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Re: 【短編小説】熱湯コマァ死ャル
それは鄙びた温泉街にある共同浴場だった。
安い入湯料で時間制限無く使える。
都内の銭湯はどこも二時間制になってしまい、長湯の人間としては寂しい限りだった。
うむ、とおれは頷いた。
ここならら心ゆくまで湯に浸かっていられる。
別に最新の設備はいらない。
サウナもいらないし、ジャグジーや電気風呂も必要無い。
打たせ湯、低温湯、露天風呂も要らない。洗い場だってシャワーじゃなくていい。
Re: 【短編小説】天然MANウィズ座MISSION
おれは疲れていた。
人生はあまりにもクソだし労働もクソだ。
それだと言うのに労働に勤しんでいるおれ自身もクソだし、QUOカードプランを選ばなかったようなセコい道徳心もウンザリするくらいのクソさだ。
たまたま手にした時間は120分数万の高いサウナで消えてなくなった。
嫌いな上司の名前で領収書を取っておけばよかったが、後の祭りだ。せめて名刺はスーツにでも入れておくか。
飛行機は墜落せ
Re: 【超短編小説】学展SUSHI
人生はクソだ。
そのクソの中でも労働はズバ抜けたクソだ。賃金分の価値もない。
だが賃金の為に働くしかない。
おれは地主の子どもとして生まれなかったからだ。
支給された白い手袋は触れた瞬間に安物だなとわかる代物で、粗雑な繊維はすでに毛羽立っていた。
だが文句などあるはずもなく素直にそれを嵌めてから列に並ぶ。
それがきょうの賃労働だ。
つまりおれは賃労働に充実な犬だ。
資本主義の走
Re: 【短編小説】魚卵ねがい魚卵
ある日のことでございます。
おれがスマホを見ながら自分を慰めてるいたところ、はたと気づいたのであります。
その画面の中で気持ちが良いのは、男優の逸物であります。しかし、男優のそれは労働としての射精でありますので、果たして快楽と呼べるのか?と。
そうであるならば、おれは何とリンクしようとしているのか。
とりあえずスマホを置いてティッシュに手を伸ばすところから始めなければなりません。
Re: 【短編小説】勝UMA投票 MySweetHome独歩シャドー
人生はクソだし、死ぬまでの暇つぶしにも飽きてきた。
そしてその日のおれは、人生に対して残り少ない希望みたいなものを、いくばくかの絶望に替えようとしていた。
「お宮さんのひとかい」
後楽園のウインズで煙草を吸っていると、傍にいた見知らぬジジイが話しかけてきた。
「いいや、全く関係が無い」
おれは笑って返す。
おれの耳にぶら下がっているピアスは、確かに仏具の様なピアスで、丸い飾りの下に赤い
Re: 【短編小説】伊勢丹桃ジュースBOXヤクザ
その日、Qちゃんはとても疲れていた。
地下の倉庫から箱に入ったジュースを持ってエレベーターに乗り込む。
旧式のエレベーターは酷く揺れた。
天井に付いた換気扇は軸が歪んでいるのか酷い騒音を立てている。
客用のエレベーターとは違い、なにかをぶつけた傷やテープの剥がし忘れなどで薄汚れた壁と、それこそ何の汚れか分からない縞鋼板の床。
そんなボロボロのエレベーターは酷く揺れながら、七階の催事場ま
Re: 【小説】ユナイテッド ステイツ オブ オニギリ
ぼくはまるで緊張のカクテルみたいになっていた。
サスペンションの伸びきったバスに揺られて、どうにかリトルトーキョーに着いたのは昼前である。
横柄な態度の運転手はぼくが降りるなり、乱雑にドアを閉めると、やたらに煙を撒き散らしながらガタガタと揺れるバスを走らせていく。
その後ろ姿を見送ってから街の中へと入っていくが、今までにこんなにも緊張した事はあっただろうかと思う。ジャパンでは、これを「サム
Re: 【短編小説】ダイヤルアップ脳天砕
グラスの中の氷はとっくに溶けてなくなっていた。
それでも最後のひと口を飲めずに手の中で弄んでいる。
昔話が途切れたあたりで、遠慮の塊を見ながら訊いた。
「そう言えばさ、次の仕事って決まってるの」
元同僚は笑いながら
「芸能人のツイッターをバズらせる仕事」
と言って、皿の上で畏まっていた唐揚げを口に放り込んだ。
「そんな仕事あんの?」
「往年のプロレスラーが誤変換ツイートで万バズを稼いでた
Re: 【短編小説】Luckプラック№1人生
眠れない夜がある。
あるだろ?あるんだよ。
俺には必殺技が無い事を考えると眠れない。
そう言う時は眠れないだろ?
眠れないんだよ。
そうだ、俺には必殺技が無いからな。
世間にはまだバレていないがこれは由々しき事態だ。
バトルを仕掛けられたら俺に勝ち目はない。
走って逃げる事で一時的にどうにかする事は出来ても、一度バレたら永遠に逃げ続ける事になる。
負け犬だ。
必殺技はなんで
Re: 【短編小説】極彩色ヒューマン
「ちっ、つまんねぇな」
ショートが鼻を鳴らして、親指くらいのサイズがある怪獣型ゴム人形を節くれだった指で弾いた。
コトン、と倒れた怪獣人形は底の部分にある穴に本棚の余ったダボが詰められていた。
「オレたちも次のシノギ考えねぇとな」
エースが鼻くそをほじり、獲得したものをゴム怪獣の穴に詰めた。
「お、おれがトチったから……」
サードはオドオドしながら言ったが、遅かれ早かれダボを詰めるイカサマ
Re: 【超短編小説】夜 ボンバイエ
「どうしたの?」
「勃たねぇ」
ベッドを降りると汗ばんだ足がフローリングに張りついた。
女はなにも言わない。
嘲笑えば殴れるし、慰めても追い出されるのを知っている。別にお前のせいじゃない。
「おれがどうかしてるだけだよ」
またはコイツのせいだ。
煙草に火をつける。換気扇に煙が吸い込まれていく。煙草なんて吸うもんじゃねぇな。だが煙草をやめるほど意志が弱くもねぇ。
「必要なのは教養だ」
勃
Re: 【短編小説】niboshi
「落ちましたよ」
労働者風の男がおれに声をかけた。
手には棘をひとつ持っている。
「ありがとう、助かるよ」
礼を言って受け取ると、男は軽い会釈をして去っていった。
靴についていた棘がひとつ取れていた。
高級ブランドにしては作りが甘く、これで棘が落ちるのは3度目になる。
だがおれの靴に限った話ではない。
おれの他にもこうした靴を履いている人間を見た事があるし、彼らの靴も大抵は棘がいく
Re: 【短編小説】DIE HARD サウナ
「サウナに、行きませんか」
不用意に言ったが最後、それは覆されることはない。
サウナは戦場だ。つまり闘争領域だ。
サウナは我慢大会などと言う生易しいものでは無い。
それはれっきとした闘争なのだ。
サウナに男たちは流れる汗をものともせずに座り続ける。
「それでも構わないか?」
お前のような育ちの良い人間が指し示すサウナと、おれたちのサウナは認識が一致しているのか?
男は頷く。
こちら