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「次の本はいつ出るの?」と言われ続けることについて
「次はいつ?」
また言われました。
新刊の感想です。
これまでも何度も何度も言われました。
ただ一言、「次はいつ出ますか?」とだけ。
デビューして間もない頃は、これ言われると結構傷つきました。
次はいつ、って、今これを書いたばかりなんだよ。次の本がどうとか言う前に、今あなたが読んだこの作品の感想はないの?
あの頃はまだ年末のミステリベストにランクインしたいとか、ベストセラーになりた
「ショートショートnote」で遊んでみた
先日、株式会社パートナーズさんから新商品「ショートショートnote」なるものが送られてきました。
以前から懇意にさせていただいているショートショート作家の田丸雅智さんとおもちゃクリエーターの高橋晋平さんが共同開発した「noteで小説が書けるカードゲーム」だそうです。
一般のカードゲームのようにプレーヤーがカードを引き、そのカードに書いてあるワードや条件などからショートショートを作り、その出
「花束みたいな恋をした」を二回観た僕は、パズドラしかできなくなった麦くんのために本を書こうと思った
恋愛映画を観に行く、しかも二回も。僕の人生にはなかったことをした。
「花束みたいな恋をした」のストーリーを簡単に言えば、若い男女が出会って愛し合った後に別れるまでの顛末を描いたものだ。それが僕には新鮮だった。
よくある恋愛ドラマは恋の成就で完結する。恋の破局が描かれる場合は、それなりのドラマチックなエピソード(死による永遠の別れ、みたいな)が用意される。
しかしこの映画は、どちらでもない。
2020年に書いたマイクロノベル
北野勇作さんの提案に刺激され、僕もいくつかマイクロノベルを書いてTwitter上で公開してきました。
2020年に書いたものを、ここにまとめておきます。
ショートショートより短いマイクロノベルは、それゆえに今までにない可能性を感じさせます。Twitterでは多くのひとがマイクロノベルを書き始めてきます。これはもしかしたら新しいムーブメントになるかもなあ、と期待しながら書いたり読んだりしています。
ショートショート「マスクの下には……」
きっかけは、このニュースでした。
作家仲間と「これ、ちょっと気持ち悪いね」とTwitterでやりとりしているうちに、こんな話を思いつきました。 エレベーターのドアが開いた瞬間、吸血鬼と眼が合った。
長く伸びた犬歯から血が滴っている。さすがに身じろいだ。
その女性は何事もなかったかのように私の傍らをすり抜けて、オフィス棟へと歩いていった。その後ろからは涎を垂らした分厚い舌を剥き出しにした男、唇を
ショートショート『密の味』
この先の世界のことをぼんやりと考えていたら、こんな物語になりました。
立錐の余地もない、という状態を久しぶりに見た。狭い空間に集まっているのは、全部で二百二十四名。みんなステージに眼を向け、欲望を剥き出しにしている。私は唾棄したくなる気持ちを抑えながら、彼らを観察した。
ステージの照明が一斉に消えると、期待の籠もった歓声があがる。その後にスポットライトがひとつ灯って、中央に立つ男を照らしだし
ショートショート「僕は〇〇」
一目惚れというものが本当にあるなんて、自分の身に起きるまで信じていなかった。
「はじめまして。〇〇です」
そう挨拶してきた彼女を前にして、僕は文字どおり雷に打たれたような気持ちになった。名前を記憶に留められなかったのも、その衝撃のせいだと思った。
それから何度か顔を合わせる機会があった。そのたびに僕は彼女に惹かれ、思いは募った。
一か八かで食事に誘ってみた。彼女は笑顔で応じてくれた。その日