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君のこと何も知らない

これは、今年の3月にわたしがツイートしたもの。なんでこんなことを思ったのかというと、この時、というか本当につい最近まで、わたしは自分の好きなアイドルのことをなんでも知っていると思い込んでいたからだ。

きっかけとかは特にない。今はただ、自分の頭の中に最近浮かぶ考えを整理するためここに文章を書いている。せっかく新しい発信の場も作ったことだし、誰かを攻撃する内容でなければ何かしら書き残していって損はないと思う。

本題に戻る。わたしは2019年秋にカンテヒョンというアイドルを推し始めてからずっと、できる限りの時間とエネルギーを使い彼について知ろうと努力してきた。彼の生年月日や好き嫌い、家族構成、実家にいる猫、やむを得ず譲渡することになったヘビ、髪色の変化。あげ出したらキリはないのだが、そりゃあまあ、4年近くオタクをしているのでそれなりの情報量が脳内に記憶されている。逆に「カンテヒョンについてなんでもいいので教えてください」と雑なパスを出されたら脳がパンクしてしまい何も答えられないと思う。「筋トレが好きな背の低い子です、、」とか、言ってしまうと思う。完全なネガキャンである。

とはいえ、4年間ずっと同じ熱量で推してたかというと実はそうではない。わたし個人として守らなければいけない生活があるし、最低限人間らしい人生を歩むために嫌でもやらなければいけないことがたくさんあるからだ。そのため彼が出演した番組やコンテンツを全てチェックできているわけではないし、YouTubeやツイッターで自分が和訳した動画などを見返しても「こんなのあったけ!?」となることもある。

そんなカンテヒョン情弱オタクのわたしが冒頭で引用したような発言をしたのは、「オタクのうちらは推しのことこーんなに知ってるのに、向こうはうちらのこと何も知らなくてウケる!」と本気で思っていたからだ。
だって考えてみたらそうじゃないか。わたしはカンテヒョンの顔はおろか身長や体重、国籍や出身地まで知っているのに対し、彼はわたしの情報を一才持っていない。
なんだか一方通行だなあと切ない気持ちになりつつも、知られていないことに若干の安心感を覚えている自分もいたと思う。ストイックな彼にお見せできるような、そんな立派な生活を営んではいないからだ。怠惰なオタクにも守りたいプライドというものがある。

そんな考えがひっくり返ったのはつい数日前のこと。大きなきっかけはない。天啓みたいに、「わたしってカンテヒョンのこと何も知らなくね、、?」と突然思ったのだ。ツノ少年もびっくりの急カーブだった。

推しの不祥事が発覚した際に「そんな人だと思ってなかったのに、、」と勝手に悲劇のヒロインモードに入ったり、「わたしの推しくんはそんなことする人じゃないもん!」とお花畑モードに入ってしまったりする(あくまで個人の意見です)我々オタクであるが、それって結局物事を見たいようにしか見ていないからこそたどり着く思考回路なのではないかと思う。
だから勝手に作り上げた推しの虚像を信じて、勝手に裏切られた気持ちになるのだ。
これはアイドルオタク間に限定した話ではない。人間関係全てにおいて起こりうる話であり、現在もリアルタイムで起こっている話だ。
誰かに対し「こいつ変わっちまたな、、」と思うのは、その人が変わったのではなく、その人の見えなかった部分、すなわち自分が見ないようにしていた部分が見えてしまった時に出てくる言葉だと思う。

アイドルがオタクに対し全てを曝け出しているかというと、絶対にそんなことはない。あまりの情報量に時々そう錯覚してしまうけど絶対にそんなことはない。全部出されたら流石のわたしも楽しくオタクできなくなると思う。ずっと謎な部分多めでいてくれ。全ての推したち。だって有名人ではなくても、人間誰しも外には出さない部分があるし。

そうして彼らの中で厳選され出てきた情報たちを、わたしたちは好きなように選び取って好きなように解釈する。だからわたしが今までカンテヒョンについて「知っている」と思い込んでいた部分は、わたしがただ「見たいように見ていた」部分なのだ。何事も見えている世界が全てではないという話をよく母とするのだが、アイドルとオタクとの関係にもそのことが言えると思う。わたしはカンテヒョンという人間の見えている部分から見たい部分だけを選んで見ているし、言い方を変えれば、それは「見たくないものは見えていないフリをしている」ということにもなる。

そして最近、わたしはカンテヒョンのこと何も知らないな、、という考えに至った。見えているものが全てではない上に、その限られた情報もわたしによって無意識にふるいにかけられているのだから。わたしが彼について知っていることなんて雀の涙にも及ばない。

それに対しオタクの思考や行動はかなり一般化されているように感じる。むしろアイドル側の方がオタクのことを知っているのではないかと思うほどだ。知るという言葉の定義が難しい部分ではあるが、個人的には、アイドル側から見るわたしたちの姿の方がくっきり見えているのではないかと思う。

たしかにカンテヒョンはわたしについて何も知らない。わたしがどんな人なのか、どんな人生を歩んできたのか、何が好きで何が嫌いなのか。
でも、わたしにmoaという属性がついた時から彼はわたしのことを知っている。わたし個人について何も知らなくていい。わたしも君のこと何も知らないから、これくらいがちょうどいい。


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