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Yell note :Page26 eeo Stage reading 朗読劇「あの星に願いを」感想

『……星羅が死んだ』
「は?!」

初日公演後、推しさんである荒井瑠里さんが「星羅のモーションを担当する」とtweetしていたのでどんな感じなんだろ~とあれこれ想像して観に行ったら開始3秒でメンタルブレイクされました。どうも私です。

今回の感想記事は前提となる情報提示が多いので雑談せずにネタバレし放題の本題に移ります。そして台本売り切れで買えなかったため記憶違い等あるかもしれないことをご了承ください。ではどうぞ!


0.感想を書くにあたって

今回の朗読劇は4年前に開催された同名作品の再演であり、2つのルートが存在します。よって、その過去作を知っているか、2つのルートをどの順番で見たか、などなど人によって条件が異なることがほとんどだと思います。
私については「過去作未見」「プロキオンルート、シリウスルートの順で観た」「目当てはアンサンブルキャストの荒井瑠里さん」になります。
以下感想についてもその前提で書いていきますのでよろしくお願いします。

1.参加イベント概要

・イベント名
eeo Stage reading 朗読劇『あの星に願いを』
・開催日時(参加した公演)
2023-5-27(土) プロキオンルート 16:00~17:50頃
2023-5-28(日)シリウスルート 12:00~13:50頃
・開催場所
CBGKシブゲキ!!(東京都)
・出演者(順不同、敬称略)
(5/27プロキオンルート回)狩野翔、南早紀、濱健人、礒部花凜、今井文也、中神一保、入江麻衣子、長谷川芳明、美藤大樹、野本侑歩、祐花、荒井瑠里、Sachi
(5/28シリウスルート回)汐谷文康、青山吉能、濱健人、礒部花凜、松本ひなた、中神一保、伊藤彩沙、笠間淳、美藤大樹、野本侑歩、祐花、荒井瑠里、Sachi
・syuの位置
(5/27プロキオンルート回)4列目中央指定席
(5/28シリウスルート回)6列目下手指定席

2.本編感想

①あらすじ

運営さんがあらすじや場面写をまとめてくれてるのでこちらの記事をどうぞ(書くのサボれるから助かる)。

②全体の印象

まず最初にプロキオンルートを見終わったとき思ったのは「この挑戦的な朗読劇に出会えてよかった」というものでした。

脚本については、朗読劇にわざわざ足を運ぶような人であれば一度は別の作品でも目にしたであろう若者のすれ違い恋愛模様が中心に据えられています。ぱっと思いつくだけも『School Days』とか『WHITE ALBUM』とか。
ただしそういったアニメやドラマと違い、朗読劇という形式で観客へ物語を届けるにあたり様々な工夫がされていました。なので私の印象としては、脚本の巧緻よりも普遍的なテーマの中でいかに登場人物の(ある意味でグロテスクな)感情の振り幅を観客へぶつけるかを主眼に置いているのかなと感じています。

一番大きなポイントはモーションアクターの採用でしょう。私はこのタイプの朗読劇初めて観たんですけど前例があったりするのでしょうか?特に私の場合は荒井さん目当てで行ったというのもあり、声に合わせてモーションアクターが演技している、ではなく、モーションアクターにリアルタイムで声が吹き込まれているつもりで見ていました。

モーションアクターの存在によって視覚的情報が格段に増えたこともあり星羅が置かれた状況の厳しさがダイレクトに伝わってきましたし、登場人物たちがターニングポイントにおいてことごとく選択肢を間違えてしまっていくことのもどかしさも観客全体が共有していたのではないでしょうか。まるで加速していくトロッコが崖に突っ込んでいくのを止められないかのごとく。

そういえばモーションアクターさんが演技していた後ろのステージって斜めになってるじゃないですか。これはお客さんが見やすいように角度をつけてるんだと思うんですが、私は最初見た時に強烈な違和感を覚えました。
明らかにボイスアクターさんたちのステージと平行になっていないというのもあり、裕介たち4人の関係性そのものが歪に傾いてしまっているイメージが残り続けていたからです。恐らく意図したものではないでしょうけどね。

③共通ルートについて

私が見た回はたまたまどちらも莉緒役のボイスアクターが磯部さんだったので、あんなギャルっぽい役を磯部さんがやるなんて!という意外性がすごかったですね~(アサルトリリィの印象が強いため)。裕介のことになると常に余裕が無くて、それが結果的に悲劇の一因になってしまうわけですが…。

ということで物語の95%(たぶん)を占める共通ルート部分は裕介が10年前に亡くなってしまった星羅のことを思い返すという構成で進んでいきます。
星羅役のボイスアクターについて、南さんの時はより守ってあげたくなる感じで、青山さんの時はより幼馴染としての距離感が近い、というイメージでした(伝われ)。

前述のとおり裕介、健吾、莉緒、星羅の仲良しグループとそれに関わる人々がどこかのタイミングで違う選択肢を選んでいたとしたら。例えば裕介が莉緒の告白を断っていたら。星羅が裕介以外に助けを求めていたら。健吾が星羅の異変に気付いたとき手を差し伸べていたら…。

結局、家庭環境(いわゆる毒親)と失恋に追い詰められた星羅はビルの屋上から身を投げ、裕介の心は学校の屋上で星羅と見た星空の光景に囚われ続けることになります。星羅の最期のシーンで荒井さんが台本を閉じる演出は正直震えましたね。「彼女の物語、役割の終わり」をこういう風に表現するんだなと。

④プロキオンルートについて

まずは最初に観たプロキオンルートについて触れていきます。

このルートでは10年前に星羅が書いた手紙を裕介が読むことで改めて彼女の想いと向き合い、少しだけ前を向いて生きていくという終わりになります。
あの日に見たのと同じ星空の下、自分の中に息づいていた星羅の言葉に応えるように。
きっと彼の人生の傍らには健吾と莉緒がいて、10年前とは違う形の関係性が作られていくのでしょう。

荒井さんがひと際高い舞台の中央で赤い光を掲げているシーンは様々な感情が込み上げてきました。(プリンシパルじゃん…とか)
あの星が星羅なのだろうか、今の裕介が顔を上げたことで彼女は救われたのだろうか…。
最後はローダンセの花束が星羅に手向けられたところで終劇となりました。舞台の上に残された花束が物悲しくもあります。

⑤シリウスルートについて

次に観たシリウスルートについて。

プロキオンルートとは異なり、星羅の手紙を読んだことがきっかけとなり裕介が「星羅のそばに行く」と学校の屋上の縁に立ち……というラスト。
ドサッ、という音。そして椅子でうなだれた汐谷さんと青山さんを残したまま客席の明かりが灯り終演のアナウンスが流れるというのは中々ハードな体験でした。

衝撃的な展開について賛否両論あるだろうというのはある意味で製作者の意図どおりだと思いますし私も「あり得る結末」だったとは思います。
ただそこに至るまでの流れは正直強引だったと思いますし、「助けてくれって言えよ!」と星羅の幻影に言い放った裕介がその直後に誰にも助けを求めず独り死を選ぶだろうか?という疑問が残ります。もちろん10年間引きこもっていた彼の心は止まってしまっていて「思春期のしがない男子高校生」のままだったであろうことは理解できるのですが…。

一方で10年もの間で数えきれないほどの後悔と罪の意識に苛まれてきたであろう裕介を死に引っ張ってしまったのが星羅の手紙だったというのは、この物語全体を通して繰り返された「誤った選択肢」の終着でもありました。(あえて「誤った」という表現を使います)
星羅の幻影の制止も聞かず死を選んだ彼は果たして彼女のそばに行けたのでしょうか。10年経って最後の最後まですれ違っているように思えてしまったのが後味の悪さをさらに増しているように感じます。

⑥モーションアクター・荒井瑠里さんについて

せっかくなので書いておきます。

ボイスアクターの皆さんは公演ごとに入れ替わりもありましたがモーションアクターはアンサンブルキャストで固定だったので、主人公4人の外見や仕草についてはモーションアクターの演技を優先的にイメージする人も多かったのではないでしょうか。

今作の星羅はとにかく見ている側としては「つらい」の一言しか表現しようがないのですけど、救われることのない少女を短期間に何度も何度も演じるというのはいかに役者とはいえしんどかったと思います。

しかしどちらのルートに進むとしても星羅が観客から「いい子だから何とか助かってほしい」と感情移入される人物でなければ物語が成り立たないので、荒井さん演じる星羅の不器用さや儚さがストーリーの中心を担っていたのは間違いないと思っています。今回の朗読劇を観に行くことができて本当によかったです。
ここまでつらつら感想書いてますけど公演期間中に荒井さんがTwitterに載せてる制服姿(衣装)の自撮りをいまだに直視できてません。劇を観た時の重たい感情が甦ってきてしまうから…。今回カーテンコールの挨拶とかなかったし(千秋楽はあったっぽい?)、上手いこと現実に頭を切り替えるタイミングがないまま劇場を後にしてしまった感じです。そりゃ「星羅!!」って叫びたくもなりますわ。

ていうかアンサンブルキャストのグッズも出して欲しかった!!

3.これがわからないよポイント

2回見たけど私の理解力不足でよくわからなかったという点をざざっと箇条書きにしていきます。とはいえ国語の問題を解きたいわけじゃないので時々思い出して自分なりに答えを付け足しておきたいです。

・莉緒と星羅は実際のところどの程度仲が良かったのか?4人の関係性の中でもこの2人についてはやけに希薄に感じる。
・小松先生は星羅の事件からさらに2年前の時点から彼女の家庭環境に問題があったことを知っていたのに星羅がバイトしていることにずっと気づかなかったのか?
・星羅の父が右手に怪我を負っていた理由は?星羅に対する虐待?
・ダンサーさんは何を(あるいは誰を)表現していたのか?裕介や星羅を見守る星の妖精?
・小松先生の奥さんである「弘美ちゃん」が現在の裕介に語りかけていた理由は?
・星羅のことを悔やんでいた健吾や小松先生がいたにも関わらず裕介は引きこもりのままだったのか?シリウスルートでは結果的に同じことが繰り返されてしまうわけで、彼らの10年間は一体何だったのかということに。

4.おまけ

朗読劇とは直接関係ない自分語り記事(役者さんへのファンレターについて)を書きました。こちらは気軽に読めます。よかったらどうぞ。

(追記)
10年後……ではなく3ヶ月後の8月にアフターイベントが開催されました。


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