鳳凰三山薬師岳にて北岳と対座する
今、私は鳳凰三山薬師岳山頂にいる。
その樹木のない石が乱立する白い頂の西端にある小さな石に腰掛け、メロンパンを食べコーヒーを飲みながら、西側に聳える日本第二の高峰北岳を見ている。午前十一時台、他に人はいない。
私だけがそこにいる。強いて言えば、正面に北岳がいる。
「いる」という表現はおかしい。
北岳は悠然とその体躯を私の前に晒しているが、「いる」と言うより「ある」と言ったほうが正しい。
パンを囓る。
今朝淹れたばかりの温かいコーヒーの入った水筒を傾ける。その温かみが喉を通っ