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大島だけ消費税を5%に優遇すると、社会はどう変質するのか?

ミクロ経済学の参考書にはこう書かれている。

「ミクロ経済学とは究極的には人々のインセンティブ(誘因)を探す学問」であると。


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人々が合理的に行動すると仮定した場合(経済学では人々は合理的に動くと仮定することで学問が成り立っている)、彼らはどんなインセンティブでどこに向かうのか。

その向かう先を、彼らが動く前に予測する学問。大衆の未来を予知する学問。それがミクロ経済学であると書かれている。要するに、ミクロ経済学とは、社会に潜むインセンティブを探り出す学問であると言える。

インセンティブ理論についてはこちらから学んでいただきたい。今回はそのケーススタディーである。


4年に一度行われる東京都知事選の2016年7月期、いまから2回前の都知事選において、候補者の1人、鳥越俊太郎さんが「大島だけ消費税を5%にしたい」と選挙公約を掲げていた。

彼は経済学的に思考したのではなく、伊豆大島の人たちの所得、いわば島部の人たちの所得が少なく可愛そうだから、彼らを税制的に優遇させたい。

産業の少ない島部だけ消費税を5%にすれば、観光客が増加し、唯一の産業である観光業が潤うから、要するに経済学的に思考したのではなく、弱い人、困っている人が可愛そうだからという感情論でこの政策を掲げたのである。


この政策を実現すると大衆はどう動くのだろうか。

結局、彼は落選したため、実現されなかったが、もし大島だけ消費税を5%にしたとき、社会はどう変質するだろうか。

インセンティブ理論を組んで未来を予測してみる。インセンティブ理論の具体例としてちょうどいいケーススタディーになるはずである。


まず、伊豆大島の人口は2021年11月30日現在7,281人である。東京都の人口が1,396万人だから、都民全体の0.05%に過ぎない。

伊豆諸島全島を合計しても人口は23,469人である。

伊豆大島の消費税だけを5%にすると、東京都及び47都道府県の消費税は10%で据え置きのため、伊豆大島に住んでいる人たちは自分たちが優遇されていることを自覚できるから、島部でだけ消費が増加するだろう。お得だと感じるはずだ。

また、伊豆諸島に旅行に来る人たちも、島内であれば消費税が半額なので、旅行客の消費も加速する。


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