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Jリーグマッチレビュー⑬J1第10節 FC東京vsG大阪【シン・国立初リーグ戦 伝説は新章へ】

さて、今回は国立競技場で行われたJ1第10節、FC東京vsガンバ大阪のマッチレビュー書いていきます。東京五輪のために建てられた新国立競技場。ルヴァンカップ、天皇杯などではすでに決勝の舞台として何度も使われてきましたが、今回は初のリーグ戦の舞台で使われる歴史的な1戦。
過去に旧国立ではFC東京が2004年と2009年に(2012年元旦に天皇杯も制覇)、G大阪が2007年にナビスコカップ(現:ルヴァンカップ)を制した地ではあるが、新国立では明暗が分かれている。FC東京は2020年(決勝開催はコロナ延期で2021年1月)のルヴァンカップで柏に勝利し優勝しているのに対し、G大阪は2021年元旦の天皇杯決勝で川崎に敗れ準優勝に終わっている。
オリンピックの興奮が終わり、今後はおそらくJリーグで使われる試合も増えてくるだろう。新たな伝説が生まれるのか?そして「新国立男」の誕生はあるか?新章が今始まる。

この日のために、過去の国立名試合のコラムなど、煽りに煽ってこの試合を迎えたFC東京。首都クラブとしてこの試合にかける思いは相当なものだ
9月にももう1試合国立開催が予定されている。
そのときに着用する予定の3rdユニフォーム

本日の観戦ユニフォーム

2020年 ACLユニフォーム(⑮アダイウトン)

本日の観戦ユニフォームは2020年のACLモデルになります。ACLモデルは胸スポンサーが必ず東京ガスになることはFC東京の定番。
やはり2020年、激動のシーズンで最後に国立で掴みとったルヴァンカップの相性と思い出を重視してこれにしました。当日も現地にいましたがあの日の興奮は未だに忘れられない。

本日のメンバー&見どころ

FC東京

予想フォーメーションは4-1-2-3。
スタメンの前の試合からの変更点は最終ラインで負傷しベンチからも外れた森重真人に代わってエンリケ・トレヴィザンが入った。
リザーブには三田啓貴、渡邊凌磨に替えてルヴァンカップで復帰し存在感を見せたバングーナガンデ佳史扶。そして高萩洋次郎と、負傷離脱していたレアンドロが帰ってきた。流れを帰る投入がいつになるのか期待だ。

前の試合はFC東京のコロナ感染の影響で延期となった2節・ホームの名古屋戦。どちらも決め手に欠けスコアレスドローとなり、これでリーグ戦では浦和戦から3戦連続のスコアレスドローと得点に見放されている。ボールは支配できているが最後のフィニッシュの精度をとにかくあげていきたいところだ。

ルヴァンカップの磐田戦では新星・梶浦勇輝が得点を挙げたが、ATに勝ち越しゴールを食らってGS敗退が決まった。ショックの大きい負けとなったが、プラスに捉えた言い方をするとリーグ戦に集中できるということ。この国立の地での1戦は大きな分岐点になりそうだ。

注目選手はやはり松木玖生だろう。今年の高校選手権では主将として国立のピッチに立ち、準決勝、決勝とこの地でゴールを奪って青森山田高の優勝に貢献した。平山相太らに続く「国立男」の称号に最も近いこの男が、Jリーグに伝説の舞台を移しても躍動できるか。そしてプロ初ゴールを思い出の地であげることはできるか?

ガンバ大阪

予想フォーメーションは4-4-2。前節は3-4-2-1だったがシステム変更に打って出た。
前節からのメンバー変更はクォン・ギョンウォン、黒川圭介、パトリックがベンチに回り、山本悠樹、福田湧矢がベンチからも外れた。
4バックの両SBには右に柳澤亘、左に藤春廣輝で迎え撃つ。ボランチには山本に代えて齊藤未月が入り、前節はシャドーの一角だった山見大登は2列目の左サイドに入った。2トップはレアンドロ・ペレイラと18歳の坂本一彩を抜擢した。
リザーブは高尾瑠がベンチからも外れ、ウェリントン・シウバが入った。

前節のホームでの湘南戦は、未勝利だった相手に終了間際に決勝点を許し、痛すぎる黒星となった。ここ3試合は2分け1敗と苦しむ。

今シーズンの印象はホーム名古屋戦のようないいときの試合と、敗れるときはあっさりと負けてしまう悪いときの試合がはっきりしており波に乗り切れない印象。今シーズン大分から就任した片野坂知宏監督のもと、ボールをつなぐ攻撃サッカーを模索中。FC東京とスタイルは似ているが、いかに支配できるか、自分たちのスタイルを表現できるかカギとなる。片野坂監督は、昨シーズン激闘の中で散った大分時代の天皇杯のリベンジをリーグ戦で果たせるかにも注目したい。

注目選手は山見大登。昨シーズン特別指定ながらデビュー戦で衝撃のゴラッソを決めた男は今季から正式にプロ契約。精度の高いシュート力が光る。今節も怪我人続出の苦しい台所事情で層が薄くなっている前線ではあるが、セットプレーのキッカーも任されているだけに、ゴールに絡む仕事を増やしたい。

前半

ピッチは生憎の土砂降りで始まることとなった。
互いに攻撃を売りとするチームということもあり、序盤からチャンスが生まれる。G大阪は前半3分に山見大登が敵陣中央でFKを直接狙うもわずかに右へ。負けじとFC東京はアダイウトンのドリブル突破に相手DFが釣られると、空いたスペースに安部柊斗が走り込んでシュートも枠上。

試合の分かれ目となったのは34分、G大阪が決定的な場面を作る。
左サイドの藤春廣輝にエリア内で展開すると、中央に待っていた山見へグラウンダーで折り返す。これを山見が右足でコントロールショットもボール1個分右へ外れてしまった。
ピンチを凌いだFC東京は3分後CKを獲得すると、キッカーの小川諒也が左足でニアサイドへ巻いてくるボールを供給。これにエンリケ・トレヴィザンがパンチングしようとしたG大阪のGK・一森純より一瞬先にヘディングするもクロスバーへ。しかしそのこぼれ球が少しエリア内で離れて待っていたアダイウトンのもとへ。右足で蹴った地を這う強烈シュートはブロックを敷いていたG大阪ディフェンスに当たるも力で勝りゴールネットを揺らした。欲しかったチーム4試合ぶりのゴールでFC東京が先制点。

追いつきたいG大阪は43分、パス交換から背後を取り左サイドから藤春廣輝が突破し中央へクロスを送るも、僅かにレアンドロ・ペレイラには合わず惜しくも決定的なシーンにはならない。
前半はFC東京の1点リードで折り返した。

後半

後半先に動いたのはG大阪。初スタメンの坂本一彩に代わって中村仁郎を投入。若い力で同点を狙う。
まずは追いつきたいG大阪は前線の選手が高い位置でボール奪取を試みる場面が増え、チャンスシーンも増えてくる。
4分には小野瀬康介が右サイドでカットしてドリブル突破。その流れで中央へクロスを送ると、エリア内手前に流れたボールを受けたボランチのダワンが強烈なミドルシュートを放つとクロスバーをヒット。小柄ながら力強いミドルを放った。
FC東京は逆に11分。サイドチェンジのこぼれ球を右SBの長友佑都が拾うと松木玖生へ。ペナルティエリア手前から左足で強烈なミドルシュートを放つも一森がファインセーブ。初ゴールとはならず。

18分、FC東京は先制ゴールのアダイウトンに代えて怪我から復帰のレアンドロを投入。
するとそのわずか2分後、ディエゴ・オリヴェイラがプレスからボールを奪うとレアンドロがセンターサークル付近でボールを受ける。そこから一気にスピードをあげてドリブル突破。激しく身体を寄せにチェックに来たダワンを手でブロックしながら一気に振り切ると、カバーにきたG大阪ディフェンス陣のタイミングも次々に外して一気にエリア手前まで来るとそのまま強烈に右足一閃。中央突破で相手DFを完全に無力化したスーペルゴラッソが炸裂。まさに「蝶のように舞い蜂のように刺す」一撃が決まりFC東京が追加点。復帰していきなりの大仕事をレアンドロがやってのけた。

後半30分には永井謙佑が三浦弦太に激しいプレスからボールを奪うと、GK相手に2対1の状況が生まれ、最後はレアンドロへパス。これをレアンドロが流し込み1度はゴールが認められるもVAR検証の結果永井のプレーがファウルの判定でノーゴールに。
救われたG大阪はその3分後にペナルティエリア手前右でFKを獲得すると、中村仁郎の左足のキックは途中出場のパトリックの頭へピタリと合ってネットを揺らすもオフサイドの判定。43分にはCKからレアンドロ・ペレイラが合わせるも、FC東京GKヤクブ・スウォビィクが右手一本で掻き出すスーパーセーブ。G大阪はシュート数では12本とFC東京を上回ったものの最後までゴールを割ることはできず。そのまま2-0でゲームを終わらせたFC東京が4試合ぶりの勝ち点3で、新国立初リーグ戦を飾った。

ざっくり感想

FC東京

首都クラブとしての威厳を示す快勝。シュート数では上回られたものの、最後まで自分たちのペースでゲームを進めた。課題だった決定力もなんとか2得点で無得点の呪縛を解いた。ちなみにアダイウトン、レアンドロの得点は順番こそ違えどスコアラーは1年前のルヴァンカップ決勝と全く同じ顔ぶれだった。

DFラインは主将で大黒柱の森重真人を欠いたが、エンリケ・トレヴィザンと木本恭生のコンビは高さ、前線への縦パスを効果的に使って森重不在を感じさせない出色の出来だった。そして個人的に長友佑都の働きも、オーバーラップで攻め上がるシーンは多くなかったが、確実にルーズボールを拾って強力な前線に供給する動きを数多くこなしていて貢献度は高かった。これは中盤で相変わらずのスタミナであらゆるところに顔を出した松木玖生、安部柊斗、青木拓矢のトライアングルにも同じことが言える。

攻撃面ではなんと言ってもレアンドロの復活は大きい。投入前もリードはしていたが、G大阪の反撃ムードが高まっていた流れを完全に変えた。改めてFKなども含めてスペシャルな存在であると思い知らされた。

ガンバ大阪

負傷者が相次いでいること、若手の抜擢や新たなスタイルの構築など「生みの苦しみ」という段階ではあると思うが、内容には物足りなさが残った。失点シーンは相手を褒めるしかないが、そこから跳ね返す力が足りなかった。

シュート数は12本とFC東京を上回っているが、枠内シュートは僅かに2本。2トップを6試合ぶり先発のレアンドロ・ペレイラと初スタメンの18歳・坂本一彩という思い切った策に出たが不発。個人的にはSBで持ち味のスピードで良さを見せていた藤春廣輝と惜しいシュートを前半に2本放った山見大登の二人が生み出す左サイドからの崩しは良かっただけに、前線の物足りなさがより際立ってしまったように映る。

試合後片野坂知宏監督がDAZNのインタビューで、ピッチに立つ選手、ベンチ入りしている選手たちへの責任感を厳しい口調で話していたのが印象的だった。宇佐美貴史、倉田秋、東口順昭といったこれまでチームの中心となってきた選手が次々に離脱している今シーズン。求められるのは抜擢されている選手たちのこの敗戦を糧にする成長だ。

MOM

レアンドロ(FC東京MF)

負傷離脱から開幕戦以来の出場となったが、さすがの存在感を発揮した。流れがG大阪に傾き掛けていた時間帯で、投入三分後のスーペルゴラッソはお見事。強烈なインパクトをルヴァンカップ決勝の先制ゴール・MVPに続いてまたしても国立で刻んだ。その後もラストパスやドリブル突破で度々チャンスを作り出した彼が確実に「スペシャル・ワン」であることを知らしめた。チームとしても4試合ぶりのゴールをあげたが、この男の復帰によりさらに上昇気流に乗っていきたい。

ネガティブな意見も多かった新国立が賞賛にあふれた水捌けとド派手な演出

新国立競技場は皆さんご存知の通り、五輪前の設計の段階で揉めたことや、「見づらい」「席間の通路が狭い」といったネガティブな意見も少なくなかった。

それでも今回の雨のピッチで称賛されたのは、水はけの良さである。私が試合前に独自でチェックした天気予報のアプリでは7〜8mmの割と強めの雨予報となっており、試合中もずっと降り続いていた。だが、ピッチが田んぼのようにならないため、とにかくボールが止まることがない。当然入念な対策をGKはじめ両チームのウォーミングアップでは行っていたが、その時からすでにストレスは感じなかった。

FC東京のホーム・味の素スタジアムでは何度か雨の試合を観戦したことがあるが、結構ボールが止まってしまうことがあり、本来の選手たちの実力が発揮できないといったストレスを感じていた。

今年は別会場でもこのような事例がある。ニッパツ三ツ沢球技場で行われた横浜FMvs鳥栖の試合だ。激しい雨の中スコアレスドローに終わった試合。ピッチはあらゆるところに水たまりができた田んぼ状態。とにかくボールが止まり選手同士の接触プレーもかなり危険なことがわかる。

今回の国立は客席が雨に濡れるストレスもほぼなく(カメラマンさんやボールパーソンの方は大変そうでしたが…)、これだけノンストレスなピッチ内の状況を見られたのは大きな革命だった。時間は掛かりそうだけど、今後全国各地にできるスタジアムにも国立のピッチに似た芝が普及してほしいなと思う。

そして事前予告にはあったが、演出はさすがのオリンピックスタジアム会場といったところを見せてくれた。雨だったが花火あり、暗転からの光演出あり。一番驚いたのはFC東京の選手たちが円陣を組んだとき。場内が暗くなり、チームカラーの青赤で円陣を組んだ選手たちにスポットが当たる演出。

なかなか日本では見たことがない劇場のような光景だった。調べてみると日本人選手もたくさんいるセルティック(🏴󠁧󠁢󠁳󠁣󠁴󠁿)などではこの演出が行われているらしい。

旧国立はサッカーでの聖地となり、サッカーをやるもの誰もが立つことを夢見た。FC東京のCC(クラブコミュニケーター)の石川直宏さんも93年の開幕戦の演出に興奮したと試合前に語っていた。まだ歴史が浅い新国立でこのような演出を見た子どもたちとかは、これを見て少しでもこのピッチに立ちたいと思ってくれていればいいなと感じた。こういう演出は派手にやってナンボだと思う。

FC東京が首都クラブとしての威信をかけてを敢行したこの派手な演出や事前のプロモーションは試合結果も含めて大成功だったと言える。派手な演出やって負けたらかっこ悪いし勝ててよかったなと私も思っている(笑)

試合前には小池都知事からメッセージ。
ユニが似合わないとか、あなたどっちかと言えば緑の人間でしょとか、「FC東京」の発音のクセがすごいとか、デスゲームの主催者感とかいろいろ言いたいことはあるが…
深夜のガードマンさんのようにめっちゃ光ってるドロンパ
新国立で何より必要だった勝利。演出でも試合内容でも結果でも応えられたことは大きな1歩

試合結果

FC東京2-0G大阪
得点
【FC東京】アダイウトン(前半38分)、レアンドロ(後半20分)
🟨
【FC東京】安部柊斗(前半34分)、ヤクブ・スウォビィク(後半45+5分)

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