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小説集

46
私の投稿した小説をまとめてみました。
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記事一覧

【短編小説】老人と妖精

「今日は孫が面会に来るんですよ」 私の向かいの席に座る、と言っても車椅子だが、その女性は…

SW大橋勇
13日前
8

【即興短編小説】老人ホームの独身男性

 「今日は娘夫婦が面会に来るんですよ」 私の向かいの席に座る、と言っても車椅子だが、その…

SW大橋勇
13日前
6

【即興短編小説】反転学校

中学生ヤンキーの大山は、教室の前のほうの席で教科書を読んでいた。 すると担任教師が教室に…

SW大橋勇
2週間前
3

【短編哲学小説】窓の外の身体

身体は窓の外にあった。 窓しかない部屋は身体だった。 身体は移動する。 どこを? 窓の外を。…

SW大橋勇
2週間前
6

【短編哲学小説】窓しかない部屋

 私は窓の外に繰り延べたカーペットに並んだ自作の彫刻たちを眺めている。  ひとつひとつの…

SW大橋勇
3週間前
11

【即興短編小説】鬼現寺物語

 秋の日が短くなる頃のとっぷりと暮れた時刻のことである。剣志郎、弥太郎、昇太郎の三人の中…

SW大橋勇
3週間前
6

【即興短編小説】努力のムコウ

 俺は高校二年に上がる頃、野球部を辞めた。  俺は小学生の頃から野球をやっていて、高校で甲子園に出るのが夢だった。しかし、中学時代、思うように振るわず、高校も地元の野球の弱い進学校に進んだ。一応野球部に入ったが、一年時は試合に出してもらえず、二年生になっても俺は試合に出してもらえそうもなかった。  俺は中学時代から、イップスを抱えていた。イップスとは精神的な原因で、ボールを思うように投げたり、バットを思うように振ることができない病気だった。俺は野球に絶望していた。中学の部活動

【即興短編小説】魔界への旅立ち

 翔一は、学校の四階の教室から窓の外を眺めていた。 「俺はいったいどんな大人になりたいの…

SW大橋勇
3週間前
8

【即興短編小説】となりのフトッチョ

 月美と秋美の姉妹はお父さんの運転する乗用車(カローラ)で田舎の引っ越し先に向かっていた…

SW大橋勇
4週間前
6

【即興短編小説】罪と罰(寛の告白)

日本が戦後復興した昭和の話である。 寛は北海道の高校を卒業すると実家を飛び出して、東京に…

SW大橋勇
4週間前
2

【即興短編小説】後藤を待ちながら

サミュエル・ベケットに捧ぐ           ○    渋谷駅ハチ公口にて、五十がらみ…

SW大橋勇
4週間前
4

【即興短編小説】小説家上京物語

 僕はもう三十になる。  静岡県のとある田舎で介護の仕事をしている。実家暮らしだ。  そし…

SW大橋勇
4週間前
9

【即興短編小説】現れた三銃士

僕は中学二年生で読書が好きだ。特に冒険小説が好きで、現在、お父さんの棚にあった『ダルタニ…

SW大橋勇
4週間前
12

【即興短編小説】妖精とネバーランド

 僕は高校受験生で、正月返上で勉強していた。  今家にいるのは、僕だけで、お父さんも、お母さんも弟たちも親戚の家に新年会をしに出かけている。  僕は夕飯に、お母さんが作っておいてくれたお雑煮の汁に焼いた餅を入れて少し煮てから食べた。たった独りの一月一日の夜のことだ。  僕は長男で、受験というものを初めて経験していた。お母さんが「受験生は正月も勉強するもの」と言うのでそれを信じていたが、こうして夜、独りぼっちで勉強していると、今頃弟たちは従兄弟たちと楽しそうに・・・などと