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忘れていいこと、忘れたくないこと

父の検査受診同行で、入所先の施設の方と一緒に病院で数時間を過ごす。私のことは、話している間にも思い出したり思い出さなかったりを繰り返しつつ、施設の方と私が珍しくゆっくり話を聞いてくれるものだから嬉しそう。

施設での面会の時は15分という時間制限もあるのでやはりせわしない。病院では幸か不幸かとにかく待たされるので、のんびり話すことができました。当日は久しぶりに東京に大雪が降った日で、防寒対策で着込んだ私のコートを「いいの着てるな」と褒めたり、膝掛け(なぜかピンクに茶系のハワイアンの柄のフリース)の素材を絶賛したりと、上機嫌の父。

父と話す時、「回想法」の真似事ではないけれど、「こんなことあったね」「子供の頃のこと聞かせて」などと父が覚えていそうなことを話してもらおうとしていたのですが、どうも父にとっては「忘れた不安」を私が引き出すように感じてしまうようです。「もう全部忘れちゃってわかんないんだよ」と寂しそうな顔をするので、父から昔の話をし始めたらそれを広げるようにして、それ以外は今見えていることを一緒に味わうようにしてみたらいい感じです。

そして、私が「今年は年女でーす、48歳になったよ」というと目を丸くして「俺がまだ48歳なのにどうして」と驚く。病院の受診票に書いてある父の名前と年齢82歳を見せると「へえー」と納得いかない様子。うんうん、もう気持ちは48歳でいてお父さん。

ただ、突然「たえすけの、ほら、弟か妹がいただろう‥」と言い出して聞き捨てならぬぞ、私は一人っ子だぞ、ちょっとマジで後から兄弟出てくるとか相続で大変になるって!!と思って「そ、そこはしっかり思い出してお父さん‥私一人っ子でしょ‥弟‥おとうと‥おっと?夫はいるよ!!」「そうだ、夫がいるだろう」「いるいる、一人いる!!」
「夫」という言葉が出なかっただけらしい。ここにきて我が家の秘密が明かされたかと思った。そして認知症の人のとんでも話も、じっくり考えると関連がある話をしてるんだなとも思う。

父が何を忘れちゃっても私は大丈夫。こっちが覚えていればいいんだから。でも、父とのこういう会話ってあと何回できるのかな。そして書いておかないと私も忘れちゃう、忘れたくないなと思って今日の投稿。

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