誤診の指摘にまつわる諸問題

以前Xで「ミスタイプしているアカウントをフォローする(判定は自分の主観的なもの)」という活動をしていたのですが、これが結構な反響がありました。アカウント始めてまもなく多数の人から「私のタイプを判定して!」とガーーッと来られて、なんだなんだと思いました。まあネタ垢と受け止められて、暇つぶしにはもってこいだったのでしょう。

私の活動を応援してくれる方もいれば、反対する方もいました。賛否両論です。また、私はMBTIの公式インストラクターの方にも意見していて、そこを評価してくれた方もいました。公式の知名度が上がったのはここ数年の話で、私はそれ以前にMBTIを知って他のユーザーと意見交換していたものですから、今になって公式云々と言われてもあまり響くものがないのですが、これからMBTIを始める人にとってはもう無視できない存在になっているのでしょう。あとは私の真似をしだすアカウントとか、逆に自認を肯定するアカウントなどが出現したりしました。


「他人の誤診を指摘する」

考えてみると、これはなかなか奥深い問題をはらんでいると思います。3つぐらいの領域にわたって問題があります。どういうことなのか、この記事ではそれを説明します。

1.認知、認識の問題

現状タイプを客観的に計る指標はありません。あるテストをやって、何点以下だったらTeは劣等、何点以上だったらTeは優位、とか、特定の行為をしているときにある脳波が検出できたらこのタイプと言える、とか、です。それがない以上どうやってもAさんの自認タイプは、私は自分をこのタイプだと思う、という自己認識の域を出ません。ここに「Aさんが思うAさんのタイプ」があります。それをここでは仮にENFPとしておきましょう。

そして「Bさんが思うAさんのタイプ」というのも存在し、この2つに食い違いが起こる可能性があります。Bさんの眼からはAさんはENTPに見える。なぜそういう事が起こるのかというと、まあ色々考えられます。例えば、お互いに想定しているENFP像が一致していない、というのがあるでしょう。AさんはENFPを喋りが達者でエンターテイナーの気質を持つ性格、と考えている。ところがBさんは、そういう性質があることは否定はしないものの、ENFPには案外根暗なところがある、という風に考えている。このように、お互いが考えているタイプ像に微妙に違いがあると、認識にズレが出てきてしまうでしょう。

しかし、お互いが考えているタイプ像が一致しているのにも関わらず、認識にズレが生じている、というケースもあるかもしれません。この現象の原因は、Aさんの自己認識がおかしい、或いは、Aさんは自己開示が足りず、Bさんが正しくAさんのことを認識できていない、或いは、Bさんは思い込みが強い人間で、少しの情報でAさんをこれこれこういう人間だと決めつけている、など、これもまあ色々考えられます。

これらの問題は、認知、認識の問題として集約できるでしょう。

2.公式/非公式の問題

冒頭でも述べたようにここ数年で公式の知名度が上がりました。私は公式を受講したことはありませんが、色々と情報を整理するに、公式には「誤診」という概念自体がありません。なぜなら公式は本人の「指向」というものを重要と考えるからです。本人がセッション内で、EとNとTとPを指向すれば、ENTPが本人にとってのベストフィットタイプになります。この指向にインストラクター側は口を挟みません。まあ挟まないと思います。

なので公式基準で考えた場合、誤診は存在しないのだから、誤診を指摘する行為自体がナンセンスである、という事になってしまいます。ところがユーザー全員が公式に則っているわけではありません。誤診指摘者、被誤診指摘者双方がそうであった場合、そこで行われるやり取りは何の規約にも接触していません。しかし被誤診指摘者が公式基準で考えていた場合、ディスコミュニケーションになることは不可避でしょう。

また、「誤診を指摘している時点でそれはもうMBTIではない」という見方もあるでしょう。ただ、この類型論の肝は(それぞれ意味のある)アルファベット4文字で16タイプに分類するところにあり、公式も非公式もそこは共通していて、大した差はないと私は考えます(ただ文字の意味が違っているという事でしたら話は別です)。

この、誤診を「ないものとする」公式の考え方には色々思うところがありますが、本稿の論旨から外れるので割愛します。これは宗派の問題と言い換えてもいいかもしれません。

3.コミュニケーションの問題

以前ある人とDMでやり取りしたことがあり、話していくうちにだんだんと相手の本音が聞けるようになったのですが、まあ出るわ出るわ誤診の指摘が、この人ISTPって言ってるけどINFJだと思うよ、とか、INTJって言ってるけどISFPにしか見えないな、ウン、などなど。この人表では全然そんなこと言ってないんですよ。全然思ってること言ってねえじゃねぇか、と思いました。

その時私はこう直観しました。「案外みんなこう思ってるんじゃないか?」

そう、そのはずです。思っているはずです。しかし言わない、いや言えない、なぜなら色々と問題が起こってしまうからです。向こう方が、誤診指摘受付中!、とオープンマインドであればこちらも言いやすいのですが、そうとも限りません。この、本当に思っていることをどこまで言うべきか、いや言わないべきなのか、というのは、コミュニケーションの問題として考えられるでしょう。


以上のように誤診の指摘には複数の問題がついてまわり、誤診の指摘に反対する者がいたとしても、それがどの立場からの主張であるのか、なかなか判然としません。

  • お前の認識より自分の認識が正しいのだから間違っている(1.認知、認識の問題)

  • 公式上誤診は存在しないのだから指摘すること自体がおかしい(2.公式/非公式の問題)

  • 関係性に亀裂が入るからやめろ(3.コミュニケーションの問題)

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