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吉野本葛

今日は一日雨でした。休みをもらって、かねてより関心あった「奈良の食文化 魅力発見フォーラム」行きを決行(聴講)しました。

奈良の代表的な三食材、①柿の葉寿司、②奈良漬、③吉野葛が取り上げられておりました。どれも魅力ある食材でなのですが、今回は、私も実際に見て、ちょっとびっくりした葛根(吉野葛)のことを書きます。

吉野は昔から葛粉の生産地としてつとに有名です。現代においても、「吉野本葛」は高級和菓子や日本料理に欠かせないものです。

ちなみに、「吉野本葛」の「本」は、葛粉の中でも特に良質なデンプンを使っているものの名称でしょうね。「白いダイヤ」ともいわれるそうです。

私にはあまり口にする機会のない高級食材・吉野本葛ですが、その背景にある歴史や伝統に、実は興味津々です。

その葛粉の原材料となる葛(葛根)を見たことがありませんでした。少なくとも記憶がありません。

それが今日、掘り出された葛根(砕く前)を、実際に見せてもらいました。

ぎょぎょ、でした。太い! でっかい!
つちのこ? 大蛇? 龍?

これでもまだ七、八年ものだそうで、小さい方らしいです。でっかいやつは、どんだけでっかいのか!

この葛根を砕き、井戸水によってデンプンのみ取り出し、「吉野晒(ざらし)」という伝統の作業を繰り返し、生葛を切り出します。不純物を包丁で丁寧に取り除いて、じっくり自然乾燥して純白の本葛ができあがります。

簡単に説明しましたが、もっと多くの工程があるのは間違いありません。時間の要る、大変な作業の繰り返しだということです。

吉野地方は、今では薄暗い植林の山々ばかりですが、昔は雑木林の方が多かったといいます。そういう山に自生する葛。その根から取り出すデンプンは、米のない山間地方にとっては飢餓に備える保存食でもあったのだろうと思います。

自生する山に分け入り、葛根を堀る作業は、とことん大変だったらしいです。そのことを今、想像を超える葛根の大きさを実見・確認(触った)したことで、ちょっと解ったような気になりました。

フォーラムでは食材としての葛にスポットを当ててましたが(テーマだから当然ですね)、私は、大蛇か龍のようにも見える、掘り出された葛根を思い出し、ふとあれは地中に長く眠っていた山の精霊なのかもしれないと思いました。山の民は山の精霊によって生かされる…。山の精霊をイタダク…原初、そんな自然な信仰があったのではなかろうかとも。

急に谷崎潤一郎の『吉野葛』を読み返したくなりました。


※見出し画像(白いダイヤ)はパンプから拝借しました。


2024.3.12