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「石子と羽男」と未成年者取消権

未成年者ゲーム課金トラブルの増加が深刻です。そんなゲーム高額課金トラブルがテーマになると知って、ドラマ「石子と羽男」を先月見ました。登場人物がそれぞれに魅力的で、テンポがよくて、面白かった!

このドラマでは、ゲーム会社側の年齢確認画面の不備を指摘することで「未成年者契約取消権」が認められます。
でも。「未成年者契約取消権」って、そんな不備を指摘しないと認められないものなのでしょうか?
ドラマの中でも、有村架純さん演じる"4回司法試験に落ちた崖っぷち東大卒のパラリーガル・石田硝子"のセリフで、「未成年の過失は社会全体でカバーすべき」というような、説明がありました。

消費者法の専門家である京都産業大学教授の坂東俊矢先生は、2014年に「未成年者保護法理の意義とその揺らぎについての法理論」の中でこんな風に書かれています。

「未成年者に対する保護は、近代市民法に普遍的な価値を持つ法原理だと言える」「すべての人が等しく未成年者として保護されることを考えると、まさしく市民社会における『お互い様』の法原理に他ならない。」

https://cir.nii.ac.jp/crid/1050001337417734016

消費者庁は、オンラインゲーム未成年者高額課金に関する消費生活相談が年々増加していることから、相談マニュアルを今年6月公開しました。マニュアルでは未成年者取消権について詳しく解説されています。

しかし、です。
ゲーム会社に未成年者取消権を主張しても、ドラマに出てきたゲーム会社側弁護士(宮野真守)のように、年齢確認画面に子どもが成年の年齢を入力してしまったというだけで「詐称!詐称!」と、取消しを認めません。

消費者庁が公表した「オンラインゲームに関する消費生活相談対応マニュアル」に記されたことは、ゲーム会社には関係ない話、のようにも言われました。
巷にはオンラインゲームの広告があふれていて、子どもたちが関心を持つのは当然です。そもそも、ガチャ(ルートボックス)はギャンブルであると禁止する国もあります。とにかくガチャは儲かるらしく、日本人はそのガチャに世界で一番課金するというデータもあるようです。

子どもたちがガチャをきっかけにギャンブル依存に陥らないように、海外のようなガチャ禁止が、この国にも必要ではないでしょうか。

ゲーム産業に関わる人たちに、坂東先生のお話が届けばいいのですけど。

 今、新しい取引のパイオニアとしての事業者が腐心すべきは、未成年者保護法理をどのようにして回避するかではない。未成年者に適正な取引環境を法的にも、技術的にも整備することで、親権者を初めとする社会の信頼を得るに足る契約の仕組みを整備することに取り組むべきである。ネットでの取引が適正に発展するためには、それは不可欠の課題である。

https://cir.nii.ac.jp/crid/1050001337417734016