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ヴァリジャシュリー・ヴェヌゴパル: Varijashree Venugopal "Dream"

インドの女性シンガーソングライター、ヴァリジャシュリー・ヴェヌゴパルのことを知ったのは今年に入ってからだと思う(*1)。これまで知らなかったのは迂闊であった。つい最近にシングルが3枚ほど立て続けにリリースされて聴き惚れて、あまりに素晴らしいミュージシャンだとこの数週間よく聴いている。5月10日にアルバム "Vari" がリリースされるらしく、その先行シングルということだろう。

[2024/5/11 追記]


まずは "Ranjani" バンジョーとシンセ、そしてインドの打楽器とスキャットで、インドの伝統音楽をベースに新しい感覚で、しかもとても楽しい音楽に仕上がっている。

Youtubeの概要欄を見ると本人による解説を読むことができる。Ranjaniは子供のころから好きだった Raga で、彼女のお父さんが30年前に歌ってみせたものだということだ。

Dream はがらっと変わって、浮遊感たっぷりのゆったりとした楽曲で、シンセにコーラスとバイオリンに、軽いパーカッションがスパイスのように聴いている。伸び伸びとした歌声が魅力だ。

こちらも本人の解説をYouTubeの概要欄で読むことができる。

この歌は、繊細で壊れやすい夢。その夢の中では、道のりの中で失ってしまった何かを探している。それは、内面にいる子供の自分、愛の源でもあり、生まれたときに受けた純粋で無垢の愛。

クレジットを見れば、Varijashree Venugopal - Vocals Michael League - Fretless baritone electric guitar, Prophet 6, Moog Matriarch, ARP Omni, Minimoog bass, Vocal percussion Rajhesh Vaidhya - Veena Sarfaraaz Khan - Sarangi、と幅広い。

そして、"Harivaa Jhari" 。ビデオクリップはちょっと微妙だが、曲はすばらしい。

今のところ、これら3曲がおさまったEPになっているが、5月10日のアルバムリリースが楽しみだ。


さて、彼女はいろいろなミュージシャンと共演している。

先日見つけた動画のライブを視聴すると、ジャズのビアノ・トリオと見事なスキャットを聴かせる(*2)。インドの横笛バンスリーの演奏もある。あまりに斬新で鮮烈なので、是非聴いていただきたい。

彼女はインドの古典音楽を幼いころからマスターし、子供のうちから高度な音楽教育を受けたらしい。

なにしろ、2010年のデビューアルバムが "Mela Raga Malika"、44分強のPart1, 42分強のPart2 の2曲が収められていてトータル1時間26分の大作だ。

Ragaというのはインドの古典音楽のフォーマットで、それぞれのRagaは、音階や旋法が決まっていて、また感情や演奏される相応しい時間帯など、細かく非常に複雑な規則があると記憶している。ライブではその時に相応しいラーガで即興演奏をするのが常で、やはり数十分から1時間程度の演奏というのは普通である。

この演奏では、複数のラーガを組み合わせたものだということで、それぞれのラーガの特徴をいかにうまく表現するかというところも問われ難しいものらしい。

私のようなズブの素人には、邪魔にならないBGMとしても聴けるし、じっくりと聴いてみるとなんとなくわかった気もするものだ。

キーボードをバックに歌い上げる Repise も神秘的な雰囲気でいい。

2017年の 70 Repakもいい。フュージョンにインド伝統音楽がフュージョンした感じだろうか。

さらにはインドのドラマー Darshan Doshi 率いるトリオとの共演もエキサイティングだ。曲は "Bandish Blues"

まるでジョン・マクラフリンのギターのように声を操る驚きのイントロ。ディストーションを効かせたギターインストのバンドのリードを奪ってしまう。

一発で惚れてしまうだろう。

アコースティックギター一本との共演も聴かせる。


このように深く伝統に根ざしつつ、現代的な要素を取り入れてコンテンポラリーな新しい音楽の世界を創っている素晴らしいミュージシャンだ。

[2024/5/11 追記」
満を持してリリースされたアルバム Vari 、新たにリリースされたシングルが "Chasing the Horizon"。これもスリリングかつエキサイティングで素晴らしい演奏だ。


■注記
(*1) たしか、ジェイコブ・コリアーの今年リリースのアルバム "Djesse Vol.4" の一曲 "A Rock Somewhere" にアヌーシュカ・シャンカールと一緒に参加しているのを聴いて、そのときはそれほど強烈な印象はなかったが、何かがピンと来たのだろう。フォローしておいたのだった。




(*2) EYM Trio はフランスの新進気鋭のジャズピアノトリオということだ。やはりムジカテーハに記事が上がっていたのでリンクしておく。

これからが本当に楽しみだ。

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