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第33回 レオ・シラード

レオ・シラードはユダヤ系のハンガリー人で、オッペンハイマー、ヴァネバー・ブッシュと並んで「原爆の3人の父」と呼ばれる内の1人です。
1939年1月17日、ニューヨーク。シラードは、プリンストン診療所に黄疸(おうだん)で入院している同じユダヤ系ハンガリー人の親友、ユージン・ウイグナー(プリンストン大教授)を見舞いに来ました。
シラードはハンガリーからドイツを経て、ユダヤ人への圧迫が強くなったのでアメリカに亡命し、コロンビア大の非常勤講師となっていました。ウイグナーも亡命科学者です。

ウイグナーは昨日、プリンストン大の友人から、ボーア博士がドイツで核分裂の発見があったと言って、大騒ぎになっている事をシラードに話しました。シラードは驚き、
「実は僕も6年ほど前、今は亡きラザフォード先生の講義で、原子の力を工業化するのは絵空事って言ってたけど、アインシュタイン先生の相対性理論の様に原子には無限の力があると思うんだ。ウェルズの空想小説にも原子爆弾が出てくるしね。将来、イギリスとドイツで核戦争が起こるかもしれないと書いてある」
ウイグナーは苦笑いしながら言いました。「レオはウェルズが大好きだしね。会いに行ったくらいだものな!」
そしてシラードは今度は表情をこわばらせて言いました。
「これは大変な事になったぞ。ドイツといえばいっぱい優秀な科学者がいるし、本当に原子爆弾ができるかも知れない!」 (続く)

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