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【短編小説】浅漬けサイコガン

 それだけは勘弁してくれ、と懇願する女を蹴り飛ばした。
 女は泣きながら袖を捲った。俺は笑いながら煙草に火をつける。煙が揺れる。女が諦めきれずに首を振る。俺は足先で蹴り飛ばす。
 女は涙を流したが諦めもついたのか、フタを開けて糠床を掻き混ぜた。

 そうだ、お前はきょう一日そうやって糠床臭い手で過ごすのだ。
 お前がいくら美人でもそれだけ糠床臭ければ悪い虫も寄ってこないだろう。大丈夫だ、お前が糠床臭くたって俺は愛しているよ。
 糠床臭いお前の腕を丹念に洗う事を想像しながら煙草を吸う。
 糠床にお前の汗や皮膚が混ざっていく。糠床はお前の様に柔らかく融けていく。俺の脳味噌がかき回されるような快感が走り回る。俺の脳味噌にお前の愛液や細胞が入り込んでいく。


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