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ヴィブラートは技術ではない

ヴィブラートの掛け方に関してはなぜかヴァイオリン界隈では
非常に活発に議論される荒れる話題なのですが
不思議な事に他の楽器ではさほど話題に上がりません。
近い距離にいるチェロですらそうでもないです。
ギターはフレット楽器なので少し事情が違い
クラシック式の縦ヴィブラートとフォーク式の横ヴィブラートがありますが
そこでも掛け方論争になる事はあまり無くドッチでもいーんじゃん?
みたいなトーンです。
ところがヴァイオリンだと指で掛ける派、手首で掛ける派、肘で掛ける派
みたいに様々あってよく議論になってたりします。
ちなみに私は手首でしか掛けられないですがそれで困った事は有りません。

昭和の時期にヴァイオリンを習った人達であれば
皆さん経験していると思いますが
ヴィブラートの掛け方を教わった人って居ないと思うんです。
「掛けて!」「揺すって!」コレぐらいだと思います。
私の師匠はヴィブラートは技術ではなく表現だから
自分で考え好きに表現すればいい。という考え方だった気がします。

ヴァイオリンは弦楽器の中では極端に弦長が短く
ミリ単位動かすだけで大きく音程が変わりますし
フレットも無いので一番ヴィブラートが掛かりやすい楽器だと思います。
それゆえ色々な掛け方が存在してしまい議論になるんでしょうか?

私のジュニオケ時代の思い出ですが
ジュニオケではヴァイオリンを幼少期から習っていた子が教え役
入団時に初めて楽器に触る子が生徒になるので
私は数々の後輩にヴァイオリンの持ち方から教えてきたんですが
後輩で入ってきた幼少期から始めたとても上手い子が居たので
その子にはノーケアで何も教えず好きにやらせていたんです。
私に教えられる事は何もなかったんで。
そして私が卒業前の最後の演奏会の時でした。
今日で皆さんとお別れになりますよ。良い演奏しましょうね。
というタイミングでそのとても上手い後輩がとても思い詰めた表情で
「先輩!最後に私にヴィブラートを教えてください!」って言われて
とてもビックリしました。
え?今まで掛けてなかったの?全然気づいてなかった。
とても上手いじゃん。掛けてなくてもめちゃくちゃ上手い。
その後輩も自分の習っていた環境では特に教えてもらってなかったので
正解が分からず怖くて掛けられなかったらしいんです。
しかしその正解がわからないのは私も同じです。
ただ私の場合は自分で好き勝手に掛けてただけです。
結局たいした事は教えられず「掛けて」「揺すって」
「掛かってるからそれでイイんじゃん?」
これぐらいしか言えず、全く気の利いた事が言えませんでした。

でもそんなものなんじゃないかな?テキトーに揺すっていく中で
自分にあった好きな表現が見つかれば。それで良い気がするんです。

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