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229.秋刀魚の人魚はあり得るか 〜人魚のミイラとサイズ差について〜

ごきげんよう。
今回はアカデミックな話です。


人魚のミイラ

みなさまは人魚をご存知でしょうか。ご存じだよね。

最近だとディズニーで実写映画がつくられたり、
人気沸騰中のちいかわにも登場したりと、
ファンタジー存在では古参でありながらもトレンドにきっちり乗ってくる古つわものです。

さて、そんな人魚、西洋のイメージが強いですが、実は日本にもいたらしいというのは割と有名な話です。

何を根拠に、というと「江戸時には人魚のミイラがあった」という話からです。

これがその一例。(閲覧注意)

…うん。西洋の人魚と違い、全然かわいくない。というか恐い。
てか上半身人間ちゃうやろこれ!!

もちろんこれは本物ではなく、偽造というか捏造というかそういう、要は人工物です。

ただ、こうしたミイラは往々にして大事に保管されていたものなので、これまでは薄々分かってはいても、人工物だと証明することや、実際には何でできてるのかを明らかにすることは難しかったようです。

ミイラの正体

それが、昨年2022年の2月に、倉敷芸術科学大学の教授と准教授、倉敷市立自然史博物館の学芸員、そして岡山民俗学会の研究者からなる研究チームが発足し、科学的な調査を始め、今年の2月に最終結果が発表されたそうです。

それによると、

内部を撮影したエックス線CTの画像をみると、頭の骨や背骨、ろっ骨といった主要な骨格がないことが分かります。  
代わりに内部には綿が詰められているそうです。  
そしてサルのような見た目は、紙や布を使って表現され、表面には砂や炭を混ぜた塗料が塗られているということでした。  

一方、下半身の調査結果は…  
ウロコを調べた結果などから、東シナ海を中心に広く日本の沿岸に生息するニベ科の魚の特徴があるそうです。  

ーーとのこと。

上半身部分、人間じゃないとは思ってましたが、生き物ですらなかったとは…!

そして下半身。
ニベ「科」なので、そのものではないかもしれませんが、ニベと言えば白身のおいしい魚です。

なんか、そんな風に普通に食べる対象としてみてる魚が、人魚の素材に使われてたというのも不思議な感じです。


下半身の魚ってアレ何?

というか、そんな話をしてて思いましたが、人魚(一般的にイメージする方)の下半身って、あれ何の魚でしょうね?

「何の」というか、具体的な魚を想定したことすらなかったです。

今回の記事を書くにあたって、いろんなイラストも見てみましたが、大抵、魚部分の描写はフワッとしてるんですよね。

そもそも人間の上半身に接続できる魚ってサイズ的にだいぶ限られない?

パッと思いつくところだとマグロとか?

マグロの人魚……。
なんか…やだなぁ笑

あるいはサメとか?
肉食系になりそうですね(やかましいわ)

先程のニベだって、大きいもので70cmほどの大きさだそうです。
確かにミイラにでもしなきゃ、ちょっと生身の成人と接続するのは難しかったでしょう。

秋刀魚の人魚?

先のNHKの記事には

海の近くで暮らしていた人が身近な魚で作ったのかもと、思わず想像してしまいました。

とありましたが、身近な魚、例えばこれからの季節でいうなら
秋刀魚(サンマ)
とかだと、だいぶ人体とのサイズ差がえぐいです。

秋刀魚が人魚になるには、サンマ部分が巨大化するか、人間部分が縮小するか…

どっちにしてもえらくスマートな人魚になりそうです。

ちょっと見てみたい気もしますが、もしも秋刀魚の人魚のミイラでも見た日には、それからしばらく秋刀魚を食べづらくなりそう(特に干物とか)……。

これから夏が過ぎて秋になると秋刀魚の美味しい季節ですし、秋刀魚の人魚の考察はこの辺にしておくことにします。

サンマ、おいしいよね


ネタで終わらずに

ここでちゃんちゃん、にしようかと思ったのですが、先の研究のニュースで、記者会見に答えた教授の発言がすてきだったので、最後にそちらを引用します。

「幼いころに読んでいた子ども向けの雑誌には妖怪とかUFOが出てきて、いつもわくわくしていた。そうした怪しいものと実際に巡り会うことは想像していなかったが、今回、お寺の協力で調査する機会が巡ってきた。この怪しいものが何者なのか知りたいということが原点でした」

「国内外で『人魚のミイラ』は複数見つかっているが、科学的な調査はほとんどされていなかった。私たちの研究をきっかけに、今後、同じような研究が行われて比較されることで、今回分からなかった作り手の解明につながればいい」  

倉敷芸術科学大学 生命科学部 加藤敬史教授

幼い頃の未知のモノにわくわくする好奇心を、大人になっても保って、先陣を切って事例を作る大人の姿、かっこいいなあと思います。

今回の研究が、ニュースで取り上げられるネタとしてだけでなく、後に続く研究の先がけになるといいなと思うのでした。

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