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山の美学

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山について、文学的に語ることで美学を展開する。言葉により山の素晴らしさを表現する。それに合った写真も掲載する。
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記事一覧

「もう登山なんか嫌だ!」⇒「次はどこに登ろう?」(鏡平、笠ヶ岳)

私は先日、岐阜県の新穂高からテントの入ったザックを背負って、鏡平に向かって歩いていた。計…

SW大橋勇
1か月前
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竜爪山随想

今、竜爪山の中腹、穂積神社境内にあるベンチにて、独り、湯が沸くのを待ちながら、赤飯のおに…

SW大橋勇
3か月前
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ソロ登山は惨めだ。だが、そこがいい

私は独り、山の中にいた。 八ヶ岳、天狗岳の北、黒百合ヒュッテの前の丸太の椅子の上である。 …

SW大橋勇
4か月前
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登山は霧を望む

五月下旬、私は自家用車で八ヶ岳に向かっていた。 空は青く晴れていた。 私は美しい木々の間を…

SW大橋勇
5か月前
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つまらない山に登る意味

 私はそのときたった独りで、登山道を登っていた。四月のまだ肌寒さの残る富士の外輪山のひと…

SW大橋勇
6か月前
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鳳凰三山薬師岳にて、北岳を肴に酒を飲む

この山をどういう言葉で称えたら良いだろうか。 私は、その山を形容する表現を探していた。 そ…

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鳳凰三山薬師岳にて北岳と対座する

今、私は鳳凰三山薬師岳山頂にいる。 その樹木のない石が乱立する白い頂の西端にある小さな石に腰掛け、メロンパンを食べコーヒーを飲みながら、西側に聳える日本第二の高峰北岳を見ている。午前十一時台、他に人はいない。 私だけがそこにいる。強いて言えば、正面に北岳がいる。 「いる」という表現はおかしい。 北岳は悠然とその体躯を私の前に晒しているが、「いる」と言うより「ある」と言ったほうが正しい。 パンを囓る。 今朝淹れたばかりの温かいコーヒーの入った水筒を傾ける。その温かみが喉を通っ