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多様な働き方と労働基準法大改正


1.働き方改革ではなく働かせ方改革

 河合薫(健康社会学者)さんのこの記事はとても勉強になりました。
 確かに、「働き方改革」とは「働かせ方改革」であり、「多様化する働き方」とは「使い捨て人材化」ということでなのでしょう。
 この指摘はとても正鵠せいこくを射ていると思います。

『「多様化する働き方」は必ずしも、「いや~ほんと、自分のライフスタイルに合わせた働き方ができて最高!!!」という働き方にはなっていない。
 
 むしろ会社側が「いや~ほんと、正社員にしなくてもいいし~、雇用義務を負う必要ないし~、安い賃金でいいし~、最高だね~!!!」と喜んでいるだけ。
 働き方が「多様化」してるのではなく、「働かせ方」が多様化したのだ。』

河合薫 2024.05.08『低賃金ニッポン、多様化したのは働き方ではなく「使い捨て人材」』日経ビジネス

 実に、小気味いい文章!「そうだ!そうだ!」と頷いてしまいました。

2.40年に一度の労働基準法の改正

 また、河合薫さんは、40年に一度の労働基準法改正につても、世界的な動向を踏まえて、解説してくれております。

(1)有給休暇の分割とインターバル規制

 日本では「有給休暇の分割」が当たり前だが、国際労働機関(ILO)は原則、有給休暇の分割取得を認めていない。疲れは借金と同じで確実に解消しないと利子のように蓄積される。蓄積疲労はうつや突然死につながる極めて深刻な状態である。それを防ぐにはまとめて休む必要がある。それが年次有給休暇制度だ。・・・略・・・
 ILOが70年に採択した第132号条約では、日数は1年勤務につき3労働週以上(5日制なら15日以上)とされ、連続で2労働週以上(同10日以上)取得することが定められたが(祝日や慣習上の休日は年次有給休暇の一部として数えてはならない)、日本は産業界の反対によりこの条約を批准していない。いったいどんな「やむにやまれぬ事情」があるのか、ぜひとも教えていただきたい。

河合薫 2024.05.08『低賃金ニッポン、多様化したのは働き方ではなく「使い捨て人材」』日経ビジネス

 疲労を蓄積しないためには、やはり、年に1回は10日以上の連続休暇は必要だと思います。

 インターバル規制・・・略・・・93年には欧州連合(EU)がすべての労働者に対して24時間につき最低連続11時間の休息期間の付与を定めた。
 霊長類としての人には睡眠が不可欠で、睡眠が6時間未満だと、さまざまな病の萌芽ほうがが生まれることは、医学的にはコンセンサスが取られている。

河合薫 2024.05.08『低賃金ニッポン、多様化したのは働き方ではなく「使い捨て人材」』日経ビジネス

 私も11時間程度のインターバル規制は絶対に必要だと思います。

 有給休暇もインターバル規制も「日本の常識、世界の非常識」的問題なので、どんな横やりが入ろうとも、ひるむことなく実現してほしい。

河合薫 2024.05.08『低賃金ニッポン、多様化したのは働き方ではなく「使い捨て人材」』日経ビジネス

 くぞ言ってくれました。

(2)フリーランス

 明確な定義のない言葉ほど、あやういものはない。かなりうがった意見になるが、数年前から、国がめったやたらに「フリーランス」という言葉を使いだしたこと自体、あやしすぎる。
 私にはかつて「定職に就かない」あるいは「無職」と呼ばれていた人たちが、「フリーター」というカタカナ用語によって、「自由を求める人」の象徴になったこととダブってしかたがないのだ。
 だから私は、フリーランスをめったやたらに礼賛する国や識者たちを批判してきた。

河合薫 2024.05.08『低賃金ニッポン、多様化したのは働き方ではなく「使い捨て人材」』日経ビジネス

  日本では「フリーランス」には定義も無く、労働法の適用を受けない個人事業主という扱いとなっているようです。
 しかし、EUでは最低賃金、労働時間規制などを適用すべき「従業員」なのか、あるいは保護されない「個人事業主」なのかを具体的な条件を提示することで分類しているといいます。

 具体的には、以下の5条件のうち2つを満たすと従業員と見なされるのだそうです。

  1. 報酬水準を設定

  2. 電子的手段で労働条件を監督

  3. 労働時間や休暇取得の自由の制限

  4. 服装や行動などについての拘束があるルール設定

  5. 顧客基盤の構築や第三者のために働く可能性を制限

 河合薫さんは、フリーランスの定義を明確にすべきだと指摘しています。確かに、定義のない議論は議論になっていませんから・・・

 労働基準法改正を検討している、「労働基準関係法制研究会」の今後の議論に注目する必要がありそうです。



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