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フランスの少子化対策を知る

 昨日、とある日本人女性とお話しする機会があった。
 パートナーの仕事の都合で7~8年前から家族でフランスに住んでいるという、その方の話の中で特に興味深かったのは、フランスの少子化対策についてだった。

 「少子化対策」と言えば、日本人である私にとっても身近なトピックであり、次世代を担うことになる以上、より関心を持って向き合わなければならない。


 その方が教えてくれたことは、大まかに以下の通りだった。

 まず、フランスの少子化対策を見つめる上でキーワードとなるのは「3人以上」である。これは日本にも共通することではあるが、子どもが3人以上いる家庭は国からの支援が手厚くなる。裏を返せば、2人以下の家庭は支援適応外となる場合もある、ということだ。
 振り返ってみれば、これまで出会ったフランス人家庭は子どもが3人以上いるケースが多かった気が、しなくもない。また、フランス人男性と結婚した知人が以前「将来的に子どもは3人以上ほしい、だから子どもを産むならフランスに移住してからが良いんだよね」と言っていたのだが、ここで合点がいった。

 その支援とは、具体的にどのようなものなのか。ここでは2つ取り上げる。
 1つは「児童関係手当」である。日本の児童手当に当たる家族手当は、第2子以降の20歳未満の子どもがいる家庭を対象に、所得制限なしに支給されるまた、家族補足手当は、所得制限こそあるものの、3歳以上の子どもを3人以上扶養する家庭に一律で支給される。この他にも、単身家庭や障がいを持つ子どもがいる家庭を対象とした手当や、妊娠や出産に伴う給付金などが挙げられる。加えて、新学期手当なるものもあると言うのだから、驚きだ。
 もう1つは「所得税減税」である。フランスには、子どもが多ければ多いほど減税されるN分N乗方式と呼ばれる算出方法があるのだが、これについては詳しく説明された文章を引用する。

 この方式では、家族を課税の単位と見なして、家族の総所得額を「家族係数(quotient familial)」で除して、この家族係数1あたりの所得額とそれに適用される税率によって、家族係数1あたりの所得税を計算し、再び家族係数で掛け戻す。このようにすることで家族に課税される所得税額が求められる26)。
 家族係数とは、核家族家庭の例で考えると、父親、母親は、それぞれ1とカウントして、子どもは0.5とカウントする。ただし、第 3子以降は子ども1人あたり1とする。両親と子ども1人の家族であれば、家族係数は2.5となり、子どもが3人であれば家族係数は4となる27)。家族係数が大きければ、その家族の所得を家族係数で割った値は小さくなり、そこにかかる税率は累進的に低下する。 そうして計算した課税額に家族係数を掛け戻せば、 家族の所得税は低くなる。このように、大家族であるほど所得税額が低くなるか、場合によっては、非課税となる。

フランスにおける家族政策ㅣ特集:フランス社会保障制度の現状と課題ㅣ清水 泰幸


 これだけでも、フランス政府がいかに少子化対策に本気であるか、分かるはずだ。

 また、フランスでは、幼稚園と小学校は土日だけではなく水曜も休みで、春・秋・冬に2週間ずつ、夏には2ヶ月間、それぞれバケーションがあるのだが、その際、日本の学童保育に当たる余暇保育をほぼ無料で利用できる
 加えて、日本に比べて早くに退職するという祖父母が献身的にサポートしてくれる家庭も少なくない。実際、私が今ホームステイさせていただいている知人の家庭では、朝早く出勤する親に代わり、祖父母が子どもたちの学校の送り迎えを担う。

 このような条件が揃っているからこそ、共働きが普通のフランス社会においても、親は大きな負担を感じずに子どもを産み育てることができるのだろう。


 余談ではあるが、ヘッダーの画像はアーティチョークというキク科の可食植物で、こちらのスーパーで初めて目にして衝撃を受けたため、記念に撮影。
 日本から10,000km以上離れた異国での日々は、当初の期待以上に驚きと学びで満ち溢れている。




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