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【映画感想文】 Love letter

「Undo」「花とアリス」の岩井俊二監督の長編第1作。事故で婚約者の樹を亡くした博子は、国道になってしまったという彼が昔住んでいた住所に届くはずのない手紙を出した。しかしその手紙は、婚約者と同姓同名の女性のもとへ届き、2人の不思議な文通が始まるのだった。中山美穂が博子と手紙を受け取る女性、樹の2役を演じ話題となった。

映画解説 より

1995年公開の作品を、Netflixにて。

公開当時、WOWOWで放送されていたのを、私は中学生で、ビデオに録画して、何度も何度も観ていた。豊川悦司さん演じるアキバさんの関西弁のセリフ
「それはちゃうよ〜
   そんなんはちゃうよ、ひろこちゃん」
などまで暗記してしまうほど観ていた。

サントラのピアノの音、図書室、ダルマストーブの冬の家、ガラス工房。中山美穂さんのショートカットも、かわいくて、とてもとても好きだった。

あれから30年ほど経ち、好きな映画をまた観れると嬉しくなった。

はじまりのピアノの音からもう、当時の実家のコタツのあの熱さまで思い出した。青色ジャージで肩まで潜って、外は寒く、雪がふったりしていた。

中山美穂さんが「渡辺ヒロコ」と「藤井 樹」一人二役を演じていて、そのころは
「一人二役なんて演じ分けすごいな…」
くらいにしか思っていなかったけれど、
今となっては
「そういうことか…!!」
と、この映画の本来のストーリーをようやく理解して、「うわぁ…」となった。

特に、
「似ていたらどうなの?」
ヒロコさんとお義母さんのシーン。
「似ていたら、許せないです、
    それが私を選んだ理由だとしたら、
    お義母さん、私…」

セリフが刺さる。

初恋は実らないというけれど、初恋を引きづってしまうってあるのかもしれない。
もっとも、この二人がそれを「初恋」だと認識していたかどうか、はきっと、振り返ったときに気づいたのだろうが。傍から見れば、「好きなんだろうな」と明らかだとしても、当人たち同士はどこまで気づいていたのか。

男子中学生の方の「藤井樹」が、図書室の窓際で文庫本を読むシーン。カーテンが風に膨らみ、涼やかな眼差しで文庫本に目を落としている彼がとても綺麗だった。

過去の恋愛にケジメをつける時、そこにはやっぱりアキバさんのように、受け皿になってくれる人がいて欲しい。
「アイツを自由にしてやれよ。
   君も自由になれ。」
亡くなった人にはかなわないけれど、残された人たちには続きがあるのだから。


しつこい郵便屋さんも、クセのある笑い方の義理の弟も、不思議な同級生サナエ(鈴木蘭々!!)も、ボケてなどいないおじいちゃんも、魅力的な登場人物たちのいちいちが懐かしくて、
「わぁーいたいた、この人ーっ!」
と一人盛り上がりながら観ていた。すべてが懐かしく、こんなにも憶えている自分に、相当ハマって観ていたんだな、と改めて思う。

あぁ、誰か。
「この映画が元々とても好きです!」
という方と一緒に観たい。
そして語り合いたい。
改めて観たけれど、やっぱりとても好きで、素敵な映画だった。全編を通してのサウンドトラックがまた、冬の空気を醸して美しい。

淡い恋心。
彼のLove letterは、
「失われた時を求めて」に
認めた図書カード。


                    拝啓、藤井 樹 様

                   お元気ですか

                   私は

                  元気です



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