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未知のファンタジア

広い無人の道路の左側に、カメの車がそっと止まると、ウサギは助手席から軽やかに飛び降り、目を見開いて建物を見上げた。そこにはライトに照らされた建物が、まるで空から降ってきたかのように、漆黒の夜空に浮かび上がっていた。

「まるで映画の一場面のようね」とウサギは夢見るように言った。「ウサギさんが見たことのない光景でしょ?」と、カメは彼女の横で言いながら、ゆっくりと建物を見上げた。

SF映画のセットのよう

その日、図書館の閉館時間が近づいた時、「どこか遠くへ行きたい」とウサギは言った。カメは「じゃあ、夜景がいいかな」と答えた。ウサギは目を輝かせて、「見たことのないものが見たいの」とちょっとわがままを言った。カメはしばらく考え込み、ふと思いついた場所があった。それは、どこか異世界のような川崎の工場夜景だった。

カメは彼女を再び車に乗せ、夜の工場地帯を静かに走りだした。やがてまた、不思議な雰囲気を漂わせる建物が、二人の前に現れた。「こんな人気のない場所で、この建物に出会うと、まるで宇宙船で他の惑星に来たみたい」と、ウサギは車の窓の外をじっと見つめながら言った。その眼差しには、見知らぬ物への好奇心が満ち溢れていた。

複数の設備が組み合わさっていて
複雑で巨大なプラント

走り出した車の窓越しに工場の夜景を眺めていたウサギは、ふわりと欠伸をした。「今夜はこの夜景の夢が見られそうだわ……」彼女の声は途切れ途切れになり、やがて小さな寝息に変わった。カメは自分の上着をそっと彼女にかけると、ハンドルに心を集中させた。車内には静かなラジオの音と、彼女の寝息が響いていた。夜はまだ続いている。


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