月星真夜(つきぼしまよ)

風を感じながら走るのも、異国の香りや風景を自分の中に刻むのも好き。けれど、そんな冒険の…

月星真夜(つきぼしまよ)

風を感じながら走るのも、異国の香りや風景を自分の中に刻むのも好き。けれど、そんな冒険の合間には、図書館で本のページをめくる音や、美術館で絵画に向かって深呼吸する静けさが、私の心を落ち着かせてくれます。日々の中にある小さな奇跡を、いつも感じられる心を持っていたいな🍀 ̖́-

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ウサギの自己紹介

こんにちは!元気いっぱいのウサギです。 いつも読んでくれてありがとうございます。ここで自己紹介をさせてくださいね。 私はいつも何か新しいことを見つけては、ワクワクしながら飛び込んでいます。「退屈」という言葉は私の辞書にはありません。時に人は私をちょっと無謀だと思うかもしれませんが、私にとって毎日は楽しい冒険なんです。 夜明けって素敵だと思いませんか? 新しい一日が始まるあの瞬間、目覚める世界の音を聞くのが大好きなんです。その時、今日一日に何が起こるのかなんて、誰にもわから

    • 美味しいものは半分こ

      「ソフトクリームを食べたあとだし、お土産は和菓子よね」というウサギのこだわりで、ウサギとカメは「つづみ団子」というお店の前で足を止めた。「あ、きびだんごがある」と静かにショーケースを見つめるカメの隣で、ウサギは「どれがお勧めですか?」と冷静に店員に聞いていた。 店頭に並べられた和菓子の中から、ウサギはようやく三つを選び出した。そしてカメに向かって少し申し訳なさそうに、「どうしても食べたいものが三つあるの。食べきれないから半分こしてくれる?」とお願いすると、彼は「喜んで」と笑

      • 「うなも」との出会い

        おめで鯛焼き本舗で、思わぬ性格判断をしたウサギとカメは、長い戸越銀座の反対側まで歩いてきていた。あたりを見回していたウサギの目に留まったのは、「紫色のスライム」だった。 「うなぎいも? ってなに?」彼女は店頭にあるタペストリーを読み始めた。 「鰻の頭や骨を肥料にして栽培したサツマイモだから『うなぎいも』なのね。どんな味なのかしら?」ウサギはカメの手を引きながら、軽やかに店の中へ入っていった。 コンパクトな店内には、紫色のスイーツやグッズがずらりと並んでいた。カメがゆっくり

        • 本当の私を解って

          その日、ウサギとカメは軽いお散歩のつもりで戸越銀座を訪れていた。戸越銀座駅にある案内板を読んだウサギは、いきなり目をぱちくりさせた。「戸越銀座って、東京一長い商店街なのね。全長1300メールもあるわ」 気合いを入れ直した二人が、最初にたどり着いたのは「おめで鯛焼き本舗」というお店だった。「お好み鯛焼きが人気みたい」とカメが言うと、「新製品の広島風お好み鯛焼きっていうのもあるわよ」と、ウサギが指をさした。「迷うね…」と悩むカメの横で、ウサギはキッパリと、「両方ください」と、お

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        • レースのお部屋
          8本
        • 図書館のお部屋
          7本
        • 異国への旅のお部屋
          8本
        • 読書のお部屋
          17本
        • ティースプーンのお部屋
          4本
        • 宇宙のお部屋
          13本

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          図書館は私の宝物

          「今日は何の日か知ってる?」カメは、図書館の中庭でアールグレイをそっと持ちながらウサギに尋ねた。 彼女は長い髪を春風になびかせて、「4月30日と言えば…、もちろん図書館記念日ね」と言葉を弾ませた。 カメは静かに話し始めた。「今の時代、図書館に来れば、誰もが当たり前のように本を読むことができる。けれど、本がこんなに自由に読めるようになったのは、19世紀の後半からなんだ。長い人類史でみれば、それはまだごく最近のことになる」 ウサギがじっと聞いていると、彼は話を続けた。「本には

          夢見ヶ崎動物公園

          数日前、ウサギは図書館で動物図鑑をめくっていた。ページをパラパラと進めるたびに、彼女はいろいろな動物に夢中になっていた。「久しぶりに動物園に行きたいわ」と、彼女はそっとつぶやいた。隣に座っていたカメは静かに笑みを浮かべながら、「夢見ヶ崎動物公園に行ってみようか」と彼女に提案した。 急な階段を上がって迷路のように入り組んだ住宅街を抜けると、二人は動物園の入り口にたどり着いた。園内を歩き始めると、ウサギの目はレッサーパンダに引き寄せられた。ガラスの向こうで、二匹のレッサーパンダ

          紅茶とクッキーのご褒美

          その日の朝、カメはレース会場に向かうサイクルロードでゆっくりペダルをこいでいた。道の脇には黄色や白の花が咲き乱れ、一面に春の息吹が満ちていた。彼はふと、駒沢公園でウサギに言われた言葉を思い出した。「ギリシャの兵士のように走ってね」と。 スタートの号砲が鳴ると、カメは静かに足を踏み出した。まずは、自分の体調を確かめてみる。脚は軽やかに動き、呼吸も穏やかだ。「調子は良さそうだ」そう心の中で小さく呟くと、彼は一度大きく息を吸ってから、ゆっくりと吐いた。そして肩の力をふっと抜いて前

          紅茶とクッキーのご褒美

          協力か それとも犠牲か

          その日、ウサギとカメはロードバイクに乗って名栗湖周辺を疾走していた。カメは前を走りながら、時折振り返ってウサギの様子を確認した。彼女は遅れることなく、しっかりとカメの後ろをついてきていた。風の抵抗を少なくするために、二人は20センチの間隔を保ちながら、先頭を交代しながら走っていた。 「近藤史恵さんの『サクリファイス』を読んでいたら、久しぶりにロードバイクに乗りたくなったの」と、誘ったのはウサギだった。カメはその突然の提案にちょっと驚いた様子だったが、すぐに笑って頷いた。

          協力か それとも犠牲か

          海と星空の冒険

          その日、夕暮れの図書館の中庭はオレンジ色の光に包まれており、静かに本を読むカメの背中を照らしていた。彼は分厚い本に視線を落としながら、いつも通りの穏やかな表情を浮かべていた。そこへウサギが軽やかにやってきて、彼に声をかけた。 「カメくん、ウサギのティースプーンへのメールありがとう。そのことでちょっと聞きたいんだけど、北海道まで泳いだって、あれは本当なの?」ウサギは、ずっと心に秘めていた疑問をそっと口にした。 カメは目を閉じ、静かに記憶をたどりながら話し始めた。「そう、あの

          水しぶきとの抱擁

          「おはようございます!今日もウサギのティースプーンのお時間がやってきました」と、ウサギはいつものようにラジオ番組を始めた。今日のテーマは「旅のびっくり体験談」で、リスナーから寄せられた様々なメールを前に、彼女の声は弾んでいた。 「次にご紹介する体験談は、ラジオネーム『図書館大好きなカメ』さんからです。『僕のびっくり体験は、青森から北海道まで泳いだことです』とのことです。えっと、北海道って泳いで行けるんでしたっけ?」ウサギは珍しく言葉を詰まらせた。彼女は頭に疑問符を浮かべなが

          しずくのぼうけん

          今朝は雨が降っている。ウサギは部屋の窓辺に座り、じっと雨の音に耳を傾けていた。彼女の目の前で窓ガラスを伝う水滴は、それぞれが小さな旅をしているかのようにゆっくりと動いていく。窓から見えるいつもの景色は、雨の日は少し特別に見える。彼女は、そんな雨の日が好きだった。 ウサギはふと思い出したように、本棚から一冊の本を取り出した。「雨の日に読むなら、この本だね」と彼女は呟いた。その本の表紙には、一輪の赤い花を空に掲げながら微笑む「しずく」の姿が描かれており、手書きの文字で、マリア・

          燃える本と濡れる本

          8メートルもの高さを誇る巨大な本棚が、まるで魔法によって作られたかのように、ウサギとカメの目の前に立ちはだかっていた。しかも本棚に並んだ本たちは、メラメラと炎に包まれながら、美しい輝きを放って次々と燃えていた。そしてその景色も束の間、つぎの瞬間には滝のように降り注ぐ雨が、瞬く間に本を濡らしていった。そのあってはならない光景に二人はただ呆然と立ち尽くしていた。 二人の目の前では、やがて巨大な樹木が根を下ろすと、空から無数の本がパラパラと降り注ぎ、空っぽだった本棚を瞬く間に満た

          海と砂上の楼閣

          その夜、ウサギとカメは首都高速道路を走り続け、羽田空港に向かっていた。「今日はアースディね。異国の地と会話ができるような場所に行きたいわ」図書館からの帰り道にウサギが呟いた。そんな彼女に、カメは静かに提案した。「空を舞う飛行機を見に行こうか?」 二人がたどり着いた国際線ターミナルの展望デッキは珍しく人がまばらだった。ゆっくりと滑走路に目を向けると、異国の航空機が地上から離れる瞬間を捉えた。「見て、あの飛行機はどこの国へ行くのかしら?」ウサギの問いは空中に溶け、二人はその飛行

          おおきな木

          その日、ウサギは足元に視線を落としながらカフェに辿り着いた。ひとつ小さく息を吐くと、何かを吹っ切るようにドアを開けた。店の奥で本に視線を送っているカメの姿を見つけると、彼女は少しだけ笑みを浮かべた。 カメの前に座ったウサギは、しばらくの間、ページをめくるカメの指を見ていた。やがて「優しい気持ちになれる絵本が読みたいわ」と独り言のように呟いた。彼はゆっくりと視線を上げると、ウサギの瞳を見つめた。 カメは読んでいた本を静かに閉じると、一冊の本をリュックから取り出した。ウサギが

          あの頃を思い出す街

          その日、ウサギとカメは下北沢の街を訪れていた。東口改札口を抜けたウサギは目を見張った。「駅前がずいぶん変わったわね。小田急線の改札も、井の頭線の改札も、以前はもっと迷路のようだったわ」 二人は慎重に周囲を見回しながら足を踏み出した。街にはなんとなく懐かしさを感じさせる景色が残っていた。路地には昔ながらの古着屋が軒を連ね、その個性的なファッションが風に揺れていた。 一方、雑貨屋の店頭には奇妙な形のオブジェが並びふと目を奪われる。街全体にカオスと整然とが混ざりあい、そこはかと

          未知者との交差

          映画館のシアター7のスクリーンで「ゴーストバスターズ/フローズン・サマー」のエンドロールが終わり、ゆっくりと出口に向かっていたウサギがぽつりと言った。「最後に流れた『新しい学校のリーダーズ』のMV、すごく斬新だったと思わない?」 映画館を背にして、夜の空気を感じながら、ウサギは隣を歩くカメに話を続けた。「未知の存在と冷静に向き合うのは、私には難しいと感じたわ。だからかしら、15歳のゴーストバスターズの少女が16歳のゴーストとチェスをしながら仲良くなるシーンがとても印象に残っ