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密林の語り部

Amazon.co.jp: 密林の語り部 (岩波文庫) eBook : バルガス=リョサ, 西村 英一郎: 本

 南米の作家はガルシア・マルケスとパウロ・コエーリョを読んできたが、やはり日本の裏側にある大陸なだけあって、新鮮味のある、野生や神秘を体験できる。
 そして、今回のバルガス・リョサ著「密林の語り部」についても、思い切り神秘の世界に浸かったし、 登場人物の魂みたいなものを感じられた。そして読後は文学作品の価値みたいなものを考えた。
 今日のSNS等における各種投稿・動画コンテンツはとても楽しい。私もこうしたツールからその日暮らしのように愉悦を得ているし、恐らくそんな人はたくさんいると思うのだが、そんな日々を重ねていると、少しずつ私のいる世界の質が、インスタントなものになっていく。
 でも、この小説を読んで文化の深淵を覗いた気がして、もし深淵がこちらを覗き返しているのなら、それで良いのだろうと思った。ちゃんとしようと思った。
 この小説、1章が終わると急に「語り部」が語る物語(神話のようなもの)が始まり、よくわからない南米の固有名詞がたくさん出てきて「ちょっとしんどいか?」ってなる。でも語りには高い文学性があって神秘があって、読み飛ばそうにも放念できない。次の章には作者の舞台に戻り、すらりと読みやすくなって、その次の章ではまた「語り」が始まる。そのときには幾分読みやすくなっている。少しずつ「物語る」ということの原始的なの在り方にぶちあたり、その辺からは、私も一層熱を込めて読み進めた。バルガス=リョサってすげぇなって思った。

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