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図書館は私の宝物

「今日は何の日か知ってる?」カメは、図書館の中庭でアールグレイをそっと持ちながらウサギに尋ねた。 彼女は長い髪を春風になびかせて、「4月30日と言えば…、もちろん図書館記念日ね」と言葉を弾ませた。

カメは静かに話し始めた。「今の時代、図書館に来れば、誰もが当たり前のように本を読むことができる。けれど、本がこんなに自由に読めるようになったのは、19世紀の後半からなんだ。長い人類史でみれば、それはまだごく最近のことになる」

ウサギがじっと聞いていると、彼は話を続けた。「本には豊富な知識が詰まっているから、かつては戦いに勝つための貴重な情報源として扱われ、王や貴族たちに独占されていた。だから、一般の人々の手には届かなかったんだ。それに、その頃の本はすべて手書きだったから、写本一冊が家一軒分の値段だったと言われている。中世の図書館では、盗難されないように本は鎖に繋がれていたんだよ」

ウサギは、そのころの図書館を思い浮かべようとしてみた。「つまり、今の私たちはとても恵まれているということね。かつての王様のように、知識を自由に手に入れることができるのだから…。それを聞いたら、なおさら本を読みたくなったわ。新しい世界や、自分がやりたいことを探すためにね」

二人は静かに図書館の扉を開け、ゆっくりと足を踏み入れた。ウサギは迷うことなくいつもの椅子に腰を下ろし、そっと本を開いた。「今日はどんな世界に出会えるかしら」彼女の心はもう、冒険への準備が整っていた。


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