Phase39:ロマンティクスの目撃者

キラとラクスのバカップル化を阻止するヒルダさん、シンが目撃した光景を知り発狂するヒルダさんと、和気藹々とした内容となっております。

一応本作のシンとヒルダは肉体関係を持ちはしましたが、当人たちは恋愛関係には至らないという状態だったりします。一回だけなら事故かもだし。

次回はメンデル内部へと降り立ち、第一部と繋がるパートとなります。


C.E.76:L4宙域コロニーメンデル

プラント核攻撃未遂事件の事後処理を終えて、ミレニアムは改めてコロニーメンデルに寄港していた。そして、前回の調査で発見した内容を確認するため、今回はコンパス総裁であるラクス・クラインも同行しているのであった。

「本当に……よろしいのですか?」
「うん。ラクスが行くところなら、僕もついていきたい。それに、僕だって向き合わないといけないことだと思うから。」

格納庫ではライジングフリーダムのコックピットに座るキラと、その上に腰を掛けているラクスが彼を心配していた。

「ラクスこそ大丈夫?何があるかは聞いているけど、実際に行ってみるのとは違うと思うから。」
「わたしのことなら心配いりませんわ。キラが一緒でしたら、どんなことでも乗り越えられますから。」
「ラクス……」

フリーダムのコックピット内でロマンスを繰り広げるキラとラクス。その隣では同じく出撃の準備をしていたデスティニーインパルスの中にシンとヒルダが搭乗しており、ヒルダは咳払いをしながら通信越しへキラに声を掛ける。

『んんっ……ゴホンっ!準備はいいかい、キラ隊長。ラクス様も。』
「あっ……はい。お待たせしました。」
「よろしくお願いしますね、シン、ヒルダ隊長。」
『はい、了解しました。』

そうラクスに返事をしたシンは、フリーダムに先んじて宇宙空間へと出撃する。そして、それに続いてキラとラクスが乗るフリーダムも出るのであった。

インパルスのコックピット内。シンの前隣りにしゃがむように座ったヒルダは、彼の顔が妙に赤くなっていることに気が付く。

「どうしたんだい?いまさら私と一緒で恥ずかしいことなんてないと思うんだけど。」
「ああ……いえ、すみません。実際にそうじゃなくて……その……」
「うっ……それはそれで私もなんだか……それで、一体どうしたっていうんだい?」

一夜限りの関係だったとはいえ、共に過ごした日のことでシンが恥じらいを持っているわけではないことに、ヒルダは女として軽いショックを受ける。しかし彼女はすぐに気を取り直して、彼に改めて問いかける。

「いえ……あの2人を見ていると、どうしても思い出したりして。」
「ん?キラとラクス様がどうしたのさ。時間があるときはいつも一緒だろ。」
「そうなんですけど……あの日は、その……2人ともその、なんというか……」
「一体なんだっていうのさ。はっきり言わないと分からないよ。」

歯切れの悪いシンに苛立ちを募らせるヒルダ。彼は相手がヒルダだから気が引けるのか、あるいは異性だからなのか、そもそも口にするのが憚れるのか。それでも彼女に問い詰められ、彼ははっきりと声を上げる。

「い、一緒に海岸にいたんですよ!デスティニーで隊長とラクスさんを探していたら……ふ、二人とも裸になってて……!」
「なぁっ……は、は……はだ、はだぁっ……!?」

シンの言葉に今度はヒルダが顔を真っ赤にして、狭いコックピット内で大声を上げる。そして、操縦をしているシンに詰め寄り彼を激しく問い詰める。

「見たのか!?あんた見たのか!?ラクス様の……は、はだ……何も身に着けていないお姿をっ!?」
「遠目からだけですっ!近付く前に裸だったのに気付いて引き返しましたからぁっ!」
「やっぱり見たんじゃないか!しっかりと!裸だって確認したんじゃないか!シンっ、あんたって……あんたって男はぁっ……!」
「あがぁっ……あっ、苦し……ヒルダ隊長……し、死ぬっ、死ぬぅぅぅぅぅ……!!!」

パイロットスーツの襟部分を掴まれ、息苦しさを訴えるシン。その後しばらくの間、宇宙空間を移動するインパルスの動きは不安定なものとなり続けるのであった。

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