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あの時の日記帳

その日、カメは部屋の本棚から一冊の日記帳を取り出した。ページをめくると、あの時の記憶が鮮やかに蘇ってくる。

今日、図書館で返却作業をしていたら一冊の絵本に出会った。表紙には砂漠を横切る孤独な道と、その道をひたすら歩く旅人の姿があった。一旦ページをめくり始めると、その指は途中で止まることはなかった。

その旅人はバスを待っていた。馬に乗った人が通り過ぎても、自転車に乗った人が通り過ぎてもバスは来ない。いろんな人が通り過ぎ、夜が来てもバスは来なかった…。

最後のページを閉じたとき、不思議な気持ちになった。「バスにのって」という本なのに、予想外の結末にとても驚いた。この物語を生み出した荒井良二さんとは、一体どんな人なのだろう?

カメは、別の日の日記を開いた。

今日はすっかり冬らしくなった。目白の小さなカフェで良二さんに初めて会った。そこでは小さな集まりが開かれていて、彼が参加者に「今年を一文字で表してください」と問いかけた。僕は初めての出会いの喜びを胸に、「会」という文字を選んだ。

良二さんが僕に近づいたとき、なぜか突然「自転車に乗るのが好きです」と口走ってしまった。それを聞いた彼は、一瞬のためらいもなく、ペンを手にサラサラとイラストを描き始めた。僕が書いた「会」という文字に線を重ね、あっという間に躍動感溢れる自転車が描かれていた。

カメの宝物  荒井良二さんとの合作!

帰りの電車の中で、僕はさっきのカフェで受け取ったイラストを大事に抱えていた。窓の外に流れる冬の風景を見ながら、僕の心は深い喜びに包まれていた。

人をこんなにも幸せにすることができる人がこの世には存在するんだという事実が、僕の心に染み込んできた。そして、僕もいつか誰かにこんな風に感動を与えるクリエーターになりたいと強く思った。それは新たな夢の始まりだった。

カメは、そっと日記を閉じた。

※バスにのって
荒井良二   作・絵/偕成社

良二さんの物語に登場する
キャラクターのピンズ
サイン入りのマグカップ と 陶器のライオンサン

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