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【読書感想文】魂の退社/稲垣えみ子

いつもは、140字に頑張っておさめて、感想なのか紹介なのか何にもならない感想文を書いて読書記録としているのですが、
この本は面白すぎたのでちゃんと書こうと思います!
面白すぎたというか、共感ポイントが多く、自分の中にあったモヤモヤを言葉にして、そこにあるものとして認識させてくれたようなことがたくさんあったので、それをいくつか書いておきたい。

2016年に、50歳で朝日新聞社を退社した稲垣さんの、
・どうして会社を辞めようと考え始めたのか
・すぐには辞められないと考えた稲垣さんが、辞めるまでの経緯
・実際に辞めたきっかけ
・辞めてからの生活の変化
・会社員が、どれほど守られた存在であるか
なーんていう出来事を通して感じた「想い」や「価値観の変化」などを細かく綴られているのですが、
さすが読み書きをお仕事とされていた方なので、まず文章が面白くとても読みやすい。
そして内容も、大手の会社であるあるな「古い価値観」とか、居心地の悪さなんかが細かく記されていて、
私は大手企業には勤めていないけど、「これ、あるある!!」という内容がたっくさんあった。

・会社に依存して生きていきたくないということ。自分の足で歩いていこうよというメッセージ。
私は単なる「退社」ではなく「転職」だったから、会社には依存しているんだけど、
会社より前に自分という存在を重要視すべきと思い始めているから、共感というか「賛成!」って感じです。

・プロフェッショナルを目指す場合の居心地の悪さ。
多くの企業では当然、ある年齢から出世競争に自動的に参加させられる。そこで、言うなれば勝ちと負けが決まる。
私みたいに、役職つかなくていいから専門的な知識と技術を突き詰めていきたいのよ、と、競争から外れたフリをしても、誰かが「勝つ」以上、周りから(もしくは自分の心の奥底の目から)見たら、それは負けなのです。
この辺は慎重に言葉を選ぶべきとは思うけれど、私の絶望感を表現するために白黒ついた言葉を使っています。
とにかく、会社というところは優劣をつけやすい。その序列から逃げることができない場所である、というところ、最近の自分の心の動きとリンクして、思わず笑っちゃいました。

・お金を稼ぐために働く。働くために会社に雇われる。だけどお金って必要?働く場所って会社だけ?
必要なお金は人によって違うよねという話。稲垣さんは、都会暮らしと地方暮らしが交互にあったようなので、暮らす場所によってお金の使い方、自分の幸せの感じ方が変わっていくのを実感されたのだろうなと思います。
私だったらどうだろう。今、お金は使っているけれど、そこまで贅沢はしてない(エステに一回何万も使うとか、毎日外食とか、高級家電を揃えるとか?)
だけど、なくてもいいものが溢れているのは事実だし、お金を使うことが幸せ、モノを手に入れることが幸せ、という感覚には、少し心当たりもある。
働く場所は会社だけじゃない。(だけど簡単ではない、という主張も続く)
最低限の稼ぎを得られるなら、あるいは貯蓄が充分なら、身を粉にしてストレスを溜めながら雇われ続けることは、必須要件ではないのかもしれない。

・会社員がどれだけ恵まれているか。
一度は会社員を辞めてしまおうかと思った私にとって、この章がいちばん刺さったかもしれない。
世の中、「フリーになろう」「手に職をつけよう」「自由に働こう」というメッセージは多い(私が30代女性だから、こういう広告が多いのかな?)
けれど!自由には責任と不安定さがつきもの。そんなこともわかっているけれど、やっぱりいまいち実感はわかないものなのだと思う。
ナントカっていう会社に勤めている、というだけで信頼されるものだ。ローンとかクレカとか、お金がかかわることになると特にそうだ。毎月の収入が確保された状態というのは、全く当たり前ではないのだ。

いろいろなメッセージや価値観、会社と社会の違和感が述べられていて、共感もあればなるほどという発見もあった。
まだしばらく会社員でいようと思っている私が最後に感じたのは、
会社とは対等でありたいということ。
雇う側が上、ということではなくて、労働力と金銭の等価交換でありたい。
相手を知れば会社にとってよい行動や言葉を選べるし、それがわかれば自分の要求も通りやすくなるんだと思う。
会社に依存したり、振り回されるのではなく、自分の生活や意志がある上で、意識的に会社で働く。
それが難しいんだけれども、まずはそういう意識をちゃんと持ちたい。
会社側もそう思っててもらわないと困りますけどね。今の勤務先は、幸いにしてそれを言語で伝えてくれているので、実践できそうである。

50歳くらいで早期退職するの、憧れるな…
その先どうするの、は決まってないけど。
そうだとすればあと15年ちょっと。意外と時間もない。まだ今の業界・業種でやりたいこともあるので、うっすらの目標として心に秘めておこうと思います。

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