突然空から降ってこい、降ってこい。

チョコレートが空から降ってきたとしても、痛いし怖いし甘いし硬いし。口に入れようと顔を上げれば、確かに口でキャッチすることは可能なんだろうけど目に入る可能性も当然あるから危険だ。それで誰の口にも入らず地面に着地してしまったチョコレートは拾ってまでして食べようとは思わないし。そもそも僕は甘いものが好きじゃなかった。そもそもアスファルトを間接的に舐めることなんてできないし。降り積もったチョコレートを除去する、除チョコレート作業も大変だろうな。溶け始めると甘ったるい匂いが散ってさらに大変そうだ。そのうち溶けたチョコレートが溝に落ちて流れて一点に集まりそれが沼となり、危険の象徴になるんだろうな。そんなチョコレートを狙う卑しい虫もわんさか湧いてくることだろう。除去のため降ってきたチョコレートを処理場に集めたところで肝心の処理は大変だ。それでも放置しているとそのうち重大な健康被害もでるだろう。例えば生活習慣病だったり。ただでさえコロナの襲来で、家の中が充実した環境になった今。空から降ってきたチョコレートをバケツいっぱいに溜めて、それを片手にプライムビデオ(Hulu U-NEXT Netflix などでも可)なんかを観ていたらもうそれはただただ太って仕方がない。そのうちチョコレートの甘さに飽きて苦味を求める人間が増えていき、喫茶店、コンビニ、自動販売機、スーパーなどにある「コーヒー」(無糖・ブラック)の存在がごっそりと見事に消えることだろう。さあ今度は「禁珈琲時代」の到来だ。深刻なコーヒー不足だ。すると闇珈琲に闇喫茶店が誕生するだろう。そのときを、裏社会はじんわりと待っているんだ......結論、空からのチョコレートはいらない。

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ということで、空から降ってきたら嬉しいもの↓

「温泉みたいな雨」は意外とありかもしれない。なんだかんだ雨っていうのは、いつも冷たい。濡れると風邪をひく。たまには「温泉みたいな雨」でもいいじゃないか。でも、それも濡れて放置すれば冷たくなってしんどいか。まあ、たまにのイベントぐらいで。美肌効果とか若返りとか皮膚に良いだとか。そんな効果を詰め込んで。ご当地の雨を降らせばいいじゃないか。温泉卵でも作ればいい。YouTuberが企画を撮ればいい。それを見て芸人は呆れたらいい。僕はきっとずっと部屋にいて、その雨が冷たいか温かいかなんてことを知らずに本を読んでいる。そんな気がする。

「バロウズ全巻セット」はぜひ降ってきてほしい。もちろん日本語訳でお願いしたい。ならそのほとんどは河出文庫になる。しかし塊として落ちてきたら、まあまあ怖い。もちろん落下速度にもよるが。そしてなんだかんだでバロウズは廃刊(っぽい)が多いし、ダッチ・シュルツ(ビール男爵とか言われたニューヨークのギャングね)を扱った『ダッチ・シュルツ最期のことば』なんかは今Amazonで見たら3000円ぐらいしている。そんなのが雨と同じで自然として降ってきたら最高だ。僕の財布はダメージを受けずに済んで嬉しい。そしてバロウズが空からザカザカと日本に降ってくるとジャンキーな小説ブームの到来で日本列島は震えるだろう。仕事にいまいち情熱のないボンボン二世の政治家は突然のブームになったバロウズに強い影響を受け、「ジャンキーがトレンドだ!!」ということで大麻合法化を狙う若者(もう中年かもしれないが)を金で集めて、新党を立ち上げることになる。新党の長である二世の彼は党名がシンプルであると当選しないとわかっているから、きっと派手な名前にする。占いにも出かける。これもどっかのあいつが考えた選挙の勝利方法。新党の長である二世の彼はまず第一の運動として「ゲートウェイドラッグ」の文字をこの世から消そうとする。デモの始まりだ。結局あらゆる「合法化」への道のりで肝心なのはそこなのである。しかし長(二世の彼ね)は遠い遠い海の向こうの寒い国を見て思う。「あれ? 合法化ってもしかして強行したら失敗する?」と。しかしもうその頃には党員数はドンドンと増えており、引き返せなくなり、現実逃避のために薬を買って......あ!! やっぱり「ゲートウェイドラッグ」だ!!

「エリッヒ・フォン・シュトロハイム完全全集(紛失フィルムを含む)」は空から降ってきたとしてもその数は少ないだろう。気象予報士が「明日はシュトロハイム(ハリウッドで活躍した映画監督)の作品が降ってきます......」などと一度でも言えば、それはニュースとして世界を駆け巡り。間に合うはずのないアメリカ人も急いで飛行機に乗って、空から母国の街の光を見下ろしながらソワソワするはずだ。世界の富豪(映画に関心を持っている者・あるいは商売としての価値を目的とする者)は自慢のプライベートジェットを飛ばすことだろう。その騒ぎにほとんどの人間が関心を持つ。持たないのは野球に熱心な大谷翔平ぐらいだろうか。映画好き、映画評論家、映画監督、脚本家、演者、などなどは広大な空を前に、ジッと静かにそのときを待つ。しかもその「全集」は最新の4kのBlu-rayで降ってくる。「シュトロハイムを待つ者」は東京、大阪、福岡、愛知、北海道、沖縄、北方領土等でも見られ、各地の記者がパシャパシャと写真を撮った。そしてすぐにその日の夕刊に差し込まれた。「全集」が降ってきたのは午後7時過ぎだった。場所は青森県ということになっているが、実際のところ真相は不明だ。おそらく初期位置は北海道の上空で影が確認された。しかし風に乗った、というのが一般的な解釈である。そんなたった一つ(とされている)「全集」は獲得者が素早く市場に回しそのままオークションという運びになった。『悪魔の合鍵』や『グリード』(オリジナル版)「エリッヒ・フォン・シュトロハイム完全全集(紛失フィルムを含む)」の目玉になった。結局は富豪(どうやらエネルギー関係の仕事をしている男らしい)が数十億(金額非公表)で買い取ったが、数日後に複製品がどこからか流出して騒ぎになった。多くの映画評論家がせっせと批評を書いて提出したが、その部数は想定よりも全く伸びず「サイレント映画に関心を持つ若者は少ない」との失望の結論を出した。......後日『グリード』(オリジナル版)が日本でも1週間限定で劇場公開されたが、円盤は未発売のまま。ただ複製品はフリマアプリで5000円。字幕なし。っていう感じで「全集」の騒ぎは終わるんだろうな。悪くない。そういう世界も悪くない。本当に。

「絶対に透けることのない漆黒のボックス(モデル・地球」はいわゆるネットカフェにあるような個室形状の塊。出入り口が1つ。扉だけ色は黄色。ダンボールぐらいの軽さで、それなりに大きいためトラックが必要にはなる。中は照明で明るくすることができ、操作は全てリモコンである。ベッド等の家具は一切ない。わざわざ持ち込まなければならない。持ち込めば当然その分「絶対に透けることのない漆黒のボックス(モデル・地球」は重くなる。が、どのみちトラックで運ばなければならないから「追加持ち込みによる重量増加」は問題としてはあまり大きくない。空から降ってくるにしては大きくて軽くて風に流されやすい。だから結局それは風に押されてプワプワと漂って、日本海に流されてしまった。それを手に入れようと地上で待機していたほとんどの人間が芸能関係であったことが明かされている。ちなみにそんなのが降ってきたら、そんなのを獲得できたら。僕は兵庫の南あたりに設置して家にして住む。なんてったって、窓とカーテンと雨戸が信じられない年頃だから。なんか見られてる気がする。デリケートなんです、精神が。思う存分、1人ではじけたい。「あー!!!!」って叫びもきっとそこでは響かない。全部を吸収。まるで新品のスポンジ。

「アル・カポネの隠し財産」が降ってくると(あるいは見つかると)それはやっぱり嬉しいけれど、しかし肝心の「財産」が「ドル」なら(当然シカゴで暴れていたんだから「ドル」に決まっているが)ちょっとばかり「円」にするのがめんどうで掴む必要はないかと思ってしまう。それに「円」じゃなく「ドル」でも、薄っぺらい「紙幣」であることに変わりはないから、風が吹かずとも雲から吐かれた瞬間に「財産」は散り散りになって悲惨なことになる。おまけに「隠し財産」の総額を出したいと思っても、出るわけがないのだ。それなら「武田信玄の埋蔵金」のほうが嬉しいが、それはやっぱり空じゃなくて土に埋まっているほうがロマンがあるし。そもそも埋蔵金なんてないのかもしれないけど。まあ「金」が降ってくるのならなんでもいいのだけど。でも金が降りすぎたら帳尻合わせが始まって結局はトントンなんてパターンもある。降る財産が税金の対象になるかもしれない。嫌だ、そんなの嫌だ、こんな国。空からの恵みも全部吸収しちゃうんだ! ああ、そんなことを考えるだけで嫌になってきたよ。ああ、ツラい。日本は嫌いじゃないけどね。そろそろ寝ようかな。明日は空から何が降ってくるんだろう。考えるだけで楽しいなあ。......楽しいなあ。楽しいか? 楽しくないかもね。まあ、知らない。知るわけない。勝手にやってろ。

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