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秋の香【随想】

西の果てにある長崎という町は、秋の訪れが遅い。
もちろん、9月になると朝晩は涼しくなるが、それでも日中には気温が上がって夏日になるのだ。
長崎の秋は「おくんち」という秋祭りが過ぎてからようやく訪れる、短い秋である。

そんな中で、私が最も秋を感じるのはキンモクセイの香である。
「おくんち」が終わりキンモクセイの爽やかな香をきくと、長袖の上着をやおら箪笥から出したりする。
そしてまもなく山が赤に黄に色づいてくる。
紅葉が散る頃には早くも師走である。

今年も「おくんち」は開催されなかったが、庭のキンモクセイは変わらず爽やかな香を放ち、秋の深まりを告げてくれる。


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