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華氏451

 昨日から出張で職場の人たちを地元福岡にアテンドした。もつ鍋を食べて中洲の繁華街を散策し、さらに長浜まで歩いてラーメンを食べた。もつ鍋をしっかり食べたけれども、ラーメンの食券を買う際には、せっかくなので替玉の食券を合わせて買うことを絶対的にお勧めした。みんな私のことを信じて購入したが、量が思ったよりも多かったらしく、一杯目の途中から辛そうだった。それでもちゃんと替玉をしていた。小気味よく加えた追いタレが多すぎて、かなり塩っぱくなったようだが、しっかり食べ切っていた。恨めしそうな目は充血していた。アテンドしたのは北海道と新潟と島根出身の人たちなのだが、ラーメンへの誠意があった。嬉しかった。ホテルへ帰る途中、更にもう一軒と誘ってみると心底うざそうだった。なので帰った。総じて満足してくれたと思う。

 飛行機ではレイ・ブラッドペリを読んだ。昔から名前だけ知っていて、ついに手が伸びた感じ。ブラペの中でもこの作品を選んだのは書評の高かったので。
 SFといっても今の時代に近しい部分はあって、アレクサのような壁が出てくる。作中にさらっと書かれていたが、どうやら2022年くらい?を舞台にしたようだ。ブラペの、ある前提を置いた場合の未来予想図が展開されたものであり、その風刺は、今のインスタントな文化や価値観が目立つ時代を予言したようも思える。というか書評にもそう書いてあったので間違いないだろう。ある前提とは、本を所持することを禁じられた世界の話であること。取締まるのは昇火士(ファイアマン)と言われる人たちで、通報を受けたら駆けつけて、真偽の確認が済んだら、家もろとも火を放ってしまう。現実の世界では火を消すことがファイアマンの仕事だが、この物語では本を焼いている。そして思想の火種を消している。もしかすると、本を読まない方が幸せだということを建前としているかもしれない。
 主人公のモンターグは昇火士だが、ある少女との出会いと、その問答で世界の事象に目を向け始める。恐らくは想像することや考えることの大事さ、豊かさに思い至り、自分の仕事の意義にいて訝り始める。本には何が書いてある?興味というか、知らない世界への畏怖に近い描写にも思えた。
 一方の妻は薄っぺらいコミュニティを愉しみながら、自分でも知らないままに睡眠薬を大量摂取し、死にそうになる。妻も自分も、二人の出会いの場所を忘れていることに気づく。本のない世界は、記憶も短命のようだ。
揺れるモンターグ、それを察する職場のボス。体制側だが、元々は読書家だったようだ。

そして、それから、話は展開を急ぐ。目まぐるしくなる。なかなか面白い。

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