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【スーパーマリオRPG】感想 ジーノの願った未来は27年後に

いつものようにクッパにさらわれたピーチ姫を助けるため、
いつものようにクッパ城に乗り込んだマリオは、
いつものようにクッパを倒してピーチ姫を救い出す。
しかし、そこから先はいつもと同じ展開ではなかった!
突如クッパ城に突き刺さった巨大な剣、吹き飛ばされるマリオ達、空から降り注ぐ流れ星…
マリオの新しい冒険が始まる…!

いつも通りのシナリオから、いつもと違うシナリオへ。
マリオRPGそのものを表すおしゃれで画期的な導入でした

わたし生粋のゲームオタクなんですけど、わたしをゲームオタクに仕立て上げた人生ナンバーワンゲームが存在するんですよ。そのゲームの名前はスーパーマリオRPG。スーパーファミコンというめちゃくちゃ古いゲームで、27年前に存在した神ゲーです。そしてわたしはマリオRPGの信者を、人生単位で続けてきました。

そのスーパーファミコンで発売されたゲームが、27年越しにリメイクされることが2023年6月のニンテンドーダイレクトで明かされました。ニンテンドースイッチにてグラフィックを一新して発売されるゲームの名前もまた、スーパーマリオRPG。普通リメイクやリマスターの時ってタイトルを多少変えることが多いと思うのですが、マリオRPGに関してはタイトルを一文字もいじることなく発売が決定されました。
当記事では、ニンテンドースイッチで発売されたリメイク版のスーパーマリオRPGについて感想を書いていきます。
プレイ時間20時間弱、ネタバレあり感想です。


なぜマリオRPGのリメイクはスゴイのか


マリオRPGのリメイク発表はちょっとした事件でした。ファンはみんな驚き動揺して涙しました。わたしもこれ以上ないだろうくらい驚き感動し、誇張抜きで声を上げて号泣しました。
いやなんでそんな騒ぐの?大袈裟じゃない?これだから信者は…と言われても仕方ないのですが、これだけファンが涙を流して喜んだのも仕方のないことなのです。その理由を語るには、マリオRPGの出自が特異であり、一時期黒歴史のように扱われていた過去に触れなくてはなりません。
マリオRPGのゲームそのものとは関係のない内容ですが、わたしの主観における今に至るまでのマリオRPGの歴史と経緯を書き記します。

マリオRPGの発売と二社の決裂


スーパーマリオRPGは1995年にスーパーファミコンで発売されたゲームです。開発は任天堂とスクウェアの共同開発。スクウェアは、当時ファイナルファンタジーやクロノ・トリガーといった数々の名作RPGを打ち出してその時代をときめく企業の一つでした。そんなRPGの総本山といえるスクウェアと共同で開発されたゲームとは、ストーリー性やキャラクター、世界観設定が練られた異色のマリオ作品だったのです。
異色ではある一方、マリオRPGは完成度の高さからプレイヤーの心を鷲掴みにしていきました。アクションとRPGの融合した新鮮で完成度の高いゲーム性、コミカルでテンポの良いユーモア溢れる展開と、マリオ作品にして異色のストーリー性の高さ、おもちゃ箱のような立体感の美しいグラフィック、奇妙で愛らしいキャラクターと世界観、楽しいも熱いも面白いも切ないも全てを彩るBGM、耳に残る小気味の良いSE…どこを切っても質の高いゲームだと思います。今に至るまで、ファンが長年絶賛してきた傑作でした。
そうしてゲームとしては多くのファンを生み出した一方、開発した二つのゲーム会社の間には不穏な空気が流れていました。マリオRPGが発売して間もなく二社の仲は決裂し、険悪な関係となってしまいます。その後しばらくお互いが干渉することはないまま、その二社の共同開発であったマリオRPGという作品は文字通り黒歴史として、まるで存在しなかったかのように扱われていくのです。
二社の仲違いの原因の真相はわかりません。ゲームハードの競争、ゲーム開発や会社経営への考え方…諸説ありますが、この件について長年謎のままでした。それがあるとき、2020年にもなって、スクウェア・エニックスの和田元社長によりとあるnote記事が公開されます。わたしが知る限りでは、この記事が最も当時の状況をよく知る人物による最も真相に近い内容ではないかと思います。当時二社の間に何があったのか?より当時の臨場感を知りたい方は、是非和田さんの記事をご確認ください。
https://note.com/waday/n/n27fb1b6a2838?sub_rt=share_b
この記事を読んだときは本当に心底から感動しました。子供心にわけもわからないまま勝手に黒歴史のように扱われたあの頃では、考えられない大事件です。時代の移ろいとインターネットの偉大さを感じました。このような貴重な話をまとめていただき、和田さんには感謝の気持ちでいっぱいです。

関係の修復


和田さんの記事の冒頭にもある通り、二社の関係修復の記念碑的な存在であるファイナルファンタジークリスタルクロニクル(FFCC)というゲームが、ゲームキューブにて発売されます。任天堂のゲームハードにファイナルファンタジーの新作が発売される。このゲームの発売はまさに、マリオRPGファンにとって最初の希望だったように思います。わたしはマリオRPGからスクウェアを知り、ファイナルファンタジーシリーズも好きだったので、当然FFCCの発売には喜びました。特にこのゲームはシリーズでも最もわたしの好みの世界観をしていて、牧歌的な雰囲気とクリスタルや水の表現に代表される透明感の美しい作品です。これ以上に美しいゲームもなかなかないです。大好きなゲームなので、どこかで語る機会がほしいですね。
FFCC発売を契機に、二社の関係は修復された様相を見せ始めます。任天堂ハードでスクウェアの作品が発表されることはもちろん、コラボ企画も発表されていきました。黒歴史扱いされていたマリオRPGにも変化が見られ始め、ついにはWiiのバーチャコンソールが発表されたりと、過去の名作として表舞台に姿を現し始めました。黒歴史から少しずつ前進していく当時のライブ感は、当時でしか味わえなかったかなと思います。

自前で用意できる画像がパッケージしかなかった…!
FFCCは透明感の最高に美しいゲームです


二社の関係修復には、少なからずスマッシュブラザーズシリーズが関係していたようにも思います。FFCCが発売されたゲームキューブにおいて、FFCCより前に発売されていたスマブラDXでは、プレイヤーネームをランダムにするとマロやジーノが出てくることがありました。当時はまだマリオRPGの黒歴史扱いの真っ最中でしたので、このようにただの文字とはいえゲームのなかで扱われるのは異例だったと思っています。わたしはこの時から、マリオRPGの不遇をスマブラならなんとかしてくれるんじゃないだろうか…と淡い期待を抱いていました。恐らくスマブラにジーノ参戦を望んでいた人たちの中にも、一定数そういう発想だったひとがいたんじゃないかと思います。
スマブラSPでは、満を辞してスクエニの人気キャラクターのクラウドの参戦が発表されました。もちろんこの時点で任天堂とスクウェアの仲違いの件は修復されたと確信を持てる段階になりましたし、更にMiiコスチュームとしてジーノも発表されました。こちらも当時としては大事件で、かつてはジーノというテキストが出ただけでも感動ものだったのに、ついに大々的な形で任天堂公式にジーノが取り扱われたのです。このときはわたしもテンションが上がってゲーム雑誌を買ってスマブラシリーズを手掛ける桜井さんのインタビューを読んだりもしました。ジーノは参戦の要望も多く自分としてもなんとか叶えてあげたかったが、こういった形に落ち着いたような旨が載っていたと思います。あの黒歴史真っ只中のスマブラDXの時にテキストとはいえマリオRPGの小ネタを取り扱ったスマブラの桜井さんの言葉には、説得力を感じました。(念のため、桜井さんが意図して入れたかは不明です)
スマブラには後にクラウドの宿敵であるセフィロスの参戦も発表されたりと、もはや二社の間に確執があったことは過去の出来事であると語って差し支えないようなゲームとなりました。二社の関係を急速に回復させた要因として、きっとスマブラの存在は大きかったのだと思います。桜井さんには心からの感謝の一言です。

リメイク発表へ


マリオRPGファンがスマブラに期待を寄せていたのは、ある思いの裏返しでもあったのではないかと考えています。それは、「今後スーパーマリオRPGという作品が新規で発展することは見込めない」という固定観念です。作品は一作で完結しており、共同開発ゆえに利権関係も複雑で、あの独特の雰囲気を作り出すのは困難でもある。だからマリオRPGの新規の発展性として、スマブラは非常に可能性のある存在だったのです。
だからこそ、2023年6月、スーパーマリオRPGの「リメイク」が発表されることなど、ファンが本当に望んだものでありながら、ファンにとって最大の盲点でもあったのです。まさかあの任天堂が、スーパーマリオRPGのリメイクを制作しようと考えるなどと。
リメイクのマリオRPGの初報は完璧でした。ファンが何十回と見たマリオRPGのオープニングのピーチが花畑で遊んでいるシーン、それを見てマリオRPGを望みながらこれ以上の発展はないと思い込んでいたファンはニンテンドースイッチオンラインにマリオRPGがやってきたと喜びます。(今思えばこれめっちゃおもろい)そこに突如現れる謎の光とともにムービーは一転し、最新のCGで同ムービーが流れるのです。リメイクなんて絶対にあり得ないと、明示的でなくても心のどこかで固定観念を抱いていたファンほど、驚き混乱し感動したということになります。
既プレイヤーなら分かる通り、ムービーを一新させリメイクを伝えにきた謎の光はジーノです。スターロードからやってきたジーノが27年越しにファンの願いを叶えにやってきたという粋な演出なのです。
ここまでの演出全て、長年のファン感情を逆手に取った演出なのは目に見えて明らかです。ファン心理を理解していないとこの演出はできません。このムービーそのものに、最初から開発陣の作品への愛を感じました。自分の好きなゲームのリメイクや続編って発売前に不安になることもよくあるのですけど、それゆえに今回のリメイク作品には一抹の不安も抱かなかったのです。

かくして、27年越しにスーパーマリオRPGはリメイク作品として日の目を浴びることが叶いました。わたしは本当にこの機会を待ち続けて、ずっと二社の関係修復やマリオRPGが再び表舞台に出てくる過程を追い続けていたんだなと改めて思います。そういった、いわゆる思い出や思い入れが涙に繋がるのも、わけはありません。そして、心のどこかであり得ないと決めつけていたリメイク発売となり、月並みですが案外夢って叶うもんだなあと思いました。
原作、そしてリメイクの製作に至る過程に携わった全ての人に感謝したいです。

スーパーマリオRPGの感想

長々と語りましたが、一応この記事の本題はゲームとしての感想語りなので、ここからはゲームの話をしていきます。

良くも悪くも原作そのまんま


初報時点でわかっていたことですが、マリオRPGリメイクは信じられないくらいに原作まんまです。
同じようにスーパーファミコンからニンテンドースイッチの代でグラフィックを一新してリメイクされた作品の一つに、これまたスクウェアから発売されたゲームの聖剣伝説3があります。聖剣3も大好きな作品だったので喜んでリメイクも遊びましたが、非常に完成度の高いリメイクでした。(別の機会で語りたい…)こちらの作品はリメイク作品のお手本のようなゲームで、原作をそのままにグラフィックやシステムを現代風にしたものであり、マリオRPGリメイクはこちらに比べると最新機で当時の名作を遊べるという感動は薄かったように思います。

聖剣3のリメイク、聖剣伝説3 Trials of Mana
上は聖剣伝説コレクション、下はリメイク。
原作には原作の良さがありますが、
リメイク作品として原作をそのままに、かつ、
求められたものを尽くした
100点満点の出来ではないでしょうか

マリオRPGのリメイクはグラフィックこそ一新されましたが、マップの形や規模感、クォータービューの視点など、原作プレイヤーは秒で「そのまんま」であることに気づくほどそのまんまです。上記で長々語った通り、ファンを通り越して信者の域に足を突っ込んでいるわたしにとっては全てが感動的ですが、ひとによってはリメイクとしての物足りなさを感じてもおかしくないと思います。実際、プレイしてもほぼ全て原作そのまんまを最新作にしたという印象は変わりませんでした。残念ながらわたしは信者のため、マリオRPG初見プレイヤーがどう感じるか、自分ほど思い入れのないひとがどう思うかを、第三者の視点で考えることはできませんでした。同じ考えの人はたくさんいたと思いますし、だからマリオRPG評価者は口を揃えてこういうフレーズを使っていたと思います。
「良くも悪くもそのまんま」

クォータービューの視点、マップの作り、規模感、演出、テキスト…どれをとっても完全な原作再現

良くも悪くもそのまんまなマリオRPGについて、まずは原作そのまんまの良さについて語っていきます。
原作のスーパーマリオRPGがなぜこんなに人気があるのか?わたしは第一にテンポの良さをあげていますが、二番目くらいには小ネタの多さをあげるかなと思います。今でこそインターネットの発展によってマリオRPGの小ネタは有名になり、大してやり込んでいなくても小ネタの全容を知っているひとは多くなりました。大きいところでは隠しボスクリスタラーの存在から、ひまんパタこうらの存在や入手方法、スーパージャンプ100回のクリア特典、隠し宝箱のクリア特典(特典…?)、何考えてるののテキスト、フィールドに隠されたアイテムや特定の条件下でしか発生しないイベント等々、今だからこそ「知っている」ひとが多いと思いますが、当時は無限に思えるほどあまりに細かい小ネタがこのゲームの中に詰め込まれていたのです。なんなら今やっても新しい小ネタを見つけるくらいだと思っています。今だからこそ有名ですが、キノコ城の隠し宝箱を自力で見つけた子供がどれだけいたでしょう?ひまんパタを自力で手に入れた子供がどれだけいたでしょう?ノーヒントではプレイヤーが全部追い切れないほどに詰め込まれた小ネタを、網羅して完全再現しているのがスーパーマリオRPGリメイクの凄さなのです。

恐らく一番有名なキノコ城の隠し宝箱。原作では他の扉と変わらない見た目であり、逃すと二度と手に入らないという鬼畜仕様で有名でした。
ユーモアだけの要素である隠しコマンドもきっちり搭載
最強装備ひまんパタこうらの入手のプロセスもヒントの少なさもそのまんま。原作でこれに自力で気づけたの、自慢です

マリオRPGの一番の魅力はテンポの良さである…とはフライングで語ってしまいましたが、リメイクでもテンポ感の良さや小気味の良い会話は健在でした。テキストにもほとんど変更がなく、おもちゃみたいなキャラクターたちのショートコントのような会話劇が繰り広げられます。マリオRPGは20時間かからずクリアできるくらいのボリューム感のため、現代の作品としてはかなりあっさりと終わってしまうところも、ひとによってはかなり気にかかる要素だったと思います。一方で、世界一周し様々なフィールドの景観と冒険を楽しみながらシナリオの起伏を楽しんでいく、原作のテンポ感の良さを維持するためには、やはりこの規模感でなければ難しかったのではないかと思います。マップを冗長にしたり、現代風に頭身をあげたり、そういうリメイクも素敵ですが、マリオRPGに限っては最大の魅力であるテンポ感の維持のためにも、原作のコンパクト感が必要だったのではないかと思うのです。

いつもどおりクッパと戦う導入も、テンポが良い上に展開や演出がおしゃれでド派手なのが美しい
テンポ感の良さは導入が特に光る。いつも通りからいつもと違う冒険へ、数分の展開で表現してしまう
リップルタウンから先は秘境の地へ。
冒険している感がたまらない
コメディリリーフもそのまんま。展開とテキストのテンポが良すぎる
世界を一周して、仲間たちと始まりのクッパ城へ。
ここに来るまでに、街を回って森を抜けて海へ向かって雲に登って…テンポよく冒険の思い出が詰め込まれている


原作からアレンジされた要素


現代風にリメイクされたグラフィックやBGMを楽しめるのが、リメイク作品の醍醐味ですよね。グラフィックに関しては、原作でも当時高水準のドット絵だったために今見ても美しく味のあるグラフィックだったと思います。ではマップの規模感やカメラが原作そのまんまの当作品では、その感動は薄れるのかというと、もちろんグラフィックにはギャップがあるほど驚きがあることには間違いがありませんが…、それでも当時表現できなかったものが表現できている感じがしてグラフィックの変化も非常に楽しめました。全体的にマップのファンタジックな印象が強まっていて、煌びやかなグラフィック好きなわたしとしては大満足です。

平和になったローズタウンは、花が咲き誇る美しい街でした!こういうのがリメイクの醍醐味だよね〜!!
シナリオの要所にはムービーが差し込まれました
個人的にはワイン川のグラフィックがファンタジー感マシマシで最高でした。BGMも相まってより楽しくてファンタジックなディズニー的な雰囲気に…!
ここはムービーにせんでも良かっただろww
正直ピーチからのキス余裕だと思ってたのもあってめっちゃ笑いました

あとはなんといってもBGMですね。下村陽子さんの手がけたオリジナル楽曲も、そのどれもが素晴らしい作品で、マリオRPGにある冒険の楽しさを彩るに相応しいBGMでした。今回のリメイクの話が出てから、間もなく下村さんが全ての楽曲のアレンジを手がけることが発表されて、この時点でわたしの中ではまだ情報も出揃ってないのにリメイクとして100点満点だな…と確信したくらいには嬉しかったです。
リメイクではオリジナル楽曲と切り替えができたり、クリア後にはアレンジもオリジナルも聴くことができるミュージックプレイヤー機能を搭載していたりと、BGM周りは至れり尽くせりでした。やはりリメイク製作陣はファン心理をめちゃくちゃに理解しちゃっているので、BGM人気も理解して手厚くしてくださったのでしょう。
本当に好きな曲ばかりなので語り尽くせないのですが、有名どころの森のキノコにご用心は2ループ分アレンジされているほどの力の入れようで、後半のアレンジのバイオリンの音色が原曲のリズムに収束していくところなんかは、ただただ曲に感動して涙が出てくるほどでした。神秘的で抒情的で大好きな楽曲です。
あとはグラフィックでも名前をあげていたワイン川くだりのBGMなんかは、カントリー調がより強調されてさながらスプラッシュマウンテンに来た時の高揚感を味わえて最高でした。
個人的にはカジオー戦アレンジも最初に聞いた時にぐっときた曲でした。オルガンの盛り上がりの部分なんか迫力があって、それまでのどこかコメディタッチなマリオRPGの雰囲気から一変してシリアスで重厚な雰囲気になるラスボス戦を彩っていたと思います。
そして一番楽しみにしていた曲がエンディングの「さよならジーノ…星の窓から見る夢は」だったのですが、やはり美しくて暖かくて、BGMで泣いてしまいました。わたしはゲームBGMが好きで、今まで遊んだゲームにもたくさんのお気に入りBGMが存在するのですが、もしかしたらこの曲が一番好きな曲かもしれません。ジーノが初めてやってきた時に流れる、おもちゃが動き出す時の可愛らしいリズムから、感動のフィナーレに相応しい優しくて穏やかで美しい曲になって…これから先もずっと聴いていたい、そんな曲です。サントラ、出てくれ…

仲間との別れの場面の盛り上がりと、平和になったマリオワールドの住人の幸せを空から覗いているような、そんなエンディングのストーリーを彩るBGMです。

改変、追加された要素

マリオRPGは良くも悪くも原作そのまんまである。散々語ってきましたが、ゆえに逆に追加された要素には何かしらのメッセージ性を感じています。原作の時点で完成されているからあまり手をつけたくない意図も感じつつ、それでも改変や追加をした部分があるというのは、それぞれに大きな意味があるんだと思うのです。
ゲームとしては、個人的にはアイテム欄の仕様変更が一番良い改変だと思いました。原作のいちいちアイテムを捨てる面倒くささから解放されたのも大きいですし、アイテムに勿体無い思いをせずに済むようになりましたし、逆に難易度調整になっているところも面白いなと思いました。ふっかつドリンクは6個まで、とかね!原作のメニュー画面はなんとなく独特な表示も多かったと思うので、メニュー画面の使い勝手も良くなったと思います。
あとは単体魔法にアクションコマンドが効くようになったのもすごく良い改変でした。魔法技でいちいち退屈するよりも、単体ならワンチャンにかけられる方が絶対面白いですよね。原作でもテンポのいい技は無駄と分かりつつボタンを押していたりしたので、あまり大々的に広報されませんでしたがすごく良かったと思います。追加ボスの中には、これありきのボスもいましたしね…!
あとはバトル中の入れ替えも大きな改変要素でした。最初は難易度がぬるくなるのでは?などの懸念もありましたが、これも見事だったと思っています。入れ替えがあることで、強敵と戦うときは総力戦になったりと、原作では固定だったパーティメンバーをいろいろ試せるようになり、単純にいろんなキャラクターを動かす楽しみが増えました。あとは、これに関しては後述しますがパーティメンバーの絆の強調としても一役買っていたと思います。
そして今作、最も大きく扱われた追加要素といえば3人技の追加だと思います。3人で力をあわせてド派手な技をぶちかまそう!というコンセプトで、実際ムービー付きで演出はド派手です。これだけで、まずは演出を見るためにもパーティメンバーを取っ替えて遊びたくなる魅力がありました。3人技は攻撃だけではなく回復やバフなんかも使えるので、戦術になるところも面白かったです。特に追加ボスのような強力なボスと対戦する時は、攻撃系より回復やバフの方が優先度が上がったりするのも面白かったです。クリスタラー戦終盤は相手にどんな事故技があるのかわからなかったので、クッパジーノで戦って何かあった時のためにピーチマロを待機させる…みたいな戦術なんかがとれました。

3人技の追加、一見すると単純なゲーム性の向上のために用意されたものだと思っていました。しかしゲームを実際にやっていくと、ゲーム性の向上だけではない追加の理由があったのではないかと感じました。それが、マリオRPGのリメイクにおいて追加されたシーンやテキスト、演出に共通するもの、「パーティメンバーの絆」の強調です。

追加要素に見るパーティメンバーの絆

なるべく原作をそのまんまに、そんな意図を感じるマリオRPGリメイクですが、その中で追加された要素や演出やテキストからはパーティメンバーの絆を強調した部分が随所に見られます。
一番の目玉である3人技の追加については、3人で協力して強力な技をお見舞いするという説明文からわかるようにまさに仲間の絆の技になります。演出としてもコマンドを押すと3人で顔を見合わせて力強く頷く描写もあり、まさに仲間たちが心を通わせ協力する技であることがうかがえます。

原作でも突然コマンド封鎖バトルを仕掛けてくるユミンパ。リメイクでは、そこから更に原作にない展開が続く
全コマンドを封鎖されたマリオたちに、3人の力をあわせた技の新コマンドが解放される。初めて3人が揃った戦闘で、この展開になるのは、原作からこの展開を想定していたんじゃないかと思ってしまうくらい美しいハマり方でした

仲間の絆を強調している追加要素は3人技だけではありません。上記に書いた戦闘メンバーの入れ替えに関しても、3人だけでなく5人総力で戦うという印象が、ゲーム内の展開だけでなくゲームシステム面で伝わってきたかと思います。
また、ゲーム内の追加シーンや追加テキストはそう多くないのですが、仲間同士で会話するシーンが増えました。例えばクッパ城の見える丘では、原作ではマリオが気合を入れるだけなのですが、リメイクではパーティメンバー全員の会話と、全員で顔を見合わせて頷くシーンが追加されました。

クッパの話を熱心に聞く一行、そして
クッパ軍団の一員となったメンバーには優しくて熱いクッパ

スターピースを手に入れる演出も、パーティメンバー全員で喜ぶ汎用ムービーに切り替わりました。個人的には、リメイクの汎用ムービーよりも、原作の場面に応じて表現の変わるスターピースゲット演出の方が好みではあるんですけど、ここで汎用ムービーにして全員で喜ぶ描写を追加したことには、やはり絆の強調の意図があるのではないかと感じるのです。

ニコニコのジーノが可愛い

レベルアップの演出も、原作では一人ずつドカンから出てくるだけだったのですが、リメイクではがらっと変わってレベルアップしたメンバーをみんなで踊って喜ぶ演出となっています。このダンスが緩くてめちゃくちゃ可愛くて、何度でもいつまでも眺めてしまう魅力がありました…。
レベルアップ演出は特に、なるべく原作そのままのはずの今作において、手を入れる必要がないところにあえて手を入れた印象のある要素です。レベルアップの都度、全員出てきて全員で楽しく祝う光景を見ることで、テキストや展開の新規追加がなくても、5人の仲の良さが感じられることになったのではないかと思います。

みんなのゆるいダンスが可愛い…

マリオRPGは良くも悪くも原作そのまんまのゲームです。そんな中で、なぜパーティメンバーの絆を強調する要素を増やしたのでしょうか。単純に原作では要素が薄かったので追加したとも思えます。ただ、個人的には、恐らくこれらの追加要素の全てがエンディングで収束したんじゃないかなと思うのです。

ジーノの願った未来は27年後に


エンディングの展開そのものは、原作と同じです。スターピースを集め終えたジーノは、元の姿に戻ってマリオたちとお別れします。そしてスターロードは修復され、平和を取り戻した世界でマリオたちはそれぞれの日常に戻っていく…という、ちょっとだけ切なくて、最高に優しくて美しいハッピーエンドとなっています。
わたしは、このエンディングの最後に追加されたムービーで一番涙が出ました。パレードの終わりに、マリオとピーチに挨拶に来るジーノ、ここまでは原作と一緒です。リメイクでは、更にマロとクッパもやってきて全員が集まります。集まった5人は全員で花火を眺め見て、そして集まったみんなにお別れを告げ、ジーノは空へと帰っていきます。このムービーに、わたしはジーノが望んだものの全てが詰まっていたように思いました。
原作でもジーノはラスボス前に、仲間との別れを予感して名残惜しそうにしているセリフがあります。スターピースが集まった後は別れも言わず自分の仕事を成し遂げるため、元の姿に戻り帰っていきます。マリオに一瞬だけ見せた名残惜しんでいた気持ちは、心のうちに秘めたままだったでしょう。
あのとき名残惜しく思っていた気持ちがジーノの抱いた唯一の願いだとしたら。その願いは、27年の時を経て発売されたリメイクで、自分との別れのために集まった仲間と優しい素敵な時間を過ごす未来となって実現したのではないでしょうか。わたしは、リメイクで追加された仲間の絆の強調が、このラストシーンに帰結しているように思えてならないのです。

もうマリオRPGには発展性がないと思っていたかつての自分がありました。それが27年かけて、スーパーマリオRPGにはまだ新しい未来があったんだという思いが、このゲーム一番の感動だったと思います。

リメイクがなければ実現しなかった、
スーパーマリオRPGの新しい未来


最後に

マリオRPG信者のわたしにはまだ語り足りないところがあるかもしれないんですけど、文章力や表現力も無いので一旦このへんにしておきます。最高のリメイクでした。二度目になりますが、マリオRPGに携わった全ての人に感謝です。やはりこのゲームはわたしの人生だった。これ以上の言葉はありません。
最後に、皆さんはスーパージャンプ100回をクリアしましたでしょうか?わたしはリメイクでようやく100回を成し遂げて感無量でした。ありがとうリメイク。無効の敵に星のエフェクトを消してくれてありがとう。マリオに踏みつけたときのモーションを追加してくれてありがとう。おかげでクリアできました。マリオRPGにおいて、ひとと話すときに一番盛り上がるのがスーパージャンプの話題だと思っています。これからは100回クリアした人間として、胸を張っていきます。

男の憧れ、スーパージャンパー


語るタイミングのなかったクリスタラー。再構築(リメイク)のテキストはテンションぶち上がりです
パレードの演出も感動的でした…ディズニー感最高すぎる
ありがとうマリオRPG

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