」

『志望した学部・類で何を学ぼうとしているのか、①過去の学習経験 ②将来の展望 のいずれにも触れながら、具体的に述べなさい。(720文字以内)』

 こちらの問1は「志願理由書」のストーリーを構築する上で『自分のキャラクターを設定する』役割を果たす箇所のため、非常に重要な部分になってきます。

 例えば「正義」という言葉が文中に書いてあるとき、それが”現代の警察官”が書いているのか、それとも”安土桃山時代の将軍”が書いているのかによって全く意味が違って来ますよね。このように『自分のキャラクターを設定』する事は「志願理由書」で扱う全ての言葉を、審査員がどのように解釈するかを操作してしまう程の効果がありますので、非常に重要になります。


キャラクターを見つける

 このキャラクター設定に取り組むことで、自分の現状となりたい姿を再度整理することが出来ます。与えられているお題に沿って、①過去の学習経験、②将来の展望 を整理してみましょう。またこの①②を考える際は、中間となる”現状”も一緒に考えると整理やしやすいです。


私の場合は、

①”過去” 公立の小・中・高等学校を卒業して、ベンチャー企業に就職。

〇”現状” 管理職に就き、企画と運営を主に担当。

②”展望” 日本経済の発展に貢献できるような経営者になりたい。

となります。


 この中で最も大切なのが②”展望”で「志願理由書」の幹になる部分です。この『将来の展望』がより相手に伝わりやすくするために、その展望を持った背景の部分をストーリとして組み立てていきます。先にまとめた”過去”と”現状”をより具体的にしその時感じた思いや感情を肉付けしていきます。


私の場合は、

①”過去” 公立の小・中・高等学校を卒業して、ベンチャー企業に就職。1年目は営業マンとして現場経験を積み、2~3年目からは部下を持ってリーダーを経験、4年目に出した結果を評価され管理職に昇格しマネジメントを経験、それからは管理職として企画と運営を主に担当している。

〇”現状” 企画と運営をする中で、知識や教養が不足していると感じる機会が増えた。中でも「あなたの事業は社会にどのような影響を与えるか」の問いに対して、明確に答えられなかった経験が最も不足を痛感したのを覚えている。

②”展望” 様々な知識や教養を得る中で、自分が人生をかけて行いたい事業を発見し実行したい。またそれらの事業を行うことを通じて、共に生きている社会と、支えて頂いた環境に貢献できる人材になりたい。

このようなイメージです。


 ここまでくれば問1に回答するための材料は揃っていますので、提出用に内容の組み立て、肉付け、文字数調整を行って完成です。


組み立てと仕上げ

 あくまで「志願理由書」は”合否を判断するための最重要課題”であり、審査員さんが1つ1つ丁寧に読んで下さっていることを前提に考えると、読みやすい文章に仕上げてから提出するのはマナーだと思います。

 また中には多少雑な文章でも合格したと報告をされている方もネット上で拝見していますが、せっかく合格を頂くなら自分が全力を出し切った「志願理由書」で通知をもらった方が、単純に嬉しいですよね。なのででこの組み立てと仕上げの部分はしっかり丁寧に、可能な範囲で時間を使って取り組んでいただけると嬉しいです。


大枠の流れは、

 ⅰ.志願理由とこれから伝えることの前置き

 ⅱ.過去の学習経験と現在

 ⅲ.将来の展望と思い

 (ⅳ.肉付け)※私の場合どうしても伝えたかったので加えました。

 ⅴ.まとめ

のようなイメージです。


私の原文をそのまま共有すると、

ⅰ「私は学問を通じて、経済活動に関わる一人の人間として自立し、経済を創る側のコミュニティに参画するために、貴学の経済学部を志願した。以下には、過去の学習経験、及び将来の展望と合わせて、学ぼうとしている内容とその理由を述べる。」

ⅱ「私は公立の小・中・高等学校を卒業したのち、当時設立後間もない営業代理店に就職、最初の1年間は個人の営業マンとして営業活動を行い、2年目からはチームリーダーとして自身の営業活動と部下の教育を同時並行で行ってきた。8年目になる現在は管理職に就き、事業計画の立案、組織の運営などを主に行っている。」

ⅲ「立場が上がり「会社経営」に携わる中で、「経済及び社会にどんな影響を与えたいのか」という問いに向き合う機会が増え、その都度、自分の知識と教養の無さを痛感する機会が増えた。日頃向き合う課題が変わったことで、自身のコンテキストが”従業員”から”経営者”に変わりつつあることを自覚したこと、そして日頃の読書を進める中で様々な良書に出会ったことで、人生計画を再考したいと心から感じるようになっていた。」

ⅳ「V・E・フランクルは著書『夜と霧』で、「人間とは、人間とは何かを常に決定する存在だ。」と述べており、選択肢に制約がほとんど無い私は、はるかに何事においても成し遂げやすい環境にいる事を再認識したのを覚えている。」

ⅴ「私は貴学で、今まで頭の隅に置いていた小さな疑問を全て掘り起こしながら学問を進め、深い理解と様々な教養、世の中を見る正しい尺度を身に着けたい。そして私が人生をかけて取り組む課題を見つけ、貴学と世の中に貢献できる人間になりたいと考えている。」

合計約680文字。


 このようにキャラクター設定を行った時点でほぼ問1の回答内容は出来上がっているので、最初の前置きの部分と、最後のまとめ、また私のようにどうしても伝えない内容がある場合は肉付けを加えたのち、指定されている制限以内に収まるように文字数を調整することで問1は突破出来るのではないかと思います。


3、問2「書評」

『自分の学びたい学問領域に関わる書物を一冊選び、概要を簡単にまとめた上で、自身の視点から詳しく論評しなさい。(720文字以内)』

 書評で考えるべきポイントは ①書籍選び ②概要のまとめ ③論評 の3点です。

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