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新型コロナウイルスの影響でグランプリは延期中止が続いており、時々、過去の記事を再録しています。これは7年前に自身のホームページ(現在休止中)にアップしたコラムにやや手を入れたものです。イタリアGPが行われるムジェロについて書いています。これからもいろいろアップしていきますね。スキとサポート、よろしくお願いします。

「大好きな一枚」

 インターネットの時代になって、記事を書いたり、写真を撮ったりという仕事は、大きく様変わりしてしまった。その日のことはその日のうちに・・・という仕事がどんどん増えて、当然、仕事を終えてプレスルームを出る時間も、どんどん遅くなっているのだ。

 これはイタリアGPの決勝日の夜に撮した一枚である。仕事を終えて、プレスルームからパドックを見おろす高台の駐車場に向かって歩いている途中、パチリと撮した。時間は午前0時を過ぎていたが、決勝日としてはかなり順調に仕事をこなし、月曜日もムジェロに滞在するので、明日出来ることは明日にしようと、いつもより早いけれど、残っている10人くらいの仕事仲間に、「ごめんなすって」と、席を立ってきたのだ。

 グランプリを転戦するようになって23年目を迎える。「好きなサーキットをみっつ」と言われたら、鈴鹿とオーストラリアのフィリップアイランド、そして、いまいるイタリアのムジェロを挙げることになる(これに、いまは2輪のグランプリは開催されていないが、ベルギーのスパフランコルシャンを加えたら完璧)。

 このみっつのサーキットに共通しているのは、最近流行のストップ&ゴーではなく、コースレイアウトが中高速コーナーが連続するオールドスタイルだということ。そして、偶然なのかも知れないが、そういうサーキットはロケーションも素晴らしく、そういうコースを駆け抜けるバイクやクルマを見るのが、僕は大好きなのだ。

 ムジェロで開催されるイタリアGPは、熱狂的なイタリア人たちが大騒ぎをする。木曜日の夜からサーキットを取り囲む山にテントを張って、たき火をする。エンジンが壊れちゃんじゃないかというくらい、ぶぉんぶぉん回転をあげて、楽しんでいるのか、ストレスを発散しているのかわからないような大爆音を出し続けている。ムジェロのパドックは、小高い丘に囲まれているので、その光景はまるで、西部劇のワンシーン、インディアンに取り囲まれた騎兵隊の陣地を思い浮かべてしまうのだ。

 もう10数年も前のことになる。スペインのバルセロナからイタリアGPの開催されるムジェロまで1600kmを一気に走り抜けて、木曜日の朝の4時頃にこの駐車場にたどり着いた。朝6時。陽が上がってきたころに、当時ヤマハのエースで、早起き名人で朝早くからスクーターを乗り回していることで知られているマックス・ビアッジが、噂通りに、寝静まっているパドックを徘徊していた。もうひとり、日本人選手で早起き名人だったとーるちゃんこと宇川徹が、やっぱり、噂通りに早起きして、モーターホームの周りを掃除していた。うっわー、噂って本当なんだと思ったことがあって、そんな懐かしい思い出が、ふと、蘇ってきたのだ。

 オランダ、ドイツ、イタリアと続いた3連戦。グランプリはこれからアメリカへ舞台を移し、ラグナセカ、インディアナポリスの2連戦となる。パドックからは輸送用のボックスに詰め込まれたマシンや機材が、トレーラーに積み込まれて空港へと向かっていった。これから一ヶ月の休みになる各チームのケイタリング部隊は、3連戦の疲れなのだろうか、ノンビリと撤収作業を行っていた。

 それにしても、日曜日の午前0時にこんな写真を撮れるなんて、かなり、珍しい。というのも、普通、この時間になるとパドックのホスピタリティもかなり解体されているからだ。

 今年は静かなムジェロだった。スーパースターのバレンティーノ・ロッシが活躍しないと、ムジェロも燃えないのだということを、実感するグランプリだった。

 それにしても、いい写真である。というか、ここから見るムジェロが、僕は大好きなのである。

○・・・ムジェロで開催されるイタリアGPは、レースが終了するとコース上に観客がどっと押し寄せてくる。サーキットのほとんどがバレンティーノ・ロッシのイメージカラーとなっている黄色に染まります。この原稿を書いた年はロッシは表彰台に立てませんでしたが、ロッシが表彰台に立つとこうして”バレ”コールがいつまでも止むことはありません。

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