ブラッシュアップ中学生

 インスタに中学時代の同級生からフォローリクエストが来た。全く覚えていないが、特徴的なふくよかな体型をしていたことだけ記憶していて、私にしては珍しく顔と名前は一致した。別にフォロリクなんて誰にでも通しているんだから、特別こいつだけ締め出す理由もなく、何も考えずに通した。

 DMがきた。フォロリク通してすぐにDMなんて私に特に用事があるわけでもあるまいし。中学卒業からすでに5年ほど経っている。

元〇〇中?
はい。髙瀬です。
あー、あの可哀想な笑

当時いじめられていたので、グサっときた。
わー黒歴史だ、と言って会話が終わるかと思っていたが、そのあとは無意味にチャットが続いた。いいねをして終わらせようにも、「いいねってどういう意味?」とかいうめんどムーブをかましてくる。こいつ、そんな奴だったのか。私が自撮りをハイライトに載せているので、垢抜けたね、とかも言い出して、まんざらでもないなと思いながらやはり面倒臭い奴だった。

 「あの可哀想な髙瀬」

 あー、私ってそうやって記憶されてたんだ。そりゃそうか。だって可哀想だったし。いやでもうーん、当時面識のない奴にまでそうやって記憶されているのは非常に気持ち悪い。今すぐ元〇〇中の同期の私に関する記憶を塗り替えたい。

 中学生をもう一度やり直せばうまくいったのだろうか。

 まずは、身だしなみを整える。バレない程度の軽いメイクもする。もちろん直さずに登校していた寝癖はきちんと整え清潔感を出す。
 その捻じ曲がった自意識を俯瞰し、押し曲げ無理やり直線にはできずとも、もう少し上手く付き合っていく。
 世界の全てを敵対視せず、程よく友達を作る。「人に興味がない」だなんて厨二くさいことは言わないほうが身のためである。
 異性との付き合い方に気をつける。同性と同じテンションで絡んでいると変な噂にされる。中学生にとってはそのジェンダー感は早すぎたようだ。大学生になっても難しいため、中学生の時は少なからず周囲からの目線を気にして生きていた方が自分にとって害を未然に防げる。
 ラノベ読んでることにキモいアイデンティティ感じない方がいい。ライトなノベルだ。別に特別なことはない。
 いかにアニメ漫画知識を携えていたところで中学校社会における価値には変換してもらえない。社交性をもう少し、いや今でもこれは難しい。

 もう一回やり直せば、はるかに上手くいくような気もしていたが、現実はそう甘くないようにも思えてきた。少なくとも、身だしなみや清潔感に関しては改善できると思うので、一週目よりはよっぽどマシな中学生活を送れるだろうが、どこかで「あいつ変だよね」と言われるであろうことは避けられない。が、社会に馴染むことにどこまでも不完全であることは私の個性なのでそこは抹消する必要もなければそもそも不可能であるので諦める。少なくとも少し見た目に気をつけてさえいれば、私の「可愛さ」である程度の奇行は許されるので、第二週目でまずきにすべきなのはやはり外見である。

 やり直すのなら、一人だと心許ないので、今でも付き合いのある唯一の友人とやり直したい。二人で同盟を組み、あの戦社会で生き延びる。ホームの内側の黄色い線スレスレにたっていつまでも踏み出せないでいたあの3年間をやり直す。今度は、クラスの打ち上げの中の上くらいの順番で呼ばれるくらいには存在感を持ちつつ、あの3年間を楽しかったと言いたい。みんなの記憶には少なくとも「可哀想」から「ちょっと不思議ちゃんだったよねー」くらいで薄ーく残りたい。卒業式の最終日にはスマホを持ち込んで、友達と自撮りをして終わりたい。卒業式にスマホ持っていいだなんてほんと誰が言ってたんだよ…。
 

 

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